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深く、潜る。

ある時期から、心の中に一つのイメージが繰り返し浮かぶようになった。
それは見慣れた地上の景色に背を向け、濃紺色の海に潜るところから始まる。
ぐんぐん深く、どんどん奥へ。
もうこれ以上深くは潜れないというところまできた時、目の前には複雑に絡み合った無数の木の根が広がる。
地上に生えている木の根が、こんな地中深くまで延びていることを知り私は息を飲む。


でもよくよく目をこらすと、それは木の根っこではなかった。
それは、地上にいる人間の無数の「意識」だった。
全ての人間の意識は、地球の深い深い場所で一つに繋がっていた。
さらにそこは海の終わりではなく、はるか先にも延々と根が延びている。
今の私にはまだたどり着けないけど、
そこでは人間も動物も自然も、全ての意識が一つに繋がっているのが感じられた。


なんということだろう。
頭は理解できないけれど、思考の限界を超えた意識は納得していた。
そう、この世界のあらゆるものは一つに繋がっているのだ。
夢か想像かわからないけれど、私は確かにその光景を見た。


それ以来、世界の見え方がぐわんと変わってしまった。
これまでどれだけ、自分と他人の違いにばかり目を向けていたのだろう。
これまでどれだけ、自分を特別な存在にすることに力を注いできたのだろう。


バラバラに見える親指も人差し指も「手」という一つの存在であるように、それぞれの人間の「意識」の根はひとつ。
親指が人差し指より偉いなんてことはないように、全ての人間の価値は平等だ。
全てが一つなのだとしたらあらゆるものは表裏一体に存在し、本当はこの世界には善も悪もないことを知る。


それならばもう、社会という外側の世界でなにを成すかはさほど重要じゃない。
自分だけが特別である必要なんてないし、私一人が幸せになればいいのではない。


これからすべきことは
心の静けさの中で、より自分の深みへと降りていくこと。
心のすみずみに光を注ぎ、ありのままの感情と丁寧に向き合うこと。


その気づきを与えてくれるのが、
自分の苦手な人、ネガティブな感情、どうにもならない出来事なのだと気づいたら、
もう、人生で何を恐れる必要があるのというのだろう。


気づいて、手放す。より深みへと、降りてゆく。
自分だけの「しんじつ」を見つけるために。
世界の色が、変わってゆく。

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Photo @ Hamamatsu, Shizuoka

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