森林消失の速度がかつてないほどに加速、IUCN報告書が警告
「私たちは何をすべきかをわかっている。それは、真に効果的な保護が必要だということだ。」
炭素と水の循環から、無数の種への食料や住み家の提供まで、樹木は地球上の生命にとって不可欠です。しかし、世界の樹木は、ますます絶滅の危機に瀕しているというショッキングな事実が明らかになりました。
コロンビアで開催された生物多様性条約条約締約国会議COP16において、IUCN(国際自然保護連合)は、レッドリスト(絶滅の危機に瀕する生物種のリスト)の更新を発表。その中の第1回世界の樹種評価(Global Tree Assessment)で、世界の樹種の3分の1以上が絶滅の危機に瀕していると評価されたのです。
樹木は現在、レッドリストに掲載されている16万6,000種のうち、4分の1以上を占めています。実際、絶滅危惧種である樹種の数は、絶滅危惧種とされる鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類の総数の2倍にもおよびます。
この調査結果は、より効果的な保全の緊急性を浮き彫りにすることになりました。科学者たちは、樹木の喪失が、森林に生存をゆだねる植物や菌類、動物たちの命を脅かし、生態系全体に連鎖的な影響を与える可能性があると警告しています。
「樹木は、私たち人間を含む、多様な種の生存を直接支えています」と、IUCN-USの理事であり、コンサベーション・インターナショナルの科学者、デイブ・ホールは話します。「健康的で、自然に多様な森林は、気候変動と生物多様性の損失、どちらの影響も緩和するために不可欠です。樹木は、炭素を貯蔵するだけでなく、自然災害や人為的な脅威からの回復力も高くするものです」
世界192カ国で、樹木が絶滅の危機に瀕しています。割合が最も高いのは島嶼部で、都市開発、農業、侵略的外来種の拡散による森林破壊に対して特に脆弱な状態です。気候変動は、海面上昇や嵐の激化を引き起こすため、森林にさらなる被害をもたらします。それが、こうした脅威をさらに加速させています。
最も多様な樹木が生息する南米では、3,356種が危険にさらされています。パーム油、畜牛、大豆などの生産のために、熱帯雨林の大部分が破壊されているのが現状です。
保護活動を行う人びとは、研究と現地調査を通じて、状況を好転させるために取り組んでいます。
「私たちは何をすべきか、分かっています。特に差し迫った脅威にさらされている樹木に対して、真に効果的な保護を実施することです。地域の人々やコミュニティとともに、人びとを重要な資源から切り離すことない方法で実践する必要があるのです」
“真に効果的な保護”とは何でしょうか? ホールは、人々の食料を確保しながら、劣化した農地内に在来樹を植えて森林を回復させることができる、という、未開拓なアイデアが巨大な可能性を秘めていることを示しました。
コンサベーション・インターナショナルによる最近の研究では、広範囲にわたり、比較的少数の樹木を植えることで、世界の農地は、すべての自動車の排出量を合わせた量と同等の炭素を貯留できる可能性があることがわかりました。この方法なら、森林と農場が共存し、食料生産を落とすことなく、気候変動にも取り組めることになります。
「より多くの炭素を貯蔵できるだけでなく、食料の安全保障を強化し、生物多様性を守り、気候変動が農地に与えている無数の圧力に対して、農業システムそのものの回復力も高めることができます」と、ホールは加えます。「これは、大きなプラスの違いをもたらすことができる革新的なアプローチの一種であり、私たちは、これを大規模に実装し始めることが不可欠です」
革新的手法について詳しくは、下記論文をご参照下さい。
Maximizing tree carbon in croplands and grazing lands while sustaining yields
https://cbmjournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13021-024-00268-y
投稿 :Vanessa Bauza ※原文はこちら
翻訳編集: CIジャパン
TOP画像:植生調査区でタグ付けされた木。マレーシア © Benjamin Drummond