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本当にやばいブラック企業には自殺もクソ残業も洗脳もない。けれど夢と若さと未来のみ奪う。ゆっくりと、けれど容赦なく

お疲れ様です、pontaです。

私は20代のころ小さな出版社に勤めておりました。出版業界じたいが縮小しているこの時代、そこも多聞にもれず経営は苦しく、給料も安く、得られるスキルは限定的でした。

たとえ出世したとしても、金持ちにはなれそうもなく。このままトシをとっても、自分がつまらない中年にしかなれないことは確定していました。

「そんなところ転職すればいいじゃん」って今なら思うし、その当時も思ってました。

でも、みんないい人だったんですよねぇ。出版社だけにみんな教養があり、東大、京大、早稲田、慶応あたりまえ。おっとりしていて親切で、品がある。

人間トラブルは多少ありましたが、パワハラめいたことはない。有給もとりやすく、残業もそれほどはない。

出張は多いですが、お客さんも優しくて、地方のご飯は美味しい。がんばっても給料は増えませんでしたが、がんばらなくても給料は減らない。

つまりぬるま湯です。

だからこそ、転職の踏ん切りがつかなかった。

わかりやすいクソならすぐ辞めちゃったんですけどね。

心のどこかで、時間が過ぎるのを、終業のチャイムがなるのをただ待つ毎日。それで給料がもらえるんだからラクなものです。

ゆうて、転職活動は面倒です。つらいです。何を好き好んで、面接官に自分の評価をされなくてはならないのか。だったらぬるま湯に浸かっていたほうがいいじゃないですか。

だから、結局私がそこを転職したのは、2人目の子供の妊娠がわかった30を過ぎたタイミングでした。さすがにこの給料ではと追い込まれての転職になります。

転職してみたら、給料は2倍になりました。もっと早く転職していれば、生涯年収は違っていたのに…と後悔しても、あとの祭り。

ってか、給料以上に痛かったのはキャリアを得る機会のロスでしたね。

出版社で学んだことも多々ありはしますが、5年目くらいで転職すればよかったかなあと思います。

といっても私は逃げ出せたからいいほうで、そこに残った同僚たちは、生涯年収を上げる機会を逃したまま中年になろうとしています。

あの会社が、誰でもわかるような、そこにいるのが耐えがたいような、もうちょっとわかりやすいブラック起業であればきっともっと逃げ出す人は多かったのかなと思います。

しかし、ヘタに居心地が良くラクなだけにみんな、ゆで蛙のように、ゆっくりと若さと将来性を吸われているうちに行き場がなくなってしまうという悲惨なアレで。

前述のように「出版」という文化的な職種ゆえに高学歴な人が集まり、若いうちはみんなどこでも行けそうではあったんですが、彼らが「転職したい」と思ったころには年齢もいっちゃって、結構キャリアパス的に厳しくなっていることも多く、つらみがふかい。

そういう意味で、真のブラック企業は、わかりやすい悪い顔ではなく、実はけっこうやさしい顔をしているのかもしれないなと思った次第。

以上、よろしくお願いします。

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