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『怪談に学ぶ脳神経内科』【企画誕生前夜】第伍夜(編集A)


怪談における患者(?)の経過図

ある学会にて。
取材も終えて帰る寸前、
ポスター会場でも覗こうかとフラッと立ち寄ると
偶然にも駒ヶ嶺先生のお名前があった。

僥倖に感謝しつつ先生にアタックした。
突然のアプローチに先生は若干戸惑いつつも
なにか想定の範囲内の受け止めをしてくれた。
もっとも、アタックしてくる想定は妖怪関係者だったそう。
しかも想定の期待MAXは荒俣 宏 先生なのだと。

座敷わらしの論文が大変面白かったことを伝え、
先生からは自身の詩集『系統樹に灯る』をいただき
日を改めて打ち合わせすることで解散となった。

しかしながら、私には一抹の不安があった。
座敷わらしとレビー小体型認知症が似ている! 興味深い!
だけでは社内の企画会議に通らないな…


2019年1月、東京駅のカフェ。
駒ヶ嶺先生との打ち合わせでは、
企画会議を通過するための作戦を練った。
先生から見せていただいた資料の中で
書きかけの論文のある図に心奪われた。

図

図.怪談における患者(?)の経過図
(注:この図は後に文献(1)の草稿へと洗練されていったとのこと)


すぐに「臨床カンファレンス!! ただし症例はお化け」が浮かんだ。
医学書編集経験がちょっぴりある,しがない私であったが
“こりゃおもしれぇや”
“売れ確!”

と確信した。


怪談における患者(?)の経過図は
本書籍の4章にみることができます。

図4-1


高揚を抑えながら3つの柱を考えた。
・脳神経内科を勉強するための新たなアプローチ法
・古典にみられる観察眼の鋭さ
・幻覚や幻聴への寛容な世界

そして、注意点も加えた。
・(できるだけ)誰も傷つけない

“〇〇(疾患名)と△△(古典などに出てくる何か)は似ている”
おそらく、これはほんとうにいろいろ言えると思う。
それが安易な決めつけとならないように
疾患に苦しむ方を傷つけることにならないように、
むしろ応援となるように提示されるならば成立すると思っていたが
駒ヶ嶺先生にはそれは大前提であった。
言葉の人である駒ヶ嶺先生は
活字の恐ろしさを誰よりもわかっていた。


企画会議を無事通過した怪談本は
いよいよ執筆フェーズへと入っていく。

(つづく)

参考文献
(1)駒ヶ嶺朋子,国分則人,平田幸一.抗NMDA受容体脳炎から読み解く『死霊解脱物語聞書』−江戸前期史料への病跡学的分析の試み.脳神経内科 91:504-509, 2019.

書籍タイトル
『怪談に学ぶ脳神経内科』

予約ページはこちらから
http://chugaiigaku.jp/item/detail.php?id=3129
https://ebookstore.m2plus.com/mproducts/9784498328549.html?ad=prod_66

著者略歴
駒ヶ嶺朋子(こまがみね ともこ)
1977 年生.2000 年早稲田大学第一文学部卒.同年,第38 回現代詩手帖賞受賞(駒ヶ嶺朋乎名).2006 年獨協医科大学医学部卒.国立病院機構東京医療センターで初期臨床研修後,獨協医科大学内科学(神経)入局.脳神経内科・総合内科専門医.2013 年獨協医科大学大学院卒.医学博士.詩集に『背丈ほどあるワレモコウ』(2006 年),『系統樹に灯る』(2016 年)(ともに思潮社)がある.

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