アカデミー賞?ノープランだ!…だったかも~映画『パラサイト』感想

 ※ネタばれあり。パンフレット等読んでいませんので、観た記憶で書いています。「ここ、違くない?」という点がありましたらすみません。 

 鑑賞後にまず思ったのは「よくできてるなー」でした。話の展開はスピーディーで全く飽きがこないし、地上(高台?)・半地下・地下という世界観も分かりやすい。
 韓国映画を観るたび思うのが、「近いようで全然違う文化の国だなあ」ということ。この映画で一番そのことを感じたのは、登場人物たちの人間関係、もっというと上下関係に関してでした。先に書いた通り物語は地上・半地下・地下という3つの階層に分かれた世界で展開しますが(というより現在の韓国の世界がそうした社会構造になっているのだと思うのですが)、単純に考えると人間関係も地上→半地下→地下という上から下という関係になりそうなものの、微妙にそうなり切っていないように見えるのです。例えば“石”を土産に一家を訪ねてくる長男の友人くん。大学に入って留学までできるということはかなりいいところのお坊ちゃんだと思うのですが、格下といってもいいような主人公一家の両親にも礼儀は欠かさず。そもそもその石を持ってきたのも“父親に言われたから”というところからも目上の人の言葉は絶対、という儒教的な倫理観の強さを感じます。主人公自身も父親に対して敬語ですし(対して娘は父親にもフランクな言葉遣いなのが不思議でしたが…。女の子は許されるのでしょうかね?)。長男くんとお友達は高校の同級生なのでしょうか。家族同士も知り合いのようなので幼馴染のような関係なのかも。
 “地下”の人たちに対しての主人公一家の態度も、最初こそ物凄い勢いでバトルしていますが後になって「ちゃんと話し合ったほうがいいんじゃない」と歩み寄ろうとしたり、「お腹すいてるだろうから」と食べ物を持っていこうとしたり、亡骸を埋葬してあげたり。単純に“上から目線”ではないところがおもしろい。日本の方が「うちはあんな人たちとは違う」と完全に切って捨てそうな気がします。
 逆に地上の人たちに対する想いが嫉妬や恨みではあまり現れないのが興味深い。地下の人に至っては想いが“崇拝”にも近い形になるのが、理解しづらいところではありました。私だったら「こっちはこんなところで苦労してるのに、なんであんたたちはそんなところでのうのうと!」と妬んでしまいそうです。実際のところ韓国の格差社会の“差”は本当に酷いようなので、“地下”“半地下”の人たちは羨ましがるどころではないのかも。「とてもあんな人たちのようにはなれない」という想いが、歪んだ尊敬の念になり、やがて殺意に変わったのでしょうか…。
 そして物凄く穿った意見なのですが。結構アメリカ寄りのシーンが多かったよね、と思うのです。長男くんが英語の家庭教師という設定からしてそうだし、ところどころ台詞に英語が挟み込まれていたり。一番そう感じたのは、家庭教師先の一家の息子くんが庭に建てたテントを見て夫婦が交わす会話。「あれ、風に飛んだりしないか」「アメリカ製だから大丈夫よ」。アメリカびいきっぽかったからアカデミーも賞OKしたのかも―なんてヒネた見方をしてしまいました。以前『ライフイズビューティフル』がアカデミー獲った時もそんな意見があったような(最後にアメリカ軍が助けに来るという展開だったから賞獲れたんだろう的な意見)。だからトランプさん、文句言うことないと思う笑。
 反対に北朝鮮の女性アナウンサーの真似をするシーンは「これ、いいのかな」と心配になりました。かの国では絶対アウトですよね。日本製品が出てきたシーンもありましたが、なんか「あれ?なんで日本語?」と一瞬混乱しました。
 ともあれアカデミー賞受賞は快挙!だと思います。でも“アジア映画”と括るのは、なんか日本もその中に入ってるぞ的なちゃっかり感があって好きじゃないんですよね…。これは韓国映画の偉業ということでいいんじゃないかと。日本映画は日本映画で頑張ってほしいなあ。
 

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