15.行ってない中学校の同窓会
来たんですよね。うちのひろくん。
行ってない中学校の同窓会。
五年前くらいかな。
年末地元に帰ってて、ひろくんが同窓会に向かう僕と一緒にてくてく歩いてるからふと「ひろくんずっと不登校やったけど同窓会呼ばれたんや? 誰かに連絡先教えてたん?」と聞いたらいつも通りニコニコしながら「いや呼ばれてへんよ」と返されたときの僕はもう相方が人とは思えんくらい怖かったです。
僕は今現在「腐敗未遂の存命の方」なのでこれから頑張らなあかんし、ひろくんは今でこそ「若くして亡くなった人」でしかないですが、あれ本当にいっそ痛快なくらい人生無双していた怖すぎる人やったんですよ。
僕は中学校の初日でひろくんに話しかけられて仲良くなって、猫背で声がちいさいけど線の細い優しそうな男の子という印象でした。
ふにゃーっと笑う子で、「これからよろしくね」って普通に仲良く喋って、一緒に帰って、「あ、家近いね。明日うち来おへん? スマブラしようや」みたいに言ってくれてまた明日ねって別れて、ひろくんそれ以降ほぼ全く登校しなかったんですよ。
放課後にひろくんち行ったら普通にふにゃーっとした笑顔で出迎えて普通に元気そうで、いじめられていたとかでもなく病気とかでもなく、外で走り回って遊んだり僕以外にもなんでか他校の人と仲良かったり、意味わからんくて「なんで学校来おへんの?」って聞いたら「小学校6年も通ったから、もう学校飽きてん」とニコニコしながら言うわけです。
そのまま卒業式も来なくて、僕は高校に進んだんですけどひろくんは進学しないであちこちバイトしてて、でも別に家は貧乏ではなくて、ひろくんのご両親も変な人ではなくてむしろほんまに頭抱えて悩んではって、ひろくんの弟は「お兄ちゃんはいつも優しい。ただ人間とはちょっと違う生き物ではある」と言っていました。
僕はひろくんのことめちゃくちゃ変なやつやなぁと思ってはいたんですけど、他人に迷惑かけるでもなく、むしろめちゃくちゃ優しくて物腰もいつも柔らかくて、なんかやたらに博識なとことか好きやったので結局放課後になるとひろくんちに向かう日々を高校卒業まで続けました。
で、僕が大学受験失敗してどうしようかなぁと思ってたら、相変わらずバイトしたり遊んだりしていたひろくんがニコニコして「じゃあ小崎くん、僕と芸人さんやろー」って言い出した。
そのときはなんか僕も大概自暴自棄になっていたというか、必死に勉強したのに受験に失敗した事実がけっこうこたえていたので「ひろくんずっと人生楽しそうやしここでこいつにbetすると俺も多少ラクかもしれん」という程度で「オッケー、やろうかー」と答えてそのままです。
いつものらりくらりしてるひろくんを、僕はずっと「中卒だが元気だし博識なやつ」程度に思っていたんですが、成人式くらいにひろくんのご両親から「小学校もあんまり行ってなくて卒業式も出なかった」と聞いて思わず横にいたひろくんへ「お前中卒どころか保卒やんけ」と叫んだのが人生で一番声張ってたと思う。
でも司法予備試験とか受かってた。
司法試験受けてなかったけど。
学歴コンプレックスや逆に学歴マウントの話題になるたびに保卒人生無双男のこと思い出してなんとも言われんくなる。ただ、僕は普通に高卒なのでめちゃくちゃ普通に学歴コンプです。
ともかく僕は長生きする予定なんですが、僕が80年くらい生きられるとしてもひろくんの27年間より強い人生送れるかなぁ。
とりあえず行ってない大学の同窓会とか行ったらええんやろうか。
頑張るから見ててねひろくん。あとお前、俺の文房具とか日用品とか借りては失くしてを繰り返してたけどあれらはどこに消えてたん?
当時も散々キレたけど頼むから僕がめちゃくちゃ気に入ってたモンクレールの帽子だけほんまに返してくれ。
草々。
最後に「腐敗未遂」というコンビ名、僕とひろくんが適当に単語書いた紙を伏せて1人1枚めくった結果「腐敗」と「未遂」という致命的にきしょい単語が当たってしまい生まれたものなんですが、そのときの単語カードたち出てきました。
画像載せますね。
いや、腐敗未遂も大概気持ち悪いけど「ベイビー腹パン」の可能性もあったのか……あっぶねえ……。