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「言葉にならない・・・」『劇場』行定勲監督、観客の前で熱い思いを語る@シネ・ピピア

 シネコンで4月に公開予定だったものの、コロナ禍で公開延期、さらには松竹が配給を降り、ミニシアターで7月17日から公開スタートした行定勲監督最新作『劇場』。劇作家を目指す主人公永田を山崎賢人が、永田の恋人沙希を松岡茉優が演じ、二人がまさに引っ張っていく作品は、全国の上映館で満席が続出!と言っても、現在は半席状態。しかもミニシアターなので、シネコンほど元々の席数が多くなく、つまり、非常にもったいない状態でもあるのだ。現在Amazonプライムでも配信中だが、そもそも劇場という場所が舞台でもある物語だけに、やはりリアルな劇場(映画館)で見たいはず。

 まさに第二波到来と叫ばれている中、ミニシアターの救世主的存在になっている映画『劇場』の行定勲監督自らが打診し、兵庫のシネ・ピピア、大阪のシネ・ヌーヴォに舞台挨拶するため足を運んでくださった。商業映画でシネコンでの舞台挨拶となると、それまでに宣伝から取材やテレビ出演などを入れられ、奥の控え室から登壇して、その後すぐに移動というスケジュールになるが、なにせ50席ほどのミニシアター。そもそも観客の顔が全て見える距離だ。上映前の舞台挨拶ながら、キャストなしで30分間舞台挨拶をしたいとリクエストされ、最初は劇場側も戸惑ったそうだが、やはりいざお話が始まると、それぐらい語りたいと思った行定監督の気持ちがよくわかる。それは、つまり、ミニシアターで『劇場』を上映し、わざわざコロナ禍でも足を運び、映画と向き合おうとしてくれるお客様と出会えることを心の底から喜んでいる。そして、この出会いがあるからこそ、また次の作品を作って届けたいと語ってくれた。

 上映前のトークなので、映画の詳細には触れられないものの、演出時の裏話を披露してくれた。松岡茉優は監督の演出をはねのけるぐらいの勢いで入ってくるが、山崎賢人はセリフは入っているものの、むしろ周りを見ている感じのスロースターターなのだとか。「普通は女優のいい顔を引き出そうとするけれど、今回は松岡さんと二人で、賢人のいい顔を引き出そうと何度もテイクを重ねました。松岡さんはテイクを重ねることは、チャンスを与えられるとポジティブに捉え、逆に力を抜いた演技ができるようになるんです」と現場の様子を振り返った。そんな二人の目線ひとつをぜひ大きなスクリーンで見て欲しいと力をこめた行定監督。シネ・ピピアのカフェもいつになく賑わい、かつての日々を取り戻したかのよう。大変な時ではあるけれど、でも、やはり映画館は作り手との出会いが、またその場を、そして映画館体験を豊かにしてくれる。

「劇場体験を『劇場』でしてほしい」

 楽しそうに語る行定監督に、今日もまた力をもらうコロナ禍の1日だった。トーク内容の詳細は以下に掲載中です。


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