短歌連作「ブラックアウト」

ブラックアウト 山川創

血を吸ったことがないから渡れない悪意の川も善意の川も

暖かな家に帰れるはずだったけれど打ち上げられて 三日月

垂直に立っていたから垂直に落下しながら眼鏡をなくす

やすやすと傷つけるならひけらかすためにはすごく便利だろうな

人ごみの中から聴こえる断末魔もっとスピントしてくれないか

にこやかな顔でお面をかぶったら誰にも気づかれないにこやかさ

駅までの道でたくさん行き倒れなんてロックな日常だろう

暗闇で棒立ちのまま隣人の嗚咽を聴いて朝まで過ごす

記憶できない光景だから意識が途切れるまで見ていたいと思う

慣例に従いましてこれからはフィクションとして生きていきます

(初出:ネットプリント「トライアングル」第四回。2017/11/6~11/20配信)

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