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『コンテンポラリージュエリー』ジュエリー表現のマーケットについて ♯2

前回の投稿からリクエストのあった、“具体的にどうやってギャラリーと繋がれば良いの?”という問題について、今回は自身の体験談からいくつかご紹介したいと思います。これで絶対に成功するという訳ではありませんが、少なくとも私はこれらの方法を試した結果、今現在、複数のギャラリーと一緒に仕事をしています。


ギャラリーへのアピールの仕方

ギャラリーで展示をするために、まずは作品を知ってもらわなくてはいけません。その方法として、①SNSで発信②公募展に出展③直接交渉④アーティストからの推薦が挙げられます。
まずは最低限の作品を準備するところから説明します。
※日本にはお金を払えば使用できるレンタルギャラリー(貸画廊)もありますが、ここではギャラリストのいるコマーシャルギャラリーに焦点を当てて説明しています。

ある程度の作品量

“ギャラリーと一緒に仕事をする”ということはつまり“展示、販売を任せる”ということです。ここで言う展示は個展やグループ展を指し、その為には多くの場合ある程度の作品量が必要になります。これは何年か制作して作品数を作り溜めてから行動するというわけでは無く、同じテーマ/グループとして見せれる最低限の数を準備しておくということです。例えば展示スペースにもよりますが、大きなネックレス作品であれば数点、ブローチだと10点前後、リングとなると20点前後は必要になるかもしれません。「展示できる準備は整っています!」というメッセージは、ギャラリストが展示をイメージする上で重要な情報なので、たった一点の力作だけでは無く、展示が決まった先のビジョンを見据えて準備する必要があります。また「まだ自信がないので良い作品が出来たら…」という人もいますが、その作品が良いかどうかは周囲の人間が評価します。誰かに観てもらうことで初めてわかることも多いので、積極的に作品を観てもらうことをお勧めします。
そして準備段階で最も重要なことは作品の写真撮影です。なぜなら最近のSNS普及や写真審査の公募展などでは絶対的にクオリティの高い写真が有利だからです(ここで言うクオリティは解像度の高さ、陰影の綺麗さ、素材感等を指します)。また将来のカタログ製作用のアーカイブとしても必要になることは言うまでもありません。特に作品が流通した後では写真の再撮影は困難なので、作品が完成したらすぐにクオリティの高い写真を準備することが必須です。写真、タイトル、サイズ、材料、制作年を作品の完成とともに英語と日本語で準備しておくことで、いざという時にすぐ行動に移せます。

①SNSで発信

皆さんもご存知だとは思いますが、重要な情報発信ツールとしてInstagramやFacebookなどが挙げられます。少し前まではパソコンでチェックするウェブサイトが効果的なメディアでしたが、現在では情報収集をパソコンではなくスマートフォンでおこなう人が全体の9割へと増加しているそうです。これを踏まえると、スマートフォンベースで作品が魅力的に発信できるような工夫が必要になってきており、“どのようにSNSを活用するのか”がアーティストに問われています。世界的な利用者数から考えるとFacebookがダントツに多く、自身の作家ページを開設することは有効かもしれません。ただ欠点として“利用者の年齢層が高い”ということがネックだと思います。続いて利用者数の多いInstagramでは、多くのギャラリストがアーティストをチェックしているという話は有名です。作品や制作工程をメインとした投稿を心がけ、プライベートな写真は避けることをお勧めします(ある程度フォロワー数が増加したら逆にプライベートな投稿も有効かもしれませんが)。この二つは既に活用しているアーティストも多いと思いますが、若年層に視野を向けるとTikTokも面白いかもしれません。まだ作品を有効的に発信するツールとして使用しているジュエリーアーティストが少ない(いない?)と思うので、上手く活用できるとCJ分野では第一人者になれるのではないでしょうか。
また、全てのコンテンツに共通しますが、ハッシュタグ(#)の活用は重要です。どこの誰に作品を観てもらいたいのかを明確に意識して投稿をすることで、ギャラリーと繋がる確率が格段にアップすると思います。そして、全てのSNSをリンクさせることも有効的です。いつどのメディアがチェックされるかわからないので、アーティストとして宣伝しているSNSやウェブサイトはリンクさせておきましょう。

②公募展に出展

これはクラシックな方法ですが、公募展に応募することは現在でも重要です。公募展の結果はオンラインでどこの場所からでもチェックが可能になり、昔よりも今の方が遥かに影響力があるかもしれません。作品準備の段階でも述べたように、作品の評価は周囲が決めます。手元に作品があるのであれば積極的に応募することが重要です。必ずしも賞を取る必要は無く、入選するだけでも宣伝効果は期待できます。以下、私がチェックしている公募展やフェアなどの情報をシェアします。

コンテンポラリージュエリー関連公募展一覧
コンテンポラリージュエリーのみ
SCHMUCK(ドイツ)
・ Legnica International Jewellery Competition(ポーランド)
・ Gioielli in Fermento Award(イタリア)
・ Enjoia't Awards(スペイン)
・ Mari Funaki Award for Contemporary Jewellery(オーストラリア)
・ 伊丹国際クラフト展“ジュエリー”(日本)
・ 日本ジュエリー展(日本)
コンテンポラリージュエリーを含む美術工芸全般
LOEWE FOUNDATION Craft Prize(スペイン)
・ Friedrich Becker Prize(ドイツ)
・ Silver Triennial, International Competition Award(ドイツ)
・ European Prize for Applied Arts(ベルギー)
・ 金沢・世界工芸コンペティション(日本)
年齢制限あり
・ Talente Competition(ドイツ)
・ BKV Prize(ドイツ)
・ Preziosa Young Design Competition(イタリア)
・ AJF Young Artist Award (アメリカ)
・ Susan Beech Mid-Career Grant (アメリカ)
フェア参加型(ブースレンタル)
NYC Jewelry Week(アメリカ)
・ Autor Fair(ルーマニア)
・ JOYA Barcelona Art Jewellery & Objects Fair(スペイン)
・ SIERAAD(オランダ)
・ Milano Jewelry Week(イタリア)
・ Athens Jewelry Week(ギリシャ)
・ Romanian Jewelry Week(ルーマニア)
・ Brazil Jewelry Week(ブラジル)
その他関連イベント
Munich Jewellery Week(ドイツ)
・ Florence Jewellery Week(イタリア)
・ Lisbon Contemporary Jewellery Biennial (ポルトガル)

③直接交渉

「ギャラリーに直接作品を持って売り込みに行った」「ポートフォリオをギャラリーに直接送った」というアーティストの話を聞いた事がある人もいるかもしれませんが、現在ではメールでの売り込みが良いそうです。メールにPDFデータのポートフォリオを添付してギャラリーに送信することで、ギャラリストの時間や手間を省くことに繋がり、その結果、作品をチェックしてもらえる可能性が上がります。長文だと最後まで確認してもらえない場合があるので、見てもらいたい作品を端的にまとめ、少ない情報量で興味を持ってもらえるような内容にすることが重要です。ウェブサイトやSNSを見てくださいというメール内容ではほぼチェックしてもらえないので、英語版で一つのデータを準備しておくと、色々な機会で使用できると思います。

④アーティストからの推薦

コンタクトを取りたいギャラリーに所属しているアーティストから、直接ギャラリストに紹介してもらうことが一番可能性の高い方法です。この方法だとギャラリストが確実に作品をチェックしてくれます。しかし、注意してもらいたいのは紹介役のアーティストが友人/知人だからといって、誰でも簡単に紹介してもらえる訳ではありません。ギャラリストが興味を持ってくれそうな作品やギャラリーと合いそうなアーティストだった場合、始めて紹介してもらえる可能性が出てきます。自分自身の作品がギャラリーの方向性に合わない可能性もあるので、無闇矢鱈と友人アーティストへお願いをすることは避けましょう(自身の作品の客観性は大事です)。

以上が私の経験からくるギャラリーとの繋がり方ですが、最後にいくつか注意点を。①SNSで発信②公募展に出展はオープンに情報を発信しているので、アーティストは連絡を待つ形になります。この場合、自分の意図していないギャラリーやECサイトなどからも連絡が来る場合があるので、しっかりと相手側の情報収集をしてから返事をすることお勧めします(詐欺紛いの連絡もあるので注意が必要です)。また③直接交渉④アーティストからの推薦は自分自身でコンタクトを取りたいギャラリーを選択できますが、その選択にも注意が必要です。ジュエリーアーティストの多くは複数のギャラリーと一緒に仕事をしている人が大多数で、そして必ずと言って良いほど、どこのギャラリーで展示をした/するのかをシェアします。それは国や地域ごとのギャラリーで暗黙のルールがあり、後々モメ事が起こる可能性があるからです(コレクターや出展するアートフェアが一緒だったりするので)。このようなトラブルを避ける為、以上のことは頭に入れておいて下さい。

私は全ての項目に挑戦した結果、今でも一緒に仕事をする複数のギャラリーを見つけました。もう受け身の時代ではありません。情報過多のこの時代、賢く戦略的に自身の活動の発信を行うことが、アーティストとして成功する第一歩に繋がると私は考えています。


アーティスト紹介プログラム継続中https://www.instagram.com/c_jewellerysymposium_t/



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