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竹内まりや「プラスティック・ラブ」の名カバー

 最近はVaporwaveやFuture Funkといったインターネットミュージックから80sシティポップを再評価する流れが大きくなり一大ブームとなっています。Vaporwave自体、入れ替わりの早い消費社会、大衆文化へのやや批判的な批評からはじまった音楽であり、その文脈的な面白さもあるのですが、それ以上にメロウで美しい音像が人気のもととなり、多くの人に愛され、様々な作品や派生ジャンルができています。ちなみに、Future Funkは、初期はVaporwaveの1ジャンルでディスコやハウスのような音楽性のものを指していたものの、今は日本の80年代の音楽をサンプリングやリエディットした音楽という意味合いで使われることが多いようです。

 今回はVaporwaveやFuture Funkで特によくサンプリングされ、現在のシティポップファンのアンセム的存在となっている楽曲、竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」を掘り下げていこうと思います。

 プラスティック・ラブは6枚目のアルバム「ヴァラエティ」に収録された楽曲。山下達郎さんがアレンジとプロデュースを担当し、自身でもカバーされています。都会的でポップな音像ながら洗練されたコードワークやブラスを始め様々な楽器を使用した分厚いアンサンブルが特徴です。日本ではニューミュージックの楽曲として捉えられるのが一般的ですが、海外ではAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック、これもほぼ日本でしか使われないらしいが大人向けのロック、ジャズやR&Bなどの影響を受け、ロックの激しい要素を排した柔らかく洗練されたサウンドが特徴)として捉えられることが多くあります。

 この楽曲自体も素晴らしく評価が高い作品ですが、リアレンジされた楽曲にも素晴らしいものが多々あります。ここからはタイトルの通り本題の名カバーを紹介していこうと思います。

Plastic Love(Night Tempo 100% Pure Remasterd)/Night Tempo

 Future Funkそしてシティポップブームに火を付けた作品がこちら、Night TempoさんのPlastic Love(Night Tempo 100% Pure Remasterd)です。Future Funk的なRemixでピッチを上げたりきつめのサイドチェーンをかけていますが、原盤のリエディットということもあってかなり原曲の要素を含んでいます。Artzie Musicというのは海外でよくある特定ジャンルの音楽紹介チャンネルで(無断転載の場合が多いのでストリーミングや購入をおすすめします)、Vaporwave流行の中心地となっていますが、このチャンネルをはじめ音楽とともに80年代アニメのワンシーンが使われた動画が拡散され、音楽とともに当時の日本の大衆文化が広く評価されるようになりました。

 Night Tempoさんは韓国のトラックメイカーですが、日本の80年代歌謡をよくアレンジされていて、斉藤由貴、Winkといったアーティストのリエディット、リマスターを制作されています。日本、アメリカでも積極的に活動されていて、彼の作品からシティ・ポップを知った人が世界中に数多くいます。当時の日本の音楽や製品をたくさん収集されていて、インスタライブでテープやレコードを流しながらシティポップの名曲を紹介していることもあります。シティポップのカバー、リアレンジ作品は数多ありますが、特段当時の音楽にリスペクトと愛情を持っている方です。

Plastic Love/tofubeats

 tofubeatsさんもPlastic Loveをカバーされています。こちらはかためのキックやデジタルサウンドで構成され現代的な音像ですが、テンポやそれぞれのフレーズはかなり原曲に近いアレンジになっています。しかしオートチューンが入ると一気にtofubeatsさんのイメージになりますね。

 tofubeatsさんの楽曲はとても現代的ですが、圧倒的な音圧や派手な音像ではなく、暖かみがありシンプルで洗練された音楽です。シティポップという言葉は80年代当時の都会的で洗練された音楽を主に意味しますが、まさにそのイメージと一致します。

PLASTIC LOVE METAL FUNK / Nicky Wuchinger

 こちらはNicky Wuchingerさんによる、なんとメタルカバーです。ハードなギターにボーカルですが、決して洗練された原曲の透明感、色気は損なわれておらず、絶妙にバランスの取れたアレンジです。あとはこう、いいギターが鳴っているとそれだけでかっこいいですね。ギターソロすごい。日本語全然違和感ない。

 Nicky Wuchingerさんはドイツの俳優の方で、演劇とともにずっとロックバンドやメタルバンドのシンガーとして活動されているそうです。YouTubeには他にも楽曲が数曲ありますが、本業はメタルのようですね。


 楽曲を再構築する手法で制作された作品は、楽曲やその時代への批評や発掘という側面も持ち合わせていますから、それぞれのカバーが原曲の解釈を広げる材料となったのではないでしょうか。また、紹介した方々はそれぞれ様々な活動をされていますから、興味を持った方のオリジナルを聴くとまた、新たな音楽を知るきっかけになると思います。あとはPlastic Love、サブスク解禁してくれー。

番外編:Plastic Love / 藤井風

 「何なんw」や「帰ろう」で有名な藤井風さんですが、以前からYouTubeで色々な楽曲をカバーしていて、Plastic Loveもあったので紹介しておきます。椎名林檎さんのカバーなんかも有名ですが、藤井さんのカバーはピアノも歌も上手い以上に表現力だったり、彼が歌うからこそ出る不思議な魅力がありますね。




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