ココが変だよ!? 日本の広告業界 〜企画篇・後編〜


■プレゼン費の考え方を変える。

私が競合プレゼンを受ける際は、たとえプレゼン費が出なくても、 企画が最もよく見えるための努力と出費を惜しみません。
それは、前述した通り投資だと思っているから。(あと単純に企画が好き)

そう考えるプロデューサーはきっと多いでしょう。
ただし、ビジネスの観点、そして労働時間や本来のプロダクションワークの部分でいうと、やはり時代遅れだと思います。

解決するためには、まずは費用の面です。
私はプレゼン費にかかった費用は、全て実費で出すようにしています。
その上で、最初にいわれた金額に値引きで調整します。

その分、競合に勝っていいものをつくりましょう!という決意表明であると同時に、 本来企画作業にかかるお金(人件費、画コンテやビデオコンテ)を実費で明確にすることで、オーダーと費用のアンバランスさを、せめてわかって欲しいからです。

企画プレゼン費の見積例

AGとプロダクションが一心同体でひとつの競合に臨むのは大切で素敵なことです。ただ、現状では、やはりプロダクションに対して費用負担のバランスが悪いと思います。 本来なら、CLのオリエンに対峙するのはAGの仕事であり、その費用はAGが全て持つべきかと思いますが、ここは少しずつAG・プロダクション双方で変わっていかないといけない問題だと思います。

一時期、業界内で「やりがい搾取」ということが問題になりました。
チャンスを与える代わりにタダ同然で、相手のスキルを利用して搾取することですが、この問題に似ています。

お互いにメリットがあるということを盾にして、費用を不当にダンピングするよりも、 まずは、かかる費用・かかった費用をしっかり明らかにして、お互いの関係値ややりがいの部分と、かかった費用は切り離していくべきだと思います。

今すぐにこの文化が変わるとは思いませんので、 せめて、「投資」として考えていくのが、いまの自分の考えです。
が、 将来的には、海外のケースに合わせて、企画作業はAG内で完結できるようになっていければ、プロダクションにおけるPMの作業負担もなくなり、より本来の制作業務に邁進できる=アウトプットのクオリティも上がる=いいものができると思っています。 (企画作業に参加できなくなるのは、自分としてはとても悲しいのですが、、)


■企画作業における制作会社の労働時間を構造から変える。

この問題は、プロダクションがキラキラしていくためには避けて通れない問題だと思っています。特に労働ボリュームに関しては費用がないため、どうしても社内リソースに頼るしかない=若い人が辞めていく原因になります。

PMの負担を軽減するために、キープロでは企画作業はBarberというプレゼン特化の会社にお願いしています。

http://www.barber.co.jp/

受注したプロデューサーは当然企画作業を監督しますが、社内のPMは参加しません。 そうすることで、弊社の企画におけるPM作業量は激減し、ワークライフバランスをとれています。

もちろん、内製するよりも外注費はかかりますが、社員の健康をお金で買うという表現がわかりやすいかもしれません。

企画作業を経験しないと、PMとしてスキルが落ちる(成長しない)という意見もあると思います。誤解を恐れずに言うと、それは本来のプロダクションの仕事ではありません。PMの仕事はあくまで制作進行における段取りと予算管理です。

今までプロダクションには、なんでもできるスーパーマン(スーパーPM)が多すぎました。 でもそれは、本当に少数の精鋭たちで、昔のやり方ではもうプロダクションが立ち行かなくなるはずです。時代は変わっていくのに合わせて、日本のプロダクションも変わっていくべきです。

これはあくまで自分の考えです。

もし海外に倣って「プレゼン作業にプロダクション参加は禁止!」という大号令がでれば、一気に解決する問題なのですが、費用面でも、作業面でも現状ではそうもいきません。

構造的な改革は時間がかかります。
でもこうしたアウトソーシングを活用することで解決できることの方が早いと思いました。ソフト面ではなくハード面で解決できることをまずはやってみるという精神ですね。

今後、こういう会社が増えていくことで、プロダクションPMの負担軽減と、企画作業の切り分けが進むと良いなと思います。


■最後に

日本の広告業界は、旧態依然の状況が続いています。
ここ最近の流れだと、映画業界の方が変わっていこうという意識が強いと感じます。

働き方改革・コンプライアンス・SDGsといった流れを、広告業界も少しずつ汲んで変わっていくべきですし、広告というクライアントのお金で映像を制作している分、本当はこの意識はもっと顕著に変わっていかないとダメだと思います。

結果として、ここの意識を強くもっている企業や働き方を実践しているAG・プロダクションが、クライアントと共に一緒になって成長できる条件になると信じています。

もちろん、少しずつ変わってきていることは間違いありません。
が、あまりにも遅い。
結局、受発注の関係が最も強く、パートナーシップが保たれていないことで起こるこれらの問題は、この企画フェーズに凝縮されていると思います。

また、作業ボリュームが多い企画作業においてPMの負担を軽減することは、プロダクションの未来を考えても、有意義だと思います。
なぜなら社内のPMはお金を払ってでも、赤字になってでも、守るべき宝だからです。

口で言うのは簡単なのですが、 声を上げていくと決めたので、まずは言ってみます笑
そして、少なくともこの考えでキープロはやってみます。

あと10年で、なんとか日本のプロダクション業界をグローバルに近づけるように、 残りのプロデューサー人生を賭して(大袈裟・・笑)できることをやっていきたいと思います。

次回は、ココが変だよ!? 日本の広告業界 〜PM篇〜というテーマで書いてみようかなと思っています。
ここまで長文駄文を読んでいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?