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“サステナブルコーヒー”とはなんだろう?

こんにちは。突然ですが、みなさんはコーヒーが好きですか?

毎日コーヒーを飲んでいると、将来コーヒーが飲めなくなるかもしれない、と疑うことはないかもしれません。しかし、コーヒーについては、加速する気候変動の影響やコーヒー生産者の立場の不安定さ、環境へ与える影響などから、この先今のようにコーヒーが飲み続けられるかどうか、科学者から「コーヒーの2050年問題」として、警鐘が鳴らされています。
 
コーヒーの需要は世界的に高まっています。しかし、生産者の中にはコーヒー豆作りをやめてしまう人も少なくありません。
 
“コーヒーベルト”と呼ばれる、コーヒーの栽培に適した赤道を中心とした南北緯25度以内の地域は、コンサベーション・インターナショナルが重要な保全地域として選定している「生物多様性ホットスポット」と被ります。そのため、私たちは25年以上にわたり、コーヒーを持続可能な(サステナブルな)ものにするために各地で取り組んできました。今日は、“サステナブルコーヒー”とは何か?インタビューでご紹介します。


Q. まず、“サステナブルコーヒー”とは何でしょう?

一般的に定義されているのは、自然を守りながら、なおかつ、生産者の生活環境をより良くする方法で育てられるコーヒーのことです。

Q. では、サステナブルではないコーヒーは、自然を破壊するやり方で生産される、ということでしょうか?

はい、その可能性はあります。安価で売られているコーヒーは、効率性を重視した方法で栽培されます。コーヒーは、熱帯雨林の多くが含まれる世界の熱帯地域でしか育ちません。コーヒー生産者が収量をあげるために、栽培地を拡大したいとき、一番簡単な方法は辺りを囲む木々を切ることです。さらに、コーヒーは急斜面で育ちます。もし、適切な管理が施されなければ、コーヒー栽培は浸食や水路の沈降を引き起こす場合があります。また、コーヒーの加工には水を大量に使用するので、排水によって川を汚染することもあります。これらが同時に起こると、コーヒーは、すぐに持続不可能になってしまうのです。

コーヒー豆を持つ生産者 © Thomas Muller


Q. なるほど。生産者の暮らしはどう関係するのですか? 

世界で約1億2000万人いるコーヒー生産者のうち、一部の人々は完全にコーヒーに生計を頼っています。彼らの大半は、小規模農家や農園労働者です。他の産業と同じく、コーヒーの買い手は、できるだけコーヒーを安く買い、高く売りたいと考えています。買い手が有利な、不安定な市場のために、コーヒー生産者や農園労働者に損害が出ています。市場が低価格を維持していこうとすると、労働者を搾取することに繋がります。このようにコーヒーが低価格であることは、森林の伐採や有害な農薬の使用、そして児童労働などのように、安い労働力に頼ることを強いることになるのです。
すべて、経済的利益を生むための悪循環です。

Q. それはよくないですね。しかし、私はコーヒーが高くないほうがありがたいですが… 

私たちみんなそうですね。しかし、もしこれらの状況が改善されなければ、私たちは今後途方もなく高い値段をコーヒーに払わなければいけないことになるかもしれません。

Q. それはどういう意味でしょうか?

コーヒーは世界で最も取引されている熱帯産業商品です。中国やインドのように、伝統的にお茶に恵まれている場所での需要も増えています。こうした需要増加は、コーヒー生産を新たなエリアへの拡大へと押し進め、森林減少を導くかもしれません。森林が失われると、木々の中に留まっていた炭素を大気中に放出させます。持続可能ではないコーヒーの生産拡大は、気候変動に影響を及ぼしています。そして、ひるがえって、コーヒー生産は次々と気候変動の影響で栽培適地が減っていきます。さらにそのような森林が与える自然の恵みに生活を頼っている地元コミュニティも同じように生活に悩まされることになるでしょう。そうして生産を続けれられなくなってしまえば、希少なものとなり、価格も上がるでしょう。

コロンビアでは、気候変動の影響でコーヒー農家が苦しんでいる © NEIL PALMER PHOTOGRAPHY


Q. コーヒーは気候変動によって、どのような影響を受けるのでしょうか?

気候変動によって、気温と雨量のパターンが変わってしまうと、特定の気候を必要とする現在のコーヒー栽培適地は、まったく栽培に適さなくなるでしょう。この問題は、既にメキシコのコーヒー栽培地域などで、いくつかの農家が気候変動に影響されにくい(そして、市場によって価格変動の影響を受けにくい)、他の作物に切り替えるなどの問題を引き起こしています。こうした流れは、コーヒーの供給量を減らすだけでなく、長い目で見れば、コーヒー価格を上昇させることにつながります。将来のコーヒー不足も予測されます。

Q. それは、心配です。‘将来“とはどのくらい先の将来なのでしょうか?どんなことが起こると予想されるのでしょうか?

コーヒーの樹は、20年から30年間かけて成長するので、その間に、気候変動の影響によって生産者が農園の存続を断念せざるを得なくなるかもしれません。そうなれば、サプライチェーンが崩れ、長期的な経済的利益の損失にもつながるでしょう。

Q. コーヒー栽培を断念するしか、他に生産者の選択肢はないのでしょうか?

コーヒー生産者ができることには限りがあります。農園を気温が低く、よりコーヒー栽培に適した高い標高へ場所へ移すか、コーヒーではなく標高が低いところで育つカカオのような作物に切り替えることなどです。または、古木や、病気になったコーヒーの木を、病気に耐性のある品種に変えたり、良い農園管理について実践事例を元にしながら、害虫を駆除したり、高温や雨量の変化に耐えるなどしかありません。

Q. 生産者側の対応について誰か支援しているのでしょうか?

多くの企業や政府、市民団体などが既に何かサポートしていると聞けば、あなたは喜ぶでしょう。しかし、状況はさらなる行動が必要とされています。今、コンサベーション・インターナショナルの最も大きなプロジェクトの一つは「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」です。コーヒーを世界最初の“真に”持続可能な農産物とするために、生産者、貿易業者、焙煎業者そして小売業者などコーヒー業界関係者全体を巻き込み、サステナブルなコーヒーの需要を高めるための、大きなイニシアティブです。

Q. すごく野心的ですね。実際、どのように全体の持続可能性を達成させるのですか?

2015年12月に始まって以来、チャレンジは、コーヒー生産国であるルワンダとメキシコ、ペルーの政府を含む47か国、121におよぶ組織を含むまでに成長しました。サステナブルなコーヒーか、アンサステナブルなコーヒーを買うしかないという選択肢の範囲では、持続可能性へ大きな需要を作るのは非常に大変で協働が欠かせません。しかし、実を結んでいるものもあります。私たちが継続して努力していることの一つをご紹介しましょう。25年間以上にわたり、コンサベーション・インターナショナルはスターバックスと共に彼らのサプライチェーンにおいて、倫理的な調達へ向けて協働してきました。そして今日、彼らの調達する99%のコーヒーは、長期的に生産性を改善させることのできる、ガイドラインに則ったものになりました。コンサベーション・インターナショナルで、コーヒープロジェクトのリーダー、バンビ・セムロックは言いました。「スターバックスの倫理的調達の99%を達成し、ここまで至ることができた私たちは、コーヒー業界全体をどのように持続可能へ転換していくか、より大きな枠組みで考えました。それが”サステナブル・コーヒー・チャレンジ”の立ち上げへとつながったのです。」

チャレンジに参加している組織同士で、知見共有し、農業改善や、持続可能なコーヒーの枠組み作り、融資プログラムの提供、など新しいパートナーシップの構築などが進んでいます。

ペルーでCIのサポートを受けてコンサベーションコーヒーを生産できるようになった農家は組合を作り、海外へ輸出するまでに生産を拡大している© Cl / photo by Renato Ghilardi


Q. それは素晴らしいですね。コーヒーを愛する私たち消費者は何ができるでしょうか?

サステナブルなコーヒーについて、注意を払ってみてください。例えば、買う前にラベルを見て、倫理的な調達や取り組みがなされたコーヒーを積極的に購入しましょう。お気に入りのコーヒーショップがどのように持続可能性に関与しているか探したり、聞いてみてください。「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」のHPでは、詳しく活動の紹介をしています。「パートナー」一覧で、チャレンジの参加企業を見つけることができます。そのような企業の取り組みを応援してください。


TOP画像:コーヒーチェリー、コロンビア © Neil Palmer/CIAT

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