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はじまりのことから −3ヶ月

仕事は順調だし、やりがいもあると感じている
生活もできているし不自由なことはない
良い人に恵まれているし日々学びの中で生きられることは私の喜びだ

でも、少しずつ見えてきてしまった
気が付いてしまった
淡々と過ごしていることに

いつも同じような生活
同じ時間に同じ流れで支度をして
同じ髪型で同じ顔を作り
だいたい同じ組み合わせの服を着る
すれ違う人の顔触れもだいたい同じだし
見えている景色も変わり映えがない

暑い寒い
眩しい暗い
晴れだ雨だ
それくらいしか感知できない

どういうルートでいけば不快が少ないか
そんなことで頭がいっぱい
心地よさはどこに転がっているのか
あってもきっと拾えない

バスが動き、止まり、曲がり、坂を登り、下り、止まる
そんな動作を繰り返すたびに
どんよりした空気が重たく混ざり合いヘドロのように身体にまとわりつく

乗客は顔も色も失って能面ばかりに見える
あの人、職場に着けばもっと表情動くのに
始業時間には魂が入る人形みたいだ

みんな、どこにいるんだろう?
自分が会ってる人は本当に本人なのだろうか?
自分だって、本当に自分なのだろうか?


これがやりがいなんだ
これが楽しいんだ
これが成長なんだ
これが仕事なんだ

そういった思いが自分に力をくれるから
1日7〜8時間動き回ることができる
実際、本当にそう思っているからウソではない
これはこれで真実

日中あんなに笑顔で話した人も帰宅の途ではまた能面だし
意識を失ってグニャグニャになって寝る人もいるし
その日に溜まった呪いと毒を口から指先から吐き散らかしている人もいるし
朝よりも毒性の強いヘドロにまみれる

出さないだけで自分の中にも溜まっていく
それを隠すように社会的な役割に没頭する


こんな世界だったっけ?

朝起きてから出社までの時間
終業から帰宅までの時間
帰宅してから就寝までの時間
いつ自分自身を生きている?

情熱を持って生きてると思っていたのに
その情熱は既に昔のものになっていた
期待と笑顔で歩み始めた当時の写真を握りしめて
今は真顔で走っていることに気が付く

自分を忘れて失いかけて
カラカラの中身で必死に走っている

「時代の流れは変わった。情熱はあるのか。」

誰かにそう問われ
情熱について考えてみたら
迷いなく

「ないね」

と言えた自分がとても誇らしかった

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