見出し画像

ネット廃人のデジタルデトックス



デジタルデトックス、という言葉にそれなりの嫌悪感があった。

というのも、私の仕事はSNSがあったからこそ成り立っているし、そこから沢山の勇気と活力をもらってやってきた。SNSは生きるための血液のようなもので、循環を止めれば私そのものが止まってしまう。それに今やらなきゃいけない眼の前の仕事はそこにあって、癒やしだとかご自愛のために手放す訳にもいかないし。


過去に一度、丸一日スマホを手放す「デジタルデトックス企画」に参加したこともあったのだけれども、その不便さは想像以上だった。

明日の気温は? と思っても調べられない。
待ち合わせをしようにも、手元に時計がない。
記事のネタになりそうな話を聞いても、気軽に録音やメモが出来ないし、写真も残せない。

それらを全て滞りなく行うには、テレビか新聞かで明日の天気をチェックして、常に腕時計を身につけ、紙とメモとカメラを携帯しておかなきゃいけない。デジタルデトックスという言葉には主に「SNSから距離を置く」ような印象を受けるけれども、スマホはもはやライフライン。それを手放したときには、癒やしや安らぎなんかよりも、不便のほうがうんと勝ってしまうのだ。


──


……という私が、ここ数日ささやかなスマホデトックスを決行している。というのも、あまりにも長く続く体調不良がさすがに度を越してしまい、これは根本的に生活習慣を見直さなければちょっとキツいぞ、というところまで来てしまったのだ。自律神経の問題なのか、睡眠が浅く、いつも悪夢にうなされて、月の半分以上は微熱を出している。noteの更新も横になりながらスマホでなんとか……という情けない状態ばかり。パソコンで腰を据えて書かなきゃならない仕事に、身体が追いつかずに辿り着けず、大型のお仕事はお断りするばかり、という……。

通院したり、服薬したりする面も進めつつ、なにより諸悪の根源はスマホではないのか? と思ってささやかなデトックスを進めてみることにした。といっても極端なことではなく、仕事中は、基本的にiPhoneを集中モードに設定して、プッシュ通知を受け取らないこと。そして就寝時はデスクでスマホを充電して、枕元には持ち込まないこと。枕元にあったスマホのUSB充電ケーブルごと抜いて、そこで充電出来ないようにもしておいた。

ここから先は

1,682字

新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。