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暮らしや営みの中で零れ落ちそうなことを掬い上げたり、心や脳に浮かんだ閃きを忘れないよう書き留めたりする、思考や思想の直売所のようなものです。
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2020年8月の記事一覧

タイトルや枠組みからはこぼれ落ちてしまうもの

なんて雑なんだろう! アメリカに移住して真っ先に感じたことは、この一言に尽きる。ドン!ガコン!と荒々しく運ばれていく荷物たち。堅い地下鉄の椅子からは、車輪の激しい振動が骨の髄まで響いてくる。スーパーに行けば、あまりにも量を詰め込まれ、下の方は腐ってしまった袋入りジャガイモの山がそびえ立っている。間違ってイエローキャブに乗ってしまうとカーチェイスまがいの運転が始まるもんだから、シートベルトは締めろと言われなくとも自ら率先して締めている。 ── 本日は8月31日。8月最後の

60番の紙ヤスリとして働いていた頃の話

2020年、6月。自宅での時間を持て余した世界中の多くの人たちと同じように、棚やら鏡やらをヤスリがけして、塗ったり磨いたりしていた。思い出の詰まった大阪の実家にある古い家具の埃をはらい、ダイソーで買ってきた60番のヤスリをかけると、たちまち表面は傷だらけになる。 愛着のあるものを摩擦音と共に傷つけていく、というのはそれなりに不快で、それでも90番、120番、240番と目を細かくしていくとまろやかになっていき、塗装してニスを塗れば見事生まれ変わる。最終的には、古びた家具たちは

お金で新たな文化は買えない

引っ越し作業に忙しい。 2018年の夏から2年間、私たちはブルックリンの西側にあるウィリアムズバーグという町の高層住宅に住んでいたのだけれども、そこはべらぼうに家賃が高い。東京でいえば代官山の雰囲気と豊洲の立地をかけ合わせたような場所で、街には話題のショップが次々とオープンしているような、イーストリバー沿いのイケイケのエリアである。イケイケのエリアにあるイケイケの高層ビルで、あらマンハッタンの夜景がキレイ♡ と脳が正常な判断を出来ていない状態で契約した。その後、身分不相応な