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(感想メモ)「アダム・スミスの夕食を作ったのはだれか」を読んで子どもを育てることと格差の関連について知る



ざっくり要約

  • 経済学は、その初期の頃から子育てや介護といった「ケア」を無視している

  • 競争の永続に基づく新資本主義により勝者と敗者が生まれ、経済格差が広がった

  • 新資本主義や人的資本の考えの浸透により、人々は自らの価値を高め続ける必要性に駆られ、それができない人を自己責任とするようになる

  • 「ケア」の領域を担わされた女性は、自己投資ができない、仕事で成果があげられないといった理由から収入が上がらない

  • その結果出生率は下がり、看護師などケアを担う人材も不足するようになった

  • この格差は構造的なものだから、「ケア」を無視する経済制度そのものを見直さなければならない

思ったこと

この本を読んで一番最初に思い出したのは、イーロン・マスクがTwitterを買収した後に話題になった以下の記事。

 週40時間なのか80時間なのか定かではありませんが、とにかく週5日40〜80時間は働くように社員したらしいです。
 なぜ思い出したかというと、この本の議論を踏まえるとこの働き方は女性やケアを担う男性には著しく不利だということがわかるからです。
 記事から詳細な制度は読み取れませんが、育児の短時間勤務や産休、介護休暇なんかは想定されていないようです。こうなると、会社に残るのは男性か子どもを持たないと決めた女性だけになるのでしょうか……。

こういう極端な例を見ると、産休や育休などの法律が整備されつつある今の日本社会はすこしずつ「ケア」を意識したものになっていると言えるのかもしれません。しかし、これでも出生率が伸びなかったり、希望する数の子どもが持てなかったり、介護離職があるのは、まだまだ道半ばといったところでしょうか。
 また、日本の諸制度は企業にワーク・ライフバランスの両立を支援させるものが多く、大企業に勤められないような階層の人が制度からこぼれ落ちている印象があります。よい企業に勤めている人だけではなく、主婦からシングルマザーになったような人でも、仕事と育児と自身の個人的な生きがいとが両立できるような制度にしていく必要がありそうです。

この本は問題提起をするだけで解決策は示されていません。「ケア」を上手に制度に取り組みジェンダー平等を実現して格差をなくした国が存在しないことから、解決策を提示できないということなのでしょう。
 「ケア」をする人に配慮をしていくということは、職場から産休・育休で抜ける人が何人も出たり、子育て関係の予算のために税金があがることがあるかもしれません。これを抵抗感なく負担できる人になることや、法律や制度に上手に取り込むことが作者の言う「経済人」を捨てるということにあたるのかなと思いました。
 ただ、私のような凡人には、税負担を上げるにはもっと収入の増が必要だから、もっと経済成長が必要なんじゃないだろうか……。みたいなところが想像力の限界です。よりよい制度とその実現のためもっと勉強が必要のようです。

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