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忙しすぎる日本の中高生

私が子どもとマレーシアに来た理由の一つが、子どもの、そして私が子どもとの、「時間と心の余裕」を作るためだった。


この記事にも書いたのだけれど、とにかく、日本の学生は忙しすぎる。
例えば中学生。朝6時に起床。学校の後部活に行って19:30帰宅。その後習い事や学校の宿題に取り掛かり23:00就寝。こんなスケジュールが当たり前らしい。

え?いつ遊ぶの??

当時6年生だった長男が4月からこんな生活を当たり前に送るのかと思うと気持ちがふさいだ。本人ではなく私が。

そして、「みんなやっているから。」という理由だけでこの生活をやらせることは私にはできそうになかった。


なぜ日本の学生はこんなに忙しい?

日本の学生が当たり前にこういう生活を送る背景には、受験と部活が大きく影響していると思う。

受験では当然学業成績が大きな意味を持つ。受験という関門は次々くぐり抜けていった先に就職活動という関門までつながっている。(実際そうではなくとも、そう信じている親がいる限り子どもにプレッシャーはかかり続ける。)そうなると受験のための学習時間は増える一方だ。

また、部活の仕組みも厄介だ。一度入ったら簡単にやめられない、休めない、好きな時だけ参加するなんて許されない、土日も試合や練習がある、自分が出ない試合でも応援に行かねばならない、などなど。

これらが変わらない以上、日本で学生生活を送ると、放課後や休日も長時間拘束される要素が必ず出てくる。


国連からの勧告

日本政府は、国連子どもの権利委員会から過去複数回にわたって以下のような勧告を受けている。

「あまりにも競争的な制度を含むストレスフルな学校環境から子どもを解放することを目的とする措置を強化すること。」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/educationalhealth/28/0/28_3/_pdf

やっぱり世界的に見ても普通じゃない。この学生のスケジュールは。(ちなみに日本以外に同じような点を指摘されているのは、香港と韓国)

そして悲しすぎることに、日本は子どもの自殺が多い。
2023年は暫定値で507人らしい。計算上、一週間で約10人の小中高生が命を絶ったのだ。辛すぎる。
もちろん過密スケジュールとすべて結び付けて考えてはいけないとは思う。
でも明らかに原因の一つになっていると私は思う。


忙しすぎる学生生活を続けているとどうなる?

大人も子どもも、余裕のない生活を続けていると、思考停止状態になる。とにかく目の前のタスクをこなすことだけを考えるようになるし、将来自分がどうなりたいとか、自分が好きなことは何かとか、そんなことは考える余力がなくなっていく。考えたって無駄だと思ってしまう。

12歳から18歳の大切な時期に、こういう状態に陥ることだけは回避したかった。


海外の子どもの事情

もちろんこちらのインターナショナルスクールに通う学生も、放課後に習い事を詰め込んでいる(詰め込まれている?)子もいる。
でも少なくとも自分で変えられない仕組み(中学・高校受験や休みのない部活など)の中にほぼ自動的に取り込まれて時間が拘束されるということはないように見える。(同調圧力が日本ほどないということも含めて)

大学進学を望む場合には、どの国でも大きなテストを受験する場合が多いが、先進国においては、高校入試はない国が多い。ここマレーシアでも、インターナショナルスクールは一度入れば、幼稚園から高校卒業に当たる年齢まで、基本的に勝手に進級していく。

だから、大学に入るまでは、勉強もスポーツも、やりたければとことんやればいいし、逆にやりたくなければやらなくていい。
もちろん、学業もスポーツも、結果を出したければ脇目もふらずとことんやらなければならない時期はあるだろう。
でもそれも自分の裁量で決められる。その自由が少なくとも日本よりはある。
そして余裕がある時間割(中学生も早い日は14:30下校、課外活動に出ても16:30下校)のおかげで、好きなことに没頭したり、自分が何をやりたいのかを考える時間ができる。

子どもにとって大切なことは、生き方を自分で選択すること

私は、子どもにとって、「自由に選択すること」と、「選択したことへの責任を自分でとること」をセットで経験しておくことは重要だと思っている。

それは、おやつに何を食べるか自分で決めるようなことから、高校の選択授業で何を選ぶか、将来どうやって生きていきたいかなど大きなことまで。

さらに言えば、自由選択と結果の責任を引き受ける経験は、人生のできるだけ早い段階で、できるだけたくさんしておくことが重要だと思っている。

そのためには考える時間が必要だ。
選ぶには考える時間がいる。
その時間的、精神的余裕をもって暮らすことが大切だと考えている。

特に、思春期を「将来何になりたいかもわからないが、できるだけいい学校に入るために勉強する」時間に費やすよりも、「自由と責任」を生身で体験しながら、主体性をもって生きるということの方が、よっぽど将来に生かされると信じている。

ちょっとはみ出す勇気

とはいえ、我が家も留学は短期の予定。またすぐに日本に帰る。
そうなればこの忙しいスケジュールに否応なしにまた組み込まれていくのだろう。

でも一度この学校のシステムから離れたおかげで、日本の学生の過度な忙しさと、そのデメリットに、よりはっきりと気づくことができた。

もう子どもには無理して部活に入れとか、一度入ったら卒業までやり通せとか、偏差値の高い学校目指して勉強しろとかたぶん言わないだろう。

(たぶん留学していなかったら、「みんなそれが普通だから」とかなんとか言って言いくるめようとしていただろうし、そもそも入学予定だった校区の中学校からは「部活は一度決めたら3年間やり通すこと」と入学案内のプリントにはっきりと書かれていた。)

息子の「やりたい」や「やめたい」の選択を素直に応援したい

そう以前よりはっきりと覚悟を持てるのは、
私たちが一度はみ出しちゃったから。
なのかもしれない。

忙しい子どもたち。
でも、変えられない仕組み。

そこを救えるのは、親の「ちょっとはみ出す勇気」なのかもしれない。
留学なんて大げさなことじゃなくてもいい。
でもみんなとちょっと違う選択を許容する勇気。



英語教師の私がわが子に英語早期教育をしなかったのは、忙しくて挫折したのもあるけど、自分で英語を勉強するかしないかを選択させたかったというのもある。英語はやってもやらなくてもいいのだ。著書↓



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