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行動経済学とマーケティング【2】

こんにちは、WEBライター・マーケターのさわかみです。

前回に引き続き、良書ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」を読み進めていき、マーケティングで使える知識を紹介します。

本書の内容は難しく感じますが、これを読み解く事自体が学びになっているように感じます。気になる方はぜひ購読してみてください!

■脳には「質問置き換えシステム」がある

なぜ人間が質問に直感で答えることができるのか、その時に人間の脳はどういった動きをしているのか、という点に焦点を当てた第9章(176p~)。

この章はユーザーに適切な回答をしてもらいたい時や、上手な問いかけ誘導文を書く時に役立つ知識が満載でしたので、内容をかい摘んで解説していきます。


1.人間はすぐに答えが出ない難しい質問を「関連ある簡単な質問」に置き換える

前回のnoteでも紹介しましたが「人間は普段の生活のほとんどがシステム1(無意識下で自動運転する脳の直感的思考モード)に導かれて生活している」という事実があります。(参照

このシステム1は、

すぐに回答できない難しい質問」を「②もとの質問に関連する簡単な質問」に置き換えて答えを出す動きをする

と本書で語られています。

①・②の質問をそれぞれ本書では以下のように呼んでいます。

①「すぐに回答できない難しい質問」→ターゲット質問(※1)

 【例】絶滅危惧種を救うためにいくら寄付するのか?

②「もとの質問に関連する簡単な質問」→ヒューリスティック質問(※2)

 【例】瀕死のイルカを見かけたらどんな気持ちになるか?

改めて、

人間はもとの※1を質問されて今すぐに回答しないといけない時、頭の中で無意識に※2の質問に置き換え、答える。

脳にはこのような置き換えシステムがあることを、まず覚えておきましょう。


2.「置き換え」からの「レベル合わせ」

システム1は「置き換え」だけではなく「レベル合わせ」という、もう一つの機能があります。

例に出した「絶滅危惧種を救うためにいくら寄付するのか?」という問いに対し、「瀕死のイルカを見かけたらどんな気持ちになるか?」と置き換えた質問で自分の気持ちを計り、その尺度から寄付額を算出し回答する。

これが「レベル合わせ」です。

違う例を出すとすれば「現在の生活はどれくらい幸福か?」という問いを「いまの自分の気分はいかが?」と脳内で置き換え、幸福度を出し、回答することができます。

つまり、質問の本質を自分の感情レベルに合わせ、回答を導き出すシステムといえます。

人間が難しい質問にすぐ答えることができるのは、「置き換え」「レベル合わせ」といった動きがすぐに脳で行われているからだと本書では語られています。


■「質問置き換えシステム」はユーザーにしっかり回答をしてもらいたい時に活用できる行動経済学

ここからは、前述した「質問の置き換え」を活用するには?という体で語っていきます。

まず、アンケートなどでユーザーに適切な回答してもらいたい場合「質問の順番」を工夫しましょう。

ユーザーの脳で「質問の置き換え」が実際に起っているのであれば、予め質問者側で置き換えた質問を先に配置しておけば、ユーザーはその先の質問もストレス無く回答することができるというわけです。

つまり、

本質的な質問の前にヒューリスティック質問を先に提示しておく

これによりユーザーは質問意図の想像が容易くなり、考えるストレスが減ります。

また、アンケートなどで行き詰まる要因が無くなり、回答数を増やすことも期待できます。

具体的には・・・

【※1】絶滅危惧種を救うためにいくら寄付するのか?

ではなく、

【※2】瀕死のイルカを見かけたらどんな気持ちになる?→では、あなたは【※1】絶滅危惧種を救うためにいくら寄付するのか?

というような流れで質問を構成すると、ユーザーは離脱せずスムーズに回答ができるのではないでしょうか。


■記事やLPの問いかけ誘導文なども「質問置き換えシステム」を考慮し作ってみると効果的?

無意識下で行われる「質問の置き換え」を考慮した上で、問いかけ誘導文などを作ってみるのも効果的だと思います。

あなたは今の収入で満足ですか?」などの問いかけ誘導文がよくありますが、これだけだと「今どうだろうか・・・?」と自分の収入を振り返るストレスと回答を出すためのラグがユーザーに発生します。

「今の収入」というどの地点での話なのか分からない漠然とした事をユーザーは頻繁に考えてはいません。

そこで、「あなたは先月どれくらい稼ぎましたか?、その収入であなたは今満足ですか?」というような問いかけ文に変えてみると、

「先月いくらだった・・・もう少し欲しいかも!」とすぐにユーザーの思考を誘導することができます。

直近の収入であれば、明確な数字までは分からなくても「自分的にどうだったのか(満足度)」はすぐに答えが出ます。

このように、書き手主導で問いかけの順番を工夫した文章で誘導してあげることにより、ユーザーが感じる無意識下のストレスを減らすことができます。

■無意識下の脳の動きを知れば有利な戦略を立てられる!

マーケティングにおいて人間の行動を知ることは、とても大切なことです。

目に見える行動の調査はもちろんですが、人間の脳や思考のメカニズムを知っておくとマーケティングに深みが増すと思います。

具体的な戦略を立てる時の根拠としても使えるこういった知識は、自分自身が迷った時の助けにもなってくれそうです。

ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」は、まだまだ理解しきれていない部分があるので引き続き読み進んで、人間の意思決定を学んでいきたいと思います。


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