抗菌薬相互作用整理BOX(8)
抗菌薬相互作用整理BOX(8)
[第8回]バルプロ酸の血中濃度が下がります!
~バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬~
山田和範 やまだ かずのり
中村記念南病院薬剤部係長
はじめに
てんかんは神経疾患のなかで最も頻度が高いとされ,1,000人に5~10人の割合でみられる疾患です.バルプロ酸(VPA)は全般性強直間代発作,欠伸発作,ミオクロニー発作などの全般発作の第一選択薬として推奨されており,部分発作では第二選択薬として推奨されています【1】.最近では,相互作用の少ない新規抗てんかん薬も上市され,多剤服用患者に対しても使いやすい状況になってきました.
しかし,今もなおVPAは抗てんかん薬のなかでも処方頻度が高い薬剤の1つです.
感染症診療に目を向けると,耐性菌の検出増加に伴い,カルバペネム系抗菌薬をエンピリックに使用せざるを得ないケースも増えてきています.
今回は,VPAとカルバペネム系抗菌薬の相互作用について取り上げてみたいと思います.
相互作用のメカニズム
バルプロ酸およびカルバペネム系抗菌薬のインタビューフォームをみると,「カルバペネム系抗生物質の投与中にVPAの血中濃度が低下し,痙攣を誘発した症例報告に基づき併用を禁忌とした」とさらっと書いてあります.メカニズムまでの記載はみられません.
調べてみるといくつかの報告がみられます.報告されている主なメカニズムをまとめると[図1]のようになります.
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