美術館で会った人

学生時代、西洋美術史を研究していました。文化、主に美術について投稿します。 修士(学術…

美術館で会った人

学生時代、西洋美術史を研究していました。文化、主に美術について投稿します。 修士(学術)、学芸員資格有。

最近の記事

舟越保武《牧歌》廃棄に寄せて

 2023年7月18日(火)付の中国新聞朝刊に、衝撃的な記事が掲載された。 旧広島駅ビル(広島市南区)の壁面を55年間にわたって飾った、日本を代表する彫刻家舟越保武さん(1912~2002年)の作品「牧歌」が2020年の同ビル建て替え工事に伴い廃棄されていたことが分かった。広島の玄関口で長年愛された作品の消失に、市民からは残念がる声が上がっている[1]。 記事によれば、この《牧歌》という作品は、1965年に旧駅ビルを運営していた広島ステーションビルが駅ビルの開業に

    • 言葉が結ぶ図像―『古川諒子―太平洋は銀製』鑑賞メモ

       広島市のギャラリー、ヒロセコレクションで古川涼子の個展『太平洋は銀製』(2023年1月13日―2月5日)が開催されている。本稿は、この展覧会を鑑賞した際の雑感をまとめたメモである。 古川の制作過程 古川は、第三者によって書かれた文章(ピアノの教本、説明書、新聞記事等)を切り刻み、文章を再構成、そうしてできた文章を「タイトル」としてそれをもとに絵画を作成する、という一風変わったプロセスで製作をしているという。古川は「作品が先にあり、タイトルが後に付けられる」という従来の作品

      • 「世界、あるいはユートピアへの旅―『難波平人―世界集落、その魂を描く』を見て」補遺+これからの投稿について

        ついに記念すべき一つ目の記事を投稿できました。本稿では、難波平人展についての補足と、これからの投稿についてお話します。 謎の紳士 東広島市市立美術館に難波平人展を見に行った。展覧会図録を購入し、美術館を後にしようとしたとき、突如背後から「こんにちは!」と声をかけられた。振り返ると白髪の、上品なスーツを身にまとった紳士が立っていた。  「難波です。」とその紳士は名乗った。そう、その人こそ今回の展覧会作家、難波平人先生だったのだ。  「いやあ、今日来ていただいて、図録も買ってい

        • 世界、あるいはユートピアへの旅―『難波平人―世界集落、その魂を描く』を見て

           灰色の街並み。人の影は見えない。  広島県、東広島市在住の画家、難波平人の作品を私は見ている。  荒涼とした世界に、一瞬ある種のディストピア的世界観を感じる。  だが、不思議とそこに悲壮感や絶望感は感じない。そしていつの間にか、 絵画の中にあたかも吸い込まれるような感覚を覚える。その引力に、引きずられまいと必死にあらがいながら作品と対峙するのである。 本稿は、2022年10月12日から12月4日まで、東広島市立美術館で開催された特別展『難波平人―世界集落、その魂を描く』

        舟越保武《牧歌》廃棄に寄せて

          やっと記事を一つ投稿できそうです。近日中に投稿します。ご笑覧ください。

          やっと記事を一つ投稿できそうです。近日中に投稿します。ご笑覧ください。

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          はじめまして。「美術館で会った人」と申します。アカウント名の由来は、テクノポップグループP-MODELの曲《美術館で会った人だろ》(『IN A MODEL ROOM』収録、ワーナー・パイオニア、1979年)です。(この曲は聴いていただけるとわかるのですが、大変恐ろしい曲です・・・。)私がP-MODEL、そして平沢進(P-MODELの元メンバー、現在はソロミュージシャン)がとても好きなことと、よく美術館やギャラリーに行くため、「誰かわからないけど美術関係の場所になんかよく来てる

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