14_サッカースタジアムの検討状況_02

【広島スタジアム問題】資料を読まない人のために「四者合意」と基町説明会の資料をまとめたので読んで下さい

先日、スタジアム候補地がついに決定するという報道がありましたので、誰しもが疑問を持っていそうな点についてQ&A方式で簡単にまとめました。沢山の方に見て貰えたようで、多少なりとも参考になっていれば嬉しいです。

さて、実際に2月6日に四者が合意したという発表がありましたが、その中身をチェックすると候補地の決定だけでなく整備スケジュールまで踏み込んでいることが分かりました。となると上記投稿だけでは不十分だなーと感じましたので、四者合意で決まったことを中心ご紹介したいと思います。

なお、本投稿は広島市・広島県のHPで公開された情報をできる限り分かりやすくかみ砕いて紹介する趣旨ですから、詳しくは原文をどうぞ。

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①四者合意の内容を確認します(ここだけ読めばOK)

今回発表された内容で最重要なのがこの「四者合意」。ここ以外は、どういう理屈・思考でこの合意に至ったのかを説明するための資料ですので、究極この合意さえ抑えておけばスタジアム問題の現在地を把握できるはずです

合意内容はA4一枚かつ10項目だけなので個別に見ていきましょう。

1 サッカースタジアムの必要性
行政もサンフレッチェも建てなきゃいけないことを再確認。「今更何を言ってるんだ」と思われるかもしれませんが、大事なことです。しつこく確認しておかないと平気でちゃぶ台返しされる。こんな感じで。
2 サッカースタジアム建設の基本的姿勢
みんなで協力しようねという話。当たり前のこと。
3 サッカースタジアムの建設場所
中央公園広場が建設場所として最適という結論です。
4 事業主体
建設及び管理運営の主体は広島市
になりました。後述しますが、DBO方式やPFI方式を考えてそうなので、スタジアム所有者は広島市だよ!という話?
5 建設資金の確保
交付金、寄附金で資金確保しつつ、不足分は広島県・市・商議所が中心となって資金調達するということでしょう。「国の交付金を最大限に活用」とあるのは、おそらく社会資本整備総合交付金のことではないかと思います。
6 規模
3万人規模という主張は変わらず。
7 事業手法
「民間のアイデアやノウハウを活用した事業手法」とあるので、DBO方式やPFI方式を考えてそう。その辺の説明は沖縄県の資料の解説が大変分かりやすい(Jリーグ規格スタジアム整備基本計画報告書のP156)。ただ、沖縄県によるとDBO方式・PFI方式最高!というわけでもないそうです。

Jリーグ規格スタジアム整備基本計画報告書P156
一般的な公共事業では、設計・施工・運営を一体的に発注することにより(DBO、PFI等)、施設の設計段階から運営者の視点を反映することでより使い勝手の良い施設・設備とすることが可能である。一方で、本件では特に、運営者よりむしろ、「スタジアム標準」等を定める日本サッカー協会が設計に深く関与し、提案書の中身も事前に精査することとなるために、他の一般的な公共施設ほどには、上記の効率化効果が得られるとは限らない点に留意が必要である。
8 整備スケジュール(予定)
2019年度中に基本計画を策定し、発注準備と超忙しい。すでにある程度のたたき台ができているのでしょう。完成は2023年度を目標
9 周辺住民への配慮
当たり前のことなので割愛。
10 基本方針の策定等
当たり前のことなので(ry

~四者合意の内容は以上!ここから先は細かい話~

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②どうして中央公園広場が候補地となったのか

昨年9月~10月に中央公園広場周辺の基町基町地区で個別説明会を6回開催しました。その際に説明された内容もこの度公開されました。全3枚。

1枚目のスライドはなぜ中央公園広場が最終候補地になったのかという説明。話の流れはこちらで把握できると思いますが、このスライドは概要版なので、細かい話は⑤と⑥の方で詳説します。

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③中央公園広場におけるスタジアム配置と動線

続いて2枚目のスライドはこちら。

こちらも以前解説したように広島城(スライド右側)を動線とすることで北側の住宅エリアに迷惑はかけないよと説明されています。特に変更なし。

ただ歩道橋を新設とされていますが、中途半端なものを作るのではなくペデストリアンデッキを掛けるなどして南・東方面の動線を強くすることで北への影響を減らす努力をして欲しいと思います。広島駅はこんな感じ。

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④スタジアムにマイカーでは行けません

3枚目のスライド。

これも以前の説明会とほぼ同じ話。観客用の駐車場は作らないよ!という姿勢を強く出しています。駐車場を作らないのはいいとして、周辺の公営・民営駐車場への影響は小さなものではないでしょうし、どのように対策を打つか相当真剣に検討しないといけません。割とマジで。

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⑤現在地改修がダメな理由

1枚目のスライドの詳細版がこちら。中央公園広場が候補地となった経緯、旧広島市民球場跡地がダメな理由、現在地改修がダメな理由、基町地区への生活環境に対する影響の4点が詳細に説明されています。

中央公園広場が候補地となった経緯や旧広島市民球場跡地がダメな理由は先日説明した内容が書かれています。ただ、現在地改修の問題点には触れていなかったので、その理由を簡単に見ていきましょう。

広島広域公園陸上競技場では、昨年からトイレの改修や座席の個席化が進められていますが、屋根は相変わらずあってないような状態。そして屋根掛けにはスタジアム新設並みのコストがかかることがネックとされています。

また、「アストラムラインの延伸を考慮しても短時間で観客を運ぶことが難しい状況は変わらない」という当たり前のことを書いてくれました。当たり前のことですが、ここをしっかりしておかないとちゃぶ台返しが(ry

以上のことから、お金がかかってもアクセス問題は放置されたままなので、まちづくりへの効果が期待できないというのが現在地改修ではダメな理由となりました。まぁ妥当なのではないでしょうか。

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⑥候補地の比較検討結果(行政目線)

上記のような結論となった根拠がこちらの候補地比較表

全部見ていくのは大変なので最後の結論部分を見ておきましょう。

≪総合評価≫
○ サッカースタジアムによる都市活性化に関しては、それぞれの候補地の特性を生かすことにより、どの候補地においても一定の効果が得られると評価できる。その効果をより一層高めていくには、スタジアムの多機能化・複合開発などによる年間を通じた集客の促進が不可欠であり、滞留場所の確保といった利用者の安全面も重要になる。

○ この点において、旧広島市民球場跡地は、他の候補地に比べて、敷地の制約から多機能化・複合開発が制限され、利用者の滞留場所も十分確保できない。さらに、経費面においても、他の候補地に比べて建設事業費が高いといった課題があることから、3つの候補地の中で優位性は低い。 

このように説明されており、行政の手続き上は旧広島市民球場跡地が3候補地の中で最も劣る候補地であると位置付けられています。

多機能化/複合施設の検討は不十分であり、滞留空間の確保に関する工夫は特にされておらず(されていてたとしても行政文書として作成されていない)、建設費が高いとされている理由も3万人という謎のキャパ設定、配置の工夫などを一切しないまま検討しているからなので、筋の通らない説明だと憤慨する方も相当数いらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、「そのりくつはおかしい」となるのは自然なことだとしても、行政はそういう理屈で動いているという認識は持っておくべきだと思います。

≪総合評価≫
○ 旧広島市民球場跡地を除く2つの候補地を比較すると、多機能化・複合開発や利用者の滞留場所の確保の面では同等と評価できるが、アクセス性の面で、既存の交通体系により試合時の大量の観客の輸送に対応できる中央公園広場が優位であり、経費の面では、建設事業費は同等であるものの、年間管理運営収支は中央公園広場が若干優位である。

○ こうした評価を踏まえ、周辺住民の生活環境の確保のための対策を講ずることを前提として総合的に判断し、スタジアム建設場所としては「中央公園広場」が最も適している。

そして中央公園広場と広島みなと公園の比較ではアクセス性と年間収支の観点から中央公園広場が優位であると結論付けられました。

たまに「広島みなと公園がダメなのだから旧広島市民球場跡地が候補地となるべきだ」と解釈されている方を見かけますが、行政はそんなことを一言も言っていませんし、むしろ広島みなと公園の方が優位だという結論を堅持しているところです。その認識は正しく持っておくべきでしょう(その理屈に納得しろと言っているわけではありません)。

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ここまでこの度公開された資料をかいつまんで解説しました。趣旨から外れるので取り上げていませんが、上記の他に「将来を見据えた基町地区のまちづくりビジョン」なども公開されていますので、興味のある方はどうぞ。

今回の四者合意を受けて、スタジアム建設自体は前に進んでいくものと思われます。その際に、行政側の理屈を通すために設定した3万人規模であったり、交通アクセスの問題などはおざなりな議論で放置されたままです。こういった将来に禍根を残しかねない問題点に対して声を上げていくことが重要なのではないかと思います。

また、どういったスタジアムが望ましいのかと言うことをクラブや行政に任せっきりになるのではなく、各々がたくましく妄想していくのが大事なことだとも思います。スタジアムが建つまでもう少しだけ頑張りましょう。

以上。

サポートして頂いた金額は、広島のスタジアム建設募金に全額寄付する予定です。