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捨てたものと選んだもの

何かを変えることのできる人間がいるとすればその人はきっと…大事なものを捨てることができる人だ
 _『進撃の巨人』

「あ。もう外国行こう。」

私、本やマンガに影響されやすいんで(笑)
「大したスキルもなくてこれからどうなるのかなぁ。そろそろ結婚とかしなきゃなのかなぁ。」と悩む時期の20代後半。

進撃の巨人の名ゼリフに感化された私は平凡で安定した生活を捨てることにした。

中より上の企業に入って、仕事には慣れたし、繁忙期は死にそうに忙しいけど残業代で潤うし、忙しくない時期なら有給もとれるし、ボーナスだってもらえるし。

「いつか海外へ行きたい」という気持ちはずっとあった。でも「お金貯めて世界一周したいなぁ」「海外転職するならまず英会話しなきゃかなぁ」なんてグダグダしてて。ちょっとお金が貯まったら近場への週末海外旅行で使っちゃう。そんな生活。

ところが仕事でトラブル続きだったときのストレスからか、入社4年目にバセドウ病にかかった。発病当時こそ仕事に支障が出たけど、投薬治療を始めたら症状はすぐに改善された。薬を飲んでさえいれば日常生活は普通に送ることができる病気。でも。

「通院しなきゃいけないから海外には今まだ行けない」
「持病なんかあったら転職に不利だ」
それは新しいことに踏み出さないための言い訳だったかもしれない。

とりあえずスキルだけでも身につけておくかと、興味のあった日本語教師の勉強は始めたけど、働きながらの勉強はなかなか進まなかった。
病気の方も、最初に専門の病院じゃなく近所のクリニックに通たせいで治療が足りず、リバウンドして一時期悪化してしまった。当初は1年程度で治ると言われていたのに2年経っても治らなかった。そうしてるうちに急に怖くなった。

「このままずっと治らなくて、体力もなくなって、海外に行きたいっていう気持ちもなくなってしまうのでは…!」

そんなころに出会った『進撃の巨人』

何も捨てることができない人には、何も変えることができないだろう
悔いが残らない方を自分で選べ
どれだけ世界が恐ろしくても関係ない
どれだけ世界が残酷でも関係ない
戦え!

登場人物たちの熱いセリフ。そして主人公エレンの「自分はこの世に生まれてきたから、外の世界へ行きたい」と望む姿と、自分自身を重ね合わせた。

「もういい。どうせ悪い身体だもの。待っている間に動けなくなるくらいなら、命削ってでも好きなことやってから死にたい。」

そうして覚悟が決まって。7年近く勤めた会社を辞めて。日本語教師の勉強に専念したら、うちの学校で働かないかと声をかけてくれた人がいた。とりあえず話だけでもと社長に会って、海外に行きたいが通院中であることを伝えたところ、定期的に帰ってもかまわないからベトナムへ行ってみないかと言ってもらえた。そして日本語教師の資格取得とともに、ベトナムへ渡ることとなった。

もしずっと健康であったなら、もしかするとこの仕事をすることも、海外に出ることもなかったかもしれない。
死ぬほどのことじゃなくても病気になんてなりたくなかったし。健康で好きなことをするのが一番良くて、こんなことがなくても決心できてたら良かったのだろうけど。
でも私が今こうやっている背景には病気になったことと、『進撃の巨人』という作品の存在があったわけで。

***

初めて読んだときのワクワク感は、ちっぽけな存在が巨大で理不尽な力に立ち向かう姿にあった。今、巻を追うごとに戦う相手が展開していき、当時の敵とは全く別のモノと対峙している。
いよいよストーリーは決着に向かっているけど、もはや「戦うべき敵なんているのか?」という状況。

でも何故か、この作品にはそのときそのときの自分の葛藤とリンクすることがある。正直、今もいろいろな悩みの中で、ぐるぐると何かと戦ったり絶望したり希望を抱いたりしている日々だ。だからこの作品が終わるときまた自分の中で何かの答えが見つかるのではないか、と自分勝手な期待をしている。

作者が伝えたいことをはっきり私が受け取っているはずもないし、何かから意味を見いだすのはその人個人のことだけど。人生を変える作品というのはあるのだと。やはり私はこの『進撃の巨人』という作品に感謝をしているのです。

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