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Kindle掲載作品サンプル

駐禁.comの初期投稿「架空会話」1~3などを収録したショートショート集、Kindleにて発売しました。
内容的には、いわゆるショートショートの寄せ集めで、SFあり、恋愛あり、お笑いありの内容です。
表紙は、以前伊藤伸平先生に書き下ろしたいただいた「駐禁.com」のイラストを流用。
今回、そこに収録しなかったショートショートを、サンプルとして掲載いたします。お気に召したら、kindle本のほうもお読みいただければ幸いです。

※ショートショート※
「デザートの気分」

 小柄なミサトは、滑稽なほど大きなベッドに上半身を起こした。下着を着けてないバストは無意識にベッドカバーで隠している。
「これじゃあ、あたしって」
 憤懣やるかたないという表情で、ふかふかの枕をボスッと叩く。
「デザートみたいなものじゃない」
 ベッドの横にしゃがみこんだ中年男は、黙って靴下をはいている。靴下以外の全身は、いつでも出勤できるように整っていた。
「まだいいじゃん。そんなにいそがなくても」
「そうはいかん」
 男はちらっと、昨晩ベッドを共にした少女のほうを見た。
 ナイター競馬で大儲けした男は浮かれ気分で夜の街に繰り出し、深夜でも営業しているブランドショップの前でミサトと知り合い、ショッピングに付き合い、食事に誘い、そしてホテルに入って、こうなった。
「大事なプレゼンが近いんだ。資料を読みこんでおかないと」
 たしか17歳だといっていた少女のほうをそれ以上見ることもなく、ネクタイを直した男は、どこからどう見ても、ありふれたサラリーマンだった。
「つまんない」
 両手をのばして派手にベッドに倒れこんだミサトは、叩いていた枕を今度は抱きしめた。
 昼間はツインテールにしている長い髪が、生きているようにベッドのうえに広がる。
「あたしってば、世界でいちばん不幸な少女だわ」
 財布の中身と欲しい服のバランスが、まるでとれていなかったミサトは、「どれが欲しいの」と声をかけてきたオジサンについていき、成り行きで関係を結んだだけなのだが、なぜか今は、悲劇のドラマのヒロインのような心境になっていた。
「じゃあ、出るから。おこづかい、テーブルに置いとく」
 それ以上一歩もミサトに近づくこともなく、ついに名前も名乗らなかったサラリーマンは、ふりかえらず部屋から出ていった。
 そそくさとした一連の男の動作は、普段の自身に似合わぬ一連の行動を軽く後悔している風にも見えた。
 5時間ほどまえまでは、あんなに鼻息が荒くワイルドだったのに、朝がきたら別人のようだった。まあ、男とはそういう生き物である。
「おいしいゴハン食べて、高いお酒飲んで、いい気持ちになって、仕上げの甘くて刺激的なデザート、ってことよね。だったら」
 ウケがいいと思って17歳と名乗った、実年齢21歳、大学生である童顔のミサトは、勢いよく体を起こすと、ベッドサイドのインターフォンをとり上げた。
「あたしだって、フルコースぐらい食べた経験あるんだから」
 コールに出たフロントに、おもむろに、オーダーする。
「もしもし。食後のコーヒーをお願い。ブラックで」
 そして、本作のヒロインは、これみよがしにため息をついた。誰も見ていないのに。
 


※Kindle掲載作品サンプル2はこちら※
ショートショート「ゲーム開発」

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「ショートストーリーズ: 駐禁.comの”薄い本”」
(テキスト工房Books) Kindle版

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※駐禁.com
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※伊藤伸平公式HP
https://www.hyperdolls.com/

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