銀の使い方いろいろ・次の一手編

前の記事から漏れた話がある。検討したことを全部書いていたらきりがないから、あれこれカットしているのだ。

とはいえ、お蔵入りさせるのは惜しい気もするし次の一手問題として出題したらいいと思った。前回の記事の補足にもなる。

こう書くと良い思いつきのようだが、次の一手で記事を書くというアイディアはこの記事を読んで思いついたものだ。

楽しく読めたので印象に残っていたのだろう。真似させてもらいます。ちなみに、奇しくも筆者が用意した問題も3題だ。

なお、この記事は問題と解答のあいだに補足のコーナーが挟まっているという謎構成なので、純粋に問題を解こうという人は目次を使って途中を読み飛ばしてほしい。

第一問

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逆棒銀の仕掛け周辺の局面。前の記事では、先手は△7三桂に▲8五歩と打ってなにかをを受けていた。では、受けずに▲5八金左などの手を指した場合は、後手にどんな手が生じるだろうか?

以下はまず昨日の記事の補足を読んでもらって、良い感じにスクロールしたところで答えを発表する。

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△7三桂と跳ねた局面で、そもそも後手にはどんな狙いがあるか。たとえば、先手がパスしたとすると後手は△4四角と打つ。▲7七角と合わせるくらいだが、そこでは後手良しに導く複数の手段があるようだ。一例は△3五角

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▲5八金左△8五歩で銀を殺してヨシ。これが一番スマートだと思う。先手ががんばれば銀桂交換くらいには持ち込めるようだが、それではつらい。

というわけで、パスはまずかった。その代わりの▲5八金左は、将来の6七の空間をケアして△4四角に▲6六角を用意した意味。ここで角を合わせれば銀が死なない。

補足を読んでもらったところで、そろそろ答えを発表する。

第一問解答

正解は△8七歩

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逃げると銀が取られるので先手は▲同飛の一手。そこで△7八角と近づけて角を打つのがポイントだ。▲8八飛△6九角成ともたれておく。筆者、この手筋自体はてんてーの指しこな本で見た覚えがある。

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△7九馬▲8七飛△7八馬とにじり寄る狙いが受けづらい。▲8五銀として飛車の縦の空間を広くするのが受けの形だと思うが、残念ながら8五には桂が利いている。というわけで後手良しなので、△8七歩からの手順が正解だった。

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なお、△7三桂が入っていないこのような局面では、▲8五銀先手良しになる。△7九馬には▲8六飛でよい。形の違いというやつである。

第二問

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後手が7筋を逆襲し、次に棒銀で攻めかかろうとしている局面。記事の文中で△4二金右に軽く触れたが、そこで▲6三角と打たれた場合はどう受けるのがいいだろうか? 7四に成らせてはいけないが、よく見るとこの角は7四しか行く場所がない。

まずは補足。

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△7五銀▲3七桂と跳ねたところで、ここから△4二金右▲6三角で問題図になる。後手が金寄りで力を溜めるのは、すぐに△8六歩と仕掛けるのが危険だから。▲8六同歩△同銀▲8三歩と打たれる手が痛いのだ。

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5二の金が浮き駒で、後手の駒たちはいかにも技が掛かりそうな配置になってしまう。△8三同飛の時に▲7四角や▲6一角が厳しい。両取りを受ける△8二飛に再度▲8三歩

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以下は△7二飛(角取り)▲5二角成△同飛▲8六飛で二枚替えになるくらい。先手良し、俗に言う振り飛車大優勢というやつであろう。

というわけで、後手は一回金を寄るのだ。

そろそろ答えを発表する。

第二問解答

正解は△6五角

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次に△5二金で角を殺す狙いで、この角が助からないようだ。先手は攻めの形が作れていないので、角金交換の駒損が響いてくる前に攻め切る展開にはできなさそうだ。

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一例はこんな感じ。暴れる手段はあるものの、先手が無理をしている感は否めない。

ちなみに、6五からではなく△9二角と打つのも同じように思えるが、これは不正解▲7二歩が巧みな手で角の生還を許すことになる。

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△5二金を防がれた時に角を追いきれない。角を取りに行くなら△8三飛だが、▲7四角成が生じてしまい失敗である。6五から角を打つのは、この時に飛車と角がかぶらないようにする意味だった。

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こちらは正解図から▲7二歩△8三飛と進んだ局面。これなら角が死んでいる。というわけで、先手の角が助からないので△6五角が正解だった。

第三問

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6七銀型から先手が待機策を取り超持久戦になった局面。先手が一人千日手をしているあいだに、後手はやりたい放題組み替えて、風車+地下鉄飛車になっている。後手が9筋を突き捨てて△9一飛と回り▲9九飛と受けさせたところ。先手は数の受けができているように見えるが、次の一手で後手の攻めが成功する。

補足。

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先手が腰掛け銀にせず、両者が中央で位を保ち合う展開になると、お互い打開に苦労することになる。千日手でもよいのだが、今回は積極策の検討をした。

△8一飛と下段飛車にして右辺は雁木に組んである(3三の銀を△4二銀~△4三銀と繰り替えた)。桂を跳ねられる囲いを選択し、地下鉄を開通させたのだ。ここからは△3一玉から玉の引っ越しを始める。

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風車が完成した。玉を遠ざけたことで△2一飛~△2五歩~△2六歩の打開が見えてきた。なお、先手は(一応振り飛車の体裁を保って)木村美濃で待機しているが、風車に引っ越すのが最善の待ち方かもしれない。そこまでされると後手からの打開も厳しく千日手になるもようである。

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2筋の歩交換をする。一歩持つと攻め筋が広がる。こうなると1筋、2筋からの攻めが止まらない格好だ。この後は、先手が遅ればせながら風車に向かい、後手が9筋から仕掛ける―――という感じで問題図になる。

そろそろ答えを。

第三問解答

正解は△9七歩

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▲同香と取る一手だが、△8八角▲9八飛△7九角成で攻めが続きそうだ。先手は待機策を取っていただけに守りの網が破れるときつい。

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後手陣に隙がないだけに、特に先手からできることもない。これにて後手良しでいいと思う。というわけで、△9七歩以下の手順が正解だった。

補足のつもりで書き始めた記事だったが、本編より長くじっくりした記事になった。あっちは駆け足だったのに……。

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