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好きが止まらない8号  虫眼鏡

普段はその存在をトンと忘れています。が、ひとたび見つけると、私のパターン化された遊びがスタートする筆頭道具です。

発見した途端、片手に持ち、手の平のしわチェック開始。しわの形状を見たところで、自分の未来は全く分からないのに、気分は手相占師です。

手のしわをひとしきり見たら、次はその辺りに散らばった小物をチェック。虫眼鏡を目から近づけたり遠ざけたりしながら、「ほほぅ~…。」と感嘆の声をあげます。ただし、これは多分ポーズ。そんなに新発見はできません。

そしておもむろに虫眼鏡越しに天井を見上げて、グラングランにゆがんだ世界を目にし、「あっ‼︎気持ちワルっ!」

目をこすりながら、虫眼鏡を目から離して我にかえります。

ここまでで所要時間5分。荷造りの貴重な時間を消費しました。

荷造り中は罠がいっぱいです。

その罠をどれだけスルリとかわしていけるか~それがサクサクと準備ができる勝負の分かれ道でもあります。

そんな罠の1つと分かっていても、手放すことはできない虫眼鏡。その理由は、将来してみたいことをするためには、この虫眼鏡が必要なのです。

小学4年の図工の時『家族の絵』という課題がでました。隣の席の子が『虫眼鏡を使って丹念に新聞を読むおばあちゃん』の絵を描いていました。

祖父母と離れて暮らしていた私は、最初、眼鏡でもないものを手に持ち何をしているのか、全く分かりませんでした。曲がった背中の向こうに新聞紙。手に持つ円型の虫眼鏡の中の文字だけが、いびつに大きく浮き上がります。

その時、先生がそばに寄ってきて、その子の絵をみて「良い場面に気づいたね。」と褒めました。そして、先生の解説で、その子のおばあちゃんが虫眼鏡を使って新聞を読んでいるシーンであることを知りました。

「おばあちゃんになったら、虫眼鏡越しに新聞が読める!!」

それを知った時から、この虫眼鏡は来たるべき時のために保管しておくモノになりました。そのため、いくら罠とは分かっていても、持っていくモノの中に入ります。

アメ色の輪郭を持つ私が初めて手にした虫眼鏡…。私が手にしてから、多分、今後予定されている活躍を待つこと70年…

虫眼鏡にとっても長い長い闘いの7分目にさしかかっています。

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