音楽活動のコツ__10_

ミュージシャンに必要なことは「バランス感覚」

全12巻のマガジン「音楽活動のコツ」を書き終えて、今いちど自分の音楽活動を振り返った時に感じることはバランス感覚の大切さです。

ミュージシャン/アーティストに必要なバランス感覚は「したたかさ」と「しなやかさ」なんだなと思うのです。

ミュージシャンのしたたかさとは

「したたか」という言葉、あまり前向きな意味でとらえられることがありません。ズル賢いといったイメージがありますよね。

僕はミュージシャンのしたたかを”しぶとい”という意味で使っています。ようするに感覚だけでなく、戦略的に音楽活動をする、ということです。

戦略なく音楽をやっているミュージシャンはあまりいないのですが、いかんせん今の戦略が弱い。僕も、あってないような戦略で10年以上音楽活動をし、ずいぶん時間を浪費してきました。

ミュージシャンにどんな戦略が必要かは、僕の実体験からマガジンにまとめましたが、基本はコミュニケーションの強化だと思っています。

意識せずにコミュニケーション能力の高い人はいますが、音楽的に優れている人って意外とコミュニケーションが苦手な人が多いですよね。これってすごく活動的には損で、意識してコミュニケーションスキルを高めていくことが必要だと感じます。

僕もコミュニケーションは苦手。好きなこと以外では、できるだけ人と接しずに生きていけたら、と考えていました。まぁでもそれは甘え。これからAIが台頭してくるなかで、人対人のコミュニケーションて、今以上に重要度を高めていくはずです。

そのような時代において、「俺、コミュニケーション苦手だから」と言っていては、広がる音楽も広がらないと強く思います。

自分の音楽に必要だと感じれば、意欲的に取り入れる。

これが、ミュージシャンに必要な”したたかさ”だと思うのです。

ミュージシャンのしなやかさとは

では、「しなやかさ」とはどんなことでしょう。

僕が感じるミュージシャンに必要なしなやかさは、自分を変えていくフレキシブルさのことです。音楽性を変えることも時には必要でしょう。

ただ、時代や世間に合わせるだけが僕らミュージシャンに求められていることではありません。潮流をしっかり読み、自分の芯を曲げずにできるギリギリのところまでは、世の中に合わせていくことがしなやかさだと思います。

僕は「オリジナル曲で勝負するんだ!」と意地を張り、自分に求められていることに長年目を背けてきました。

このような活動はマイナスではありませんでした。オリジナル曲のファンも増えましたし、僕の曲をカバーしてくれるミュージシャンまで現れました。

しかし、オリジナル一辺倒というスタイルは、時にチャンスを逃します。オリジナル曲を聞きたいのは、すでにファンになっているお客さんだけだからです。

大きなイベント等に呼ばれれば、僕らのことを全く知らないお客さんも多く、そんな方に振り向いてもらうには「知っている曲」のインパクトは絶大です。オリジナルしかやらない!という意地を通すのも戦略のひとつですが、ここで「お客さんを喜ばせる」ことに活動の芯を合わせられれば、カバー曲も歌えるのです。これが「しなやかさ」かなと思います。

有名な曲をカバーしたからと言って僕らの個性が失われるわけではないんですね。それを受け入れられるのに、僕は10年以上かかりましたが^^;

やりたいこととやるべきことのバランス

僕は、音楽活動は「好きなことをやり続けること」だと思っていました。

家で一人で楽しむレベルなら自分の好きなことのみを追求すればそれでよいでしょう。しかし、「活動」である以上、そこには人が関わってきます。

僕の場合、「やりたいことだけやっている」状況が返って自分を苦しめることになっていました。

「なぜこんなにがんばっているのに認めてもらえないんだろう」
「がんばっていれば、いつか花開くはず」

と、根拠が乏しい希望にすがりがむしゃらに活動することは、あまり利口な選択ではなかったようです。

自分が作り出す音楽・世界観を一方的に「楽しんでよ」とお客さんい投げるのは、あまりにも横柄ですよね。そのくせ「ライブはお客さんと作るもの」と平気で言っていたのですから、そりゃ売れませんわ(笑)

大事なのは「やりたいこと」と「やるべきこと」のバランス。自分のやりたいこともしっかり残しつつ、今お客さんのためにできることは何か、しっかり頭を使って考えていくことも音楽活動なのだ、今はそう思います。

さいごに

面白いのは、音楽活動でお客さんのことを考えられるようになってから、仕事や私生活においても良い変化があったことです。

人と話すことへの恐怖心や面倒臭さが消え、コミュニケーションを楽しむようになりました。生きるのが楽になった気分です。

音楽活動はコミュニケーションだけ良くても広がりませんが、人の気持ちを考えられるようになると、応援してくれる人が現れます。これ、本当に心強いですし、そこからどんどん音楽活動が広がります。

僕はここに気づくのにずいぶん時間がかかってしまいましたが、早くから利他的な信念を持って活動できるミュージシャンは、応援者が現れるのも早いでしょうね。

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