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小さいからこそ、できること



子どもの頃、「しょうぼうじどうしゃじぷた」という絵本が好きだった。

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「じぷた」はジープを改造した、小さな消防車だ。ほかの立派な消防車たちよりもずっと小さいし、いつも周りから馬鹿にされている。でも小さいからこそ、細い山道にも入って、火を消し、山火事を防ぐことが出来る唯一の消防車だ。ちいさくって、かっこいい。


ひらひらのスカートが好きな少女だった私は、「はたらくくるま」みたいなカテゴリにはさして関心を抱かなかったのだけれども、じぷただけは別だった。どこか自己投影していたのかもしれない。だって、幼稚園の頃から背が小さくて、背の順では一番前、家族の中でも、親戚の中でも末っ子……という「見渡す限り最小生物」の私にとって、じぷたの活躍は自分ごとのように嬉しかったのだ。


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中学生になって、身体はぐぐぐと平均身長まで成長したのだけれども、自分のマインドセットは12歳までに完成していたのかもしれない。その後の人生で愛着を抱くのも小さなものばかりだった。

第一希望で入学した大学も、学部生全員でおよそ800人という小規模さだったし、第一希望で就職した会社も、私は入った頃は両手で数えられるくらいの人しかいなかった。

そしてここ5年間はずっと、1人ぼっちで文章を書いている。


規模でいえば、本当に小さい。売上がいくら、年商がいくら、社員がいくら……という世界の中では、自分は本当にちっぽけな存在だ。

しかしそんな中、私の心の中ではいつも「じぷた」がいっちょ前にサイレンを鳴らして出動している。

「小さいからこそ、出来ることはなんだ?」





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小さいからこそ出来ることは、本当に、びっくりするほどある。


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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。