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玄関大改革

世の中が流行り病で大騒ぎになった頃、パートナーから提案がありました。

「ウイルス対策として、家の中で着る服と外で着る服を完全に分けたい」と。

それは普段の口調よりも強いものでありました。
満員電車での通勤、仕事上避けられない不特定多数の人との会話で疲弊していたのでしょう。私が少女時分に喘息の発作で苦労したことを知っているので、気遣ってくれていたのもあると思います。

私自身は「ダメな時はダメ」とリスクある身として覚悟を決めていたのですが、真剣に考えてくれているパートナーの気持ちに応えない訳には参りません。

1日考え抜き、チラシの裏に書いた作戦は次の通りです。

まず、靴は玄関先で脱ぎます。
100円ショップにて購入したジョイント式の靴箱を玄関内の角に設置し、その日履いた靴を収納。
素足にて玄関に降り立ったらその場で洗濯しない上着やスーツを脱ぎ、壁にセットしてあるハンガーに掛けます。(着替えの際は恥ずかしいので、玄関と廊下の境に目隠し用の暖簾を希望しました)
玄関扉の内側にマグネット式の棚を設置してマスク用のゴミ箱と消毒スプレーをスタンバイ。
ゴミを処分して心ゆくまで消毒します。
使用したバッグや手回り品は今まで使用していた作り付けの靴箱へ。
洗面所で手洗いうがいを済ませたら、必要に応じてシャワーを浴びてお着替え。
室内着は最近空きができたタオル置き場に1組だけ用意しておきます。

このような動線を提案いたしました。

「確実に今までよりもゴチャゴチャしますし、靴箱に鞄や手回り品を入れるとなると、いくつか荷物を処分しないといけません」
併せて問題点を伝えたら「任せなさい」と力強いお返事をいただきました。

そこから先のパートナーの働きは凄まじいものがありました。というか、場所が狭いので私は離れた位置で見ているだけでした。

「傘? 人数分しか要らないよね?」
「雨の日に自転車は乗らないからカッパは捨てよう」
「この靴は古いし、こっちは靴底が擦り減ってるから処分」
「鞄は全部ここに入れたいから厳選しよう」
「今は遊んでないスポーツグッズも1回捨ててしまおう。なんか朽ちてる」

人は次々ゴミを捨てていると目が爛々と輝いてくるものなのですね。
これがウワサに聞く断捨離ハイというものなのでしょうか。
終わってみれば私の靴、2足しか残っていませんでしたもの。
家族の物に手を出すのは断捨離の世界では御法度ですが、スッキリした家を目指す私にとっては渡りに船。パートナーの健闘を心から讃えました。

心配していた使い心地はなかなか良いものです。
靴箱に靴をしまうという動作は学生時代を思い出して懐かしい気持ちになれました。
鮮やかで目を引くデザインの暖簾が遮ってくれるので、増えた荷物も特に気になりません。
後日、明らかに減らしすぎた靴箱の中を覗いてみたら防災用品が詰め込まれておりました。奥に秘蔵のウイスキーが見えたような気もしますが、黙っておきましょう。

仕事帰りのパートナーが半裸で暖簾をくぐってくるのも、数年経てば慣れました。
気に入ったのか習慣化したのか、今でもこのスタイルは継続しています。

もちろん、お客様がいらっしゃる時は通常の玄関の使用方法に戻しています。
ゲストを迎える立場として絶対に顔には出しませんが、他人が土足で玄関に踏み込んで来ると内心ギョッとしてしまうようになりました。パートナーと私のちょっとした秘密ですね。

お客様を迎える前後に念入りな掃除をするようになったので、我が家の玄関にはますます磨きがかかりました。感覚的には1部屋増えたと言ってもいいくらいです。

覚醒したパートナーによって大改革が行われ、さらに物が減った我が家。
次回はいよいよ物で溢れるキッチン編です。
ぜひ、お付き合いくださいませ。


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