いちむらの食卓

毎週、世界各地のエシカルフード動向についてコラムを書いています。 https://ww…

いちむらの食卓

毎週、世界各地のエシカルフード動向についてコラムを書いています。 https://www.ethicalfood.online/writer/ichimura_toshinobu/

最近の記事

久しぶりにThe Burnに行ってきた。

2021年もいよいよ暮れに差し掛かってきたが、ちょっと思うところあってnoteでブログを書くことを再開しようと思う。 「思うところあって」と言っても別に大したことはないのだけど、日々考えていることを文章に起こしておくことはやはり大事だなと思った次第です。 と言っておきながら、いきなり今日食べてきたメシの話をする。今日は青山一丁目のThe Burnで久々にディナーを食べてきた。というのも、The Burnの顔である米澤シェフが年内でThe Burnの運営から離れるためである

    • 王子「Greedy Fox Burger」に行ってきた。

      王子に新しいバーガー屋ができたらしい。そんな話を目にしたのは確か、いつかのInstagramでのこと。 王子は昔、塾の仕事で定期的に行っていたこともあるけど、よく考えるとあの街で飯を食ったことはない。そんな王子にバーガー屋ができたのか。食べログで見たところ、なかなかバーガーは旨そう。 あと、店名がなんとも良い。「貪欲なキツネ」ですからね。 ということで、4月中に一度、トライしてみた。店に着いたのは確か14時くらい(だったような気がする)。で、店の扉を開けてみたところ、な

      • テキサスの大寒波&大停電のニュースから、現代フードシステムに思うこと

        ここ数日、Youtubeでアメリカのニュース番組なんかを見ていると、南部テキサス州が大寒波に襲われた件ばかりやっている。 いまアメリカでは、テキサスのみならず全米規模で大寒波が襲来しており、特に南西部から北東部までをグイッと線で結んだあたりが大雪で大変なことになっているらしい。アメリカでは現在、絶賛ワクチン接種が進んでいるわけだが、この寒波で物流も滞りワクチン接種の遅れも出ているそうな。 で、この寒波に絡んで最も話題になっているのが、テキサスの一部地域で大規模停電が相当な

        • バーガーキングの「プラントベース・ワッパー」さっそく食べてみた。

          本日、12月11日からバーガーキングで発売となったプラントベース・ワッパー。大豆を使用したプラントベースパテを使用しており、ファストフードチェーンでのプラントベースバーガー発売は、フレッシュネス、モスバーガー、ロッテリア、ドトールなどが先行していたものの、日本での海外勢としては初めての試みです。 なお、世界的にはプラントベースバーガーの販売はかなり進んでいて、先日もマクドナルドがプラントベースブランド「McPlant」の発売開始を発表したばかり。その辺の事情については、以前

        久しぶりにThe Burnに行ってきた。

          肉税について思うこと

          毎週掲載しているエシカルフードニュース、今週のネタには「肉税」の話題をチョイスした。 記事でも書いた通り、肉税とは、昨今の畜産業の環境面や健康面からの批判を背景に、ヨーロッパを中心に真面目に検討されている”悪行税”(sin tax)であり、他にも悪行税としてはタバコ税などが有名だ。まあ、"悪行税"ってのは、ずいぶんなお名前じゃないかと思わなくもないのだけど、とにかく最近、肉に対しては風当たりがきつい。「肉を食べることは悪行だ」とヨーロッパの人々が言い出すのも想像できる。

          肉税について思うこと

          コロナが教える Eat Localと食料安全保障の大切さ

          新型コロナウィルスが生活の様々な場面に影響を与えており、世界各地の食の現場も例外ではなく、多くの国で食にまつわる変化が起きています。特に、欧米では大規模なロックダウンが実施されて早1ヶ月ほど。ロックダウンが実施されている国々の食の現場への影響がニュースの形で日々伝わってきます。そして、その食の変化からは、日々の食のシステムがどういう問題や脆弱性をはらんでいるのかが見えてくるように思いますし、そこから日本が学ぶべきこともあります。それでは、いくつか分類をしてここ1ヶ月ほどの主な

          コロナが教える Eat Localと食料安全保障の大切さ

          コロナの状況を時系列で知りたい件 Part2

          今週からいよいよ非常事態宣言が東京はじめ都市部で発令されてますね。どうやらこの状況は少なくともGWまでは続きそうです。 ところで、相変わらずテレビ中心に、メディアでは毎日の新規感染者数ばかり報道されていて、その中での重症者数や死者数の推移が注目されることが少ないような気がします。一応、僕は厚生労働省の発表資料を毎日チェックして数値をアップデートしており、各種データを時系列で追っています。 まずはよく報道されているこのグラフです。こちら、症状の有無は問わずに入院者数をプロッ

          コロナの状況を時系列で知りたい件 Part2

          日本のコロナの状況を時系列で知りたい件

          今週末はとりあえず自宅にいろとのお達しなので、家に引きこもっていた。つまり、東京中心にコロナが拡大するかの瀬戸際だから大人しくということだったのだが、ここ最近がどうやばいのかはこれまでのデータと時系列で比較しないと何とも納得できない気がする。 で、もろもろのデータの時系列でのグラフとかをネットで探してみるのだが、なかなか見つからない。 ということで、暇な時間を有効活用して、これまでの日本のコロナ関連のデータをまとめることにした。ちなみに、データはすべて、3/1〜3/29まで

          日本のコロナの状況を時系列で知りたい件

          食からジェンダーを考えてみる

          昨日、3月8日は国際ウィメンズデー(IWD)だった。 調べてみたところ、どうやらもともとは1904年にニューヨークで婦人参政権を求めるデモが行われたことに因んでるらしい。かのアメリカでも婦人参政権がなかった時代があるというのが実に新鮮な事実で、この約10年後に起こるロシア革命はそういった意味でまさにパラダイムシフトだなと思ったりする。 さて、ジェンダーというと、最近だと我が国では#kutoo運動に代表されるフェミニズムの文脈で語られることが多いけれども、このIWDに前後し

          食からジェンダーを考えてみる

          本の記録:安宅和人『シン・ニホン』

          kindleで一気読みした。新しく知る純粋な発見はもちろん多かったけれども、なんとなく最近ぼんやりと思っていたことが論理的に補強されて確信に変わるところもかなり多かった。 AIの発展による人間の本質としての「意志」や「知覚」へのハイライト。そして、この意志と知覚に基づいて、望む未来を妄想すること。この未来の妄想は本質的に学問的で、価値ある学問(すなわちこれまでなかった学問やアイデア)は常に異なる分野の境界領域から生まれること。 未来を妄想し、不確実性の高いなかでもその理想

          本の記録:安宅和人『シン・ニホン』

          本の記録:石毛直道『日本の食文化史』

          久しぶりに気合を入れて読み直した。いつでも日本の食文化史を俯瞰で追いかけられるとても貴重な本と思う。 あらためて思うのは、食文化は常に社会や環境の状況と密接しながら変化をしてきたのだなという、至ってシンプルなこと。 温暖化による稲作にはじまり、農耕社会の形成と宗教が複雑に絡み合ったによる肉食のタブー化。 西欧社会との接触による外来作物や南蛮料理の流入。そして、戦国時代の新秩序の中での新たな食文化の創造。 貨幣経済の浸透による町人文化の発達と都市的食文化の洗練。鎖国下の

          本の記録:石毛直道『日本の食文化史』

          本の記録:ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』(上巻)

          三部構成で、第一部「認知革命」第二部「農業革命」第三部「人類の統一」。 地球上のただの動物にすぎなかったホモ・サピエンスが「人」の定義を手にした認知革命。虚構の上を、すなわち想像上の秩序に生きる能力を手にすること。 この瞬間から歴史が生物学からの独立を宣言したと喝破する著者の一文は秀逸。この想像上の秩序に生きることができる能力があるからこそ、生物学的な世界とは異質の「文化」と呼ばれるものが誕生する。社会科学は実態のない(共同主観的な)想像上の秩序に何らかの客観的な意味を肉づ

          本の記録:ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』(上巻)

          本の記録:池内恵『シーア派とスンニ派』

          そもそもシーア派とは何か。対立的な宗派としてのスンニ派とは何か。 根本的な問題は、「最後の預言者」を設定したイスラム教のジレンマにあるのか。宗教としての強固な力と引き換えに後継問題を深刻化させた。 そして、宗派対立はすなわち、宗派によるコミュニティ対立の問題である。 スンニ派が支配する国家にあっても、集住的なシーア派コミュニティが存在し、これらは十分既存勢力を脅かすに足りる力を持ちうる。 現在の宗派コミュニティの対立の起点はイラン革命に求められる部分が大きい。 反米をアイ

          本の記録:池内恵『シーア派とスンニ派』

          本の記録:鈴木宣弘『食の戦争』

          今日は昼から、東大の鈴木宣弘先生の『食の戦争』を読んだ。 https://www.amazon.co.jp/食の戦争-米国の罠に落ちる日本-文春新書-…/…/4166609270   6年前、TPPについて議論が交わされていた頃の本ではあるけど、日米FTAのこともあるので参考にと思い買ったのですが、数字をベースに日本の農業的な対米依存を明らかにする、期待通りとても興味深い本なのでありました。   特に印象に残ってる部分について引用をば。 ・「貿易自由化とは、比較優位への特化を

          本の記録:鈴木宣弘『食の戦争』

          本の記録:阿古真理『小林カツ代と栗原はるみ』

          そもそもこの本は、料理研究家という職業の系譜を追うことによって、日本の家庭料理を取り巻く社会的な情勢、特に日本の社会における女性の立場を明らかするものである。 料理研究家という職業の重要性を考える上で肝心なのは、なぜ料理研究家という職業が誕生したのかという社会的背景である。本書によれば、日本で最初に料理研究家が出演し、人気を博した料理番組は1956年(昭和31年)から放送が開始された日テレ系『奥様お料理メモ』だった。つまり、昭和30年代から日本において料理番組、および料理研

          本の記録:阿古真理『小林カツ代と栗原はるみ』

          本の記録:阿古真理『うちのご飯の60年』

          「祖母」の時代(昭和20年代ごろから)は未だに日本の農村部では自給自足の生活が当たり前で、戦前はいわゆる「ハレの日ケの日」の風習が色濃く残っていた。戦後すぐの1945年は米の不作で戦前期の65%ほどしか収穫がなかった。男手が招集されていたこと、冷害があったこと、台湾・朝鮮が独立したことが大きかった。 昭和20年代までは食べることを家族で賄うことが重要であって、機械化が進んでおらず、流通が特に発達していなかった農村の状況では子供も含め大人数の家族で食べごとの仕事をしなければ生

          本の記録:阿古真理『うちのご飯の60年』