見出し画像

地域広報誌 掲載エッセイ⑤

今日はまた、地域の農協広報誌に掲載させていただいた過去のエッセイ記事を紹介させていただきたいと思います。
今日紹介させていただくのは昨年の8月号の記事です。


『天窓のおきゃくさま』

 3年前の8月のある夜、リビングで本を読んでくつろいでいると屋根の上で物音がしました。
普段から屋根の上をカラスが歩いたりして音がするので、
「またカラスが歩いている」
と、はじめは気にも留めずそのまま本を読んでいたのですが、その後もカタンカタンという音はなかなか止みませんでした。
そこでふと、
「あれっ、カラスって夜に屋根の上を歩かないような…」と、夫と二人で天井を見上げると、
天窓から覗いている黒い真ん丸の目と
目が合いました。
白い大きな丸の中に黒い丸が2つ。
とてもかわいらしい瞳で私たちをまじまじと観察しているようでした。
眼球が動かないのか、
くねくねと首を左右にかしげながらこちらを見ています。
あの形、
あの動き、
……、
「えっフクロウ!!」
夫と二人でほぼ同時に叫びました。
屋根の上にエゾフクロウが来てくれて、
とても驚きとても嬉しく、
大変興奮した夜でした。

その後、フクロウは見かけませんが、
カラスは毎日のように遊びに来ます。
家の屋根の上を歩いたり
車庫の上に溜まった雨水を飲んだりしています。

先日の日中、
ダイニングのテーブルでパン作りをしていると、
コンコン、コンコン、と
天窓をつつく音がしたので見上げると、
カラスが3羽並んで
天窓からこちらを覗いていました。
一瞬ヒッチコック監督の映画『鳥』のワンシーンが脳裏に浮かびましたが、
穏やかな目をしていたので一安心。
パンが美味しそうに見えたのでしょうか?
すぐに絵本『からすのパンやさん』が浮かび
微笑んでしまいました。

カラスといえば、
高校生時代、毎日のように五時間目にやってきて学校の噴水で水浴びをしていたカラスの記憶が蘇ります。
“カラスの行水”の如く、
やって来たと思ったらバチャバチャと水浴びをしてすぐにいなくなるカラスを授業そっちのけで毎日楽しみに待っていました。
「今日はまだかなぁ……。」
「あっ来た来た!」と。

そんな、
天窓から覗いたり
学校に入り込み噴水で水浴びをする鳥もいれば、
エゾセンニュウのように戸締まりの確認をしてくれる鳥もいます。
「じょっぴんかけたか」ときちんと聞こえる時もあれば、
「ねえ、じょっぴんかけたか」
「じょっぴん全部かけたか」
などなどテンポは様々ですが……。
鳴き声が聞こえてくると、
「かけたよ~」と答える私であります。

以上、
地域の広報誌の連載エッセイより
昨年の8月に掲載していただいた記事を
紹介させていただきました。

記事の最後に登場した『エゾセンニュウ』は、
スズメ目、センニュウ科、センニュウ属の鳥で
夏に繁殖のため北海道に飛来してきます。
鳴き声が「じょっぴんかけたか」ときこえるので、
『エゾセンニュウ』ではなく『ジョッピンカケタカ』と呼ぶ人も多いです。
はじめて さえずりを耳にしたときに、
一緒に仕事をしていた方々に、
「あの鳥はなんという名前なのですか?」と尋ねると、
みんな口を揃えて
『ジョッピンカケタカ』でした。

「じょっぴん」とは、
北海道弁で『鍵』のことです。
「鍵をかける」ことを「じょっぴんかう」といいます。
なので、
「じょっぴんかけたか?」は
「鍵かけたか?」という意味になります。

また、この鳴き声は、
「てっぺんかけたか」などとさえずる
ホトトギスの鳴き声にもにているので、
エゾセンニュウのまたの名を
『エゾホトトギス』とも言うそうです。

あれからフクロウさんがくることはありませんが、
庭に、ハクセキレイやベニヒワやシマエナガにタンチョウがきてくれます。
また天窓にも珍しいかわいいおきゃくさまが来てくれたらいいな。


今日も読んで下さりどうもありがとうございました。

みなさまにほっこりが訪れますように🍀


この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?