ギャラリーの機能を併設した幡ヶ谷のコンセプトショップPOESIES/今後の新しい試み
渋谷区幡ヶ谷駅の北口から徒歩3分。甲州街道沿いに昨年8月にオープンしたコンセプトアパレルショップPOESIES(ポエジー)。
コンセプトを重視したお店つくり、ギャラリーとしての機能、セレクトショップとしての新しいスタンス。そしてパリにあるショールームのような独特の店構え。
今回は店主斎藤の夫でもある、Tsutomu Saitoへのインタビューを敢行。ファッションエリアではない幡ヶ谷で、かつ「個人商店」でありながら様々な試みに挑戦するPOESIES。創業のディレクションストーリーと現在、そして未来の話を聞きました。
ーPOESIESとの関わりは?
僕は現在、国内の歴史あるセレクトショップでお仕事をさせて頂いております。
妻がPOESIESを立ち上げるにあたり、大枠のコンセプトやブランドとの橋渡し的な事をお手伝いしてきました。
加えて趣味でPOESIESのサウンドデザインをしています。
ーファッションのキャリアを教えて下さい
出身は東北ですが、大学で新潟に移り住み、学生時代通っていたモード系のセレクトショップにそのまま就職、15年ほど販売/バイヤーを担当していました。その後、感性と科学を両立するノウハウを学ぶことを目的とし、MD職として上京しました。
ーウェブでも気軽に洋服を買えるこの時代に、なぜ実店舗をつくろうと思ったのですか?
自分のお店を持ちたいという店主の思いがあり、また僕も販売経験が長いので、お店というものに愛着があります。販売員時代、熱心なお客様との会話はとても楽しいものでした。
しかし、おっしゃる通り洋服を販売するにあたり、ネットでもどこでも買える便利な時代です。そんな状況の中で、洋服を通し我々とお客様、お客様とお客様が交流できるような場所があったら面白いなと考えていました。
個人商店でありながら、ポップアップやデザイナーをお呼びした企画展などを定期的に開催するギャラリーのような機能を備え、実店舗でしか味わえない「体験」や「交流」もお客様に提案したかったんです。
ーショップの雰囲気は独特ですが、POESIESに対して思い描いたイメージは?
パリの古びた建物の一室にある、簡素なショールームのようなイメージです。
それは「映え」を重視するような、洗練されたムード、またはデコレーション的な雰囲気とは違うのですが。
この物件の存在感や歴史を感じる朽ちた部分を生かし、自分がパリで見て美しいと思ったような、シックでラフな方向性にしたい、と考えました。
ここ数年パリにも行っておらず、以前ほどリサーチもしておりませんでした。先日たまたまパリにバイイングに行っていた後輩のインスタ等で、僕の中のPOESIESのイメージに近い空間を見つけたんです。そこはStefano Pilati(ステファノ・ピラーティ)のRANDOM IDENTITIES(ランダム アイデンティティーズ)が展示会をやっていたり、Meryll Rogge(メリル ロッゲ)もショールームとして使っていたり。
調べたらDOVER STREET MARKET PARISのカルチャースペース「3537」でした。
ーPOESIESのコンセプトについて教えてください
「ファッションを理解しようとせず、詩を読むように目の前に広がる世界を感覚的に楽しんでほしい」
POESIESを立ち上げる際、ウィメンズ/メンズの境目をつくることや、ターゲットとなる年齢層などを絞るのはやめました。
これまで色々な経験をしてきた中で、POESIESでは自分たちの表現したいことやこだわりを、お客様に押しつけたりしたくはなかったんです。
またマーケティング的な事は強調せず、洋服をフラットな視点で見て楽しんでもらいたい。そう考えました。
そして何よりこのコンセプトが成立している理由は、取り扱わせて頂いている商品が、ノージェンダーな時代の空気感を纏ったものでありながら基本ベーシックで、かつ丁寧なもの作りに裏つけられた完成度の高い商品だからだと思います。
ー商品の特徴について教えてください
Dessin de Mode(デッサンドモード)はデザインに特化したブランドと思いきや、実はプロダクトの完成度に強い意識を持っています。
デザイナーは一年の大半を全国の技術の高い職人や工場をまわる事に費やし、品質の高い商品をつくる事に奔走しています。
例えばJil SanderやPRADAなど、海外のメゾンが使う日本の生地をさりげなく使っていたり。
ウィメンズに加え22AWからメンズもスタート。都内ではPOESIESのエクスルーシブとなったメンズファーストシーズン。インディペンデントな試みながら予想以上の反響を頂きました。
友人がディレクターを務めるWRPAPINKNOT(ラッピンノット)は、ニットの街として有名な新潟県五泉市にある「ウメダニット」のファクトリーブランド。ディレクター梅田くんは僕と同い年で、もともと影響を受けきたファッションも重なる部分が多いんです。
ニットのファクトリーブランドと聞くと真面目で質実剛健なイメージがあるじゃないですか。
でもWRAPINKNOTはその真面目さに加え、華やかで洗練された印象があって都会的。
周辺地域の方にもフィットしていると思います。
多くのメゾンやデザイナーからもオファーが絶えない「京都マーブル」初のメンズアイテム=キューバシャツを、6種類の柄から選べるパーソナルオーダーも受注会で好評でした。またWRAPINKNOTと同じ、新潟県五泉市の老舗ニット工場「ナック」のファクトリーブランドROUTINE(ルーティーン)もスタートしました。
ー幡ヶ谷の街はどんな印象ですか?
土日はできるだけPOESIESに通うようにしていて、代々木上原から西原を抜けて、幡ヶ谷まで歩くのが日課になっています。
Katane Bakery(カタネベーカリー)やkasiki(カシキ)、PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)の賑わいを眺めながら、無心で歩くこの時間が何故だかとてもリラックスできて、週末のひそかな楽しみになっています。
そして甲州街道が見え始めると、一気に景色が変わります。横断歩道を渡り、幡ヶ谷駅の北口からPOESIESまでのおよそ3分間。人通りが多く、多国籍な飲食店が並ぶこの喧騒も、愛着ある景色になりました。
ファッションエリアではなかったので心配していたところはありましたが、ありがたいことに地域に住むリピーターのお客様が以前より増えています。エリアとしてのコミュニティが強いようで、お客様がお友達を連れて来て頂いたり、ランチやお買い物のついでに立ち寄ってくれたり。ご主人様が奥様を連れて再来店して下さったり。
徐々に地域の一員として認めて頂けていると実感しています。
ーPOESIESの今後について
始めにお話ししたように、通常のショップの運営と並行して、定期的にお客様が集うような企画を行ってまいります。昨年はオープニングイベントとして「FashionTuesday」様と協業したり、今年の2月には23AWのサンプルを一同に展示、デザイナーもお呼びして3ブランド合同の先行受注会も開催しました。
次は5月のゴールデンウィーク明けに、お客様を巻き込んだイベントも企画中です。
また、ブランドやアーティストとの協業、ポップアップやインショップなどお客様が楽しんで頂けるようなイベントを計画、発信し、幡ヶ谷から「体験」を含めた、新たなファッションの楽しさを伝えていければと思っており、こちらも企画中です。
新しいことを柔軟に取り入れながら、常に進化していけるショップでありたいです。
ー最後に、ご夫婦でお店を運営してみていかがですか?
「良い意味で2人のキャラクターが全然違いますね」と周りによく言われます。おっしゃる通り、性格も全く異なりますし、趣味も近いようで異なっています。得意な仕事もくっきり分かれているので、役割分担ができていると思います。
親しみやすい店主がお待ちしています。
是非気軽に遊びに来て下さいね!
POESIES_TOKYO Instagram
https://instagram.com/poesies_tokyo?igshid=YmMyMTA2M2Y=
幡ヶ谷の甲州街道沿いに突如現れたコンセプトアパレルショップ「POESIES」とは?
fashionsnap.comより
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