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Jリーグのエンブレムに関するあれやこれやについて思ったこと

①なんで燃えたのか

色々と盛り上がっているので書きました。

なぜ燃えたのかというと、冒頭のツイートで「水○」と伏せ字にしたこと(煽りっぽい)、家紋という地域(歴史・文化)に関わるポイントに不用意に触れたこと、対象が水戸だけだったこと、ツイート主が千葉サポだったこと、当該ツイート以外が読まれていないこと(文脈無視)、などなど…。

指摘している内容に理解できる部分もありますが(特に属人的グッズ開発女性向けデザインのグッズを増やすべきという指摘は重要)、内容が内容だけに引っかかる人も多いでしょう。

今回突然話題になった水戸ちゃんのエンブレムとロゴはこんな感じ。

クラブエンブレムは水戸藩の家紋「三つ葉葵」と龍がモチーフになっています。龍は2代目水戸藩主ご存知「水戸黄門」徳川光圀公の字「子龍」に由来しています。

ツイートで指摘されていましたが、水戸ちゃんのエンブレムは水戸藩の家紋をモチーフにしています。家紋を囲ってる龍の由来も水戸光圀公だったというのは初めて知りました。だからホーリーくんもドラゴンだったのか…。

ちなみに我らがサンフレッチェ広島は三本の矢や6本の川という広島をモチーフにしたデザインで、エンブレムに色々な意味合いを持たせています。

このように、Jクラブのエンブレムはホームタウンを示す要素を取り入れていることが多く、エンブレムに対して言及するということはその地域に対して言及するのとイコールになりかねないのです。なのでもうちょっと配慮(水戸以外にも言及するとか)した方が良かったと思います。

ただ、「エンブレムを馬鹿にするのはその地域を馬鹿にすることと同じだ」と言われても由来を知らない人にとっては「どうせえっちゅうねん」となりますから、(今回のケースとは違いますが)もう少し落ち着いて対応できるようになりたいもの(奈良クラブの件のように)。

正直、こういう発言をした人に対してSNSで口撃することは嫌いです。水戸ちゃん広報さんのようにスマートに切り返せれば最高ですが、せめて建設的な視点に立って意見できるようになりたいですね。というわけで本題。

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②エンブレムとグッズ販売について

水戸ちゃんのエンブレムどうこうは個人の感覚次第なので脇に置いておいて、こちらのツイートには深く頷きました。

属人的なグッズ開発はよろしくないという指摘は非常にもっともなものです。グッズ開発に限らずサッカーの中身も経営もなぜか属人的すぎるのがJリーグ界隈(日本社会にまで置き換えられるかな?)。経営の安定を考えれば誰でもできる状態に持って行くべきです。

そうは言うものの簡単な話ではありません。前述したように、クラブのエンブレムはホームタウン要素を取り込んでいることが非常に多い。そこを切り売りするというのは相応のリスクがあると認識するべきでしょう。

また、使いやすいデザインというのは得てして似通ったデザインになりがちです。プロ野球のようにチーム数が少なければいいですが、J3まででも54クラブ(U-23除く)もあるわけで、独自性というのも重要な指標となります。

むしろオシャレかどうかよりも、パッと見てどこのエンブレムか認知できることの方が重要だと考える向きがあってもおかしくないはずです。そのクラブのアイコンと認識されなければただのアパレルグッズとなり、一般商品との競争を強いられますし。

③結局はターゲッティングの問題

つまり、どのような人にそのグッズを売りたいと思っているのかという問題に収斂するのです。それがサッカーを見たことのない若い女性なのであればエンブレムを若い子に受けるデザインにするのも一つの手でしょう。

一方で子どもにも分かるデザインにするのであれば、札幌、鹿島、熊本のように直観的なデザインの方がウケるかもしれません。地元の方にはそれこそ水戸のように家紋デザインの方が愛着が湧くかもしれません。

当初のツイートは、若い女性のためのグッズを作るためにもファッショナブルなエンブレムであったほうがいいという趣旨なので間違ってはいません。ただ、水戸ホーリーホックがどういう経営戦略をしているかを踏まえずにディスるのはやはりミスでしょうね。

水戸ちゃんがホームタウンにおいて認知度を高めようとしている段階であればどこにでもあるスタイリッシュなデザインよりも市民県民に引っかかるようなデザインの方が正解なはずです。

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④エンブレムの変更可否

少し話はずれますがエンブレムって変えていいものなのかという話。

結論から言いますと、そもそも変えてるクラブは結構あるので変更自体は別にいいんじゃないかなと思っています(エンブレムどころかクラブカラーやクラブ名も)。海外でもエンブレム変更はあるようですし。

エンブレム変更の代表例は先日のファジアーノ岡山ですが、我らがサンフレッチェ広島ヴィッセル神戸もエンブレム変更をしています(加えてヴィッセル神戸はクラブカラーも白黒から臙脂色に変更しています)。

また、クラブ名については現在進行形でアスルクラロ沼津が議論しているほか、モンテディオ山形が月山山形に改称するという話題もありました。北海道コンサドーレ札幌ザスパクサツ群馬は活動エリア拡大に伴って実際に改称しています。

(追記)ジェフユナイテッド千葉も名称変更してるじゃないかという指摘を受けましたが全くその通りでした。お詫びして追記いたします。なお、京都も名称変更していますのでそれも書き加えておきます。

変更した理由についてはヴィッセル神戸のように経営陣交代が理由のケースや、札幌・群馬のようにホームタウンとの関係性から変更を迫られたケースも存在します。

ちなみにサンフレッチェ広島は当初のエンブレムでは広島らしさを表現できていないという理由からエンブレムを変更したそうです。

■変更動機
これまでのエンブレムでは、サンフレッチェ広島の「クラブ理念」や「クラブの設立目的」や「広島らしさ」といった面において、うまく表現できていないという疑問がありました。そこで、クラブエンブレムを「クラブ理念」や「クラブの設立目的」に沿ったものに変更することとなりました。また、トップを目指す姿勢をエンブレムを変更することで示したい、クラブの決意を新エンブレムで表したいというのも変更の動機であります。

このように、エンブレム等の変更理由には色々とあるようです。

長年使用していて愛着がある等の理由から変えて欲しくないという層は一定数いるでしょうし、新規顧客を取り込みたいと言うためだけに旧来のファンを切り捨てる必要はないでしょう。デザインを変更するにしても「グッズの売上が悪いから」というような安直な理由ではなく、「それなら変更しても仕方ないね」といわれるような説得力が必要な気はします。

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⑤卵が先か鶏が先か

というあたりが個人的な感想でした。燃え上がりはしましたが、当該ツイート以外を拝見すると非常に納得感のある指摘が多いので、一晩寝て冷静になった人は是非参考にさせて貰った方がいいと思います(ダイナミックプライスの話とかもすごく面白そう)。

最後に、グッズ販売というのは結局のところ売れるかどうかが一番重要なポイントです。ここで指摘されているように、レディースユニを販売していない理由は売れるという自信がないからなんでしょう。

この話と関連するところで、GKユニフォームの販売についてサンフレッチェ広島のサポカンで説明されていました。

GKユニフォームの販売についてですが、すごくクリアな話です。作るためには最小ロット数(個数)が必要なのですが、過去の実績を見ると数十枚しか売れていません。数十枚だとナイキジャパンは作れないんです。何百という方々に確実に買っていただけて、それが毎年続くようであれば、販売する可能性は高いですが、サンフレッチェ広島として発注したにもかかわらず、売れたのは数パーセント、ということがありました。毎年、それが続くと余剰在庫になります。それで結果的にGKユニフォームの販売はやめましょう、ということになりました。これが事実です。

グッズ販売は売れるかどうか。売れなければ作る意味もない。他方で、作らなければ売れるわけもないし、新規の女性ファンも取り込めない。卵が先か鶏が先かという話です。

エンブレムの変更も「グッズや社章など、諸々に莫大な費用」がかかることから否定的な意見が出たという話もあります。我々消費者が簡単に思いつくことは検討されているんだろうなぁと。

逆に言うと、そういう情報がクラブから出てこないのは情報の非対称性みたいなことになっててもったいない。我々が知らないのは仕方がないので、変だなと思ったことは遠慮せずに上申した方がいいんでしょうね。今回の件もそういう感じで受け止めたらいいんじゃないかなって思いました。

Jリーグで楽しくという考え自体は同じ方向を向いているのだからもう少し仲良くしようね。

サポートして頂いた金額は、広島のスタジアム建設募金に全額寄付する予定です。