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もう誰もワニの話をしていない(4/23〜27)

思考が千々に途切れるせわしないざわめきが続くので、毎日続けられそうな軽めの日記をつけようと思う。極細ポッキーのようなサクサク書いて読めるものを。


2020年4月23日(木)


夕方6時過ぎまで寝る。彼が帰った日はいつも寝過ぎてしまう。自分のリズムを取り戻すのに時間がかかる。


昨日は彼のきらいなところ500個中200個くらい表出していてイライラした。でも、翌朝、出勤前に「起きたくない…」とゴネて抱きついてくる姿がかわいいいのですべてを許す。


数字が苦手と言っていた友人の日記に曜日しか記入されていなことに気がつく。月火水木金土日月火水木…ぐるぐるぐるぐる …

日付を入れたら死に向かう直線的な時間が見えるだろうか。わたしたちは何日後に死ぬのかな。ワニの話をしているのはもうわたしと堀静香さんだけになってしまった。


村上春樹の『アンダーグラウンド』を読み返す。夜10時に寝る。


2020年4月24日(金)

朝6時に起きてシャワーを浴びる。アルバイト先の予備校のオンライン授業の撮影のため、1ヶ月ぶりに体毛を剃る。毛がもさもさと風呂の床に落ちる。自分の顔を見ながら一人の部屋でひょうきんに喋るのが嫌すぎてもう何日も撮影を延期している。


昨夜「明日こそは撮る。」と50回唱えて寝た。先輩や同僚の授業の動画をふーんと眺めて1日が終わってしまったからだ。着替えと化粧が億劫だった。今朝はシャワーからあがってコンタクトを入れ、一軍の服を着てメイクをした。化粧をするのが久々すぎてアイラインを引く手が震えた。 
たった2時間分の動画を撮るだけなのに、気がついたら日が暮れていてショックを受ける。自分の顔を見つめながら大きな声でひとり言を言って1日が終わってしまうなんて。


酔っ払いながら岡崎京子の『pink』を読む。


2020年4月25日(土)


寝坊して10時に起きた。


今日も着替えて化粧をする。バイト先の予備校の先輩の演習形式の授業にチューターとして参加するためだ。zoomで仕事をしていると極狭の我が家が公のスペースに変わり、zoomを切った瞬間にまたわたしだけのためのおダラけ空間に戻ってくるから面白い。座椅子の座り心地も違う気がする。結局外出したのと同じような疲労感がある。わたしは移動時間に疲れるのではなく、公の時間に疲れているのだなと思う。


マツコ・デラックスと有吉の『かりそめ天国』の録画を観る。


2020年4月26日(日)

2日ぶりに(オンライン上の)外出がないので気が楽だ。今日は「すべきこと」は一切やらず、したいことだけする日と決めた。


ミートソースを煮込みながら、たまっていた家事を片付ける。乾燥機を新しくしたら、タオルがふわふわになって出てくるようになった。柔軟剤のいい香りがする。


少しだけ仕事もしてしまった。予備校講師の仕事は好きだ。生徒は毎年かわいくて、キラキラしていて、でもちょっと憂鬱で愛おしい。


寝る前に友人たちとzoomをつないで「もくもく会」をする。それぞれただもくもくと作業をしていて、たまに雑談、そしてまた作業。わたしはよく知らないが、平和な実家のダイニングってこんなかんじなんだろうなというのんびりとした時間が流れる。オンライン上でこれが成立するのが不思議だ。このときはzoomにつないでもわたしの部屋は公のスペースにはならず、私の部屋のままだった。


岡崎京子の『pink』の続きを読む。岡崎作品は世界観の引力が強くて頭がくらくらする。身持ちを崩さないように気をつけなければ。


2020年4月27日(月)

昨日は心ゆくまで休んだので、今日は"やるべきこと"に手をつける。"やるべきこと"に取り組んでいるときは、自分が透明になっていくような、解放されるような、不思議な感覚があって嫌いではない。紫原明子さんが日記に「労働によって自己が疏外されることの気楽さ」について書いていて、なるほどなぁと思う。


スーパーへ買い物に行く。随分と混雑していた。重たいカゴをぶら下げて長い列に並んでいると隣の列でおじさんがおばさんに「もっと前につめないと」と横柄な声を出している。おばさんはあまり動じることなく「でも、ほら、あんまり近づくとよくないから」と返す。おじさんは「それはわかってるけど…gdt()(t in fyi &¥#」とモゴモゴする。殺伐とした空気に少し疲労感が増す。


心躍るうれしい提案があって、反射的に安請け合いし、冷静になって青ざめる。不安で狭い部屋をぐるぐると歩き回る。友人に慰めてもらってぬくい気持ちになり少し泣いた。


雨宮まみの『女子をこじらせて』を読む。雨宮まみも岡崎京子と並んで"危険な"作家さんなので、注意深く慎重に読む。

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