【レビューweb掲載】水谷川優子〔チェロ〕と黒田亜樹〔ピアノ〕のヴィラ=ロボス作品集

本アルバムは書きやすかった。
どちらのアーティストもソロアルバムを知っているし、2、3年前の「ラ・フォル・ジュルネauジャポン」の無料コンサートで御二人によるデュオを聴き、ヴィラ=ロボスも取り上げられたから。

日本のオーケストラ史の巨人といえる指揮者の近衞秀麿(1898-1973)の孫であるチェリスト水谷川優子は幅が広くしかも弾力性のある動きの音楽作り、渋い艶を伴う質感が際立つ。共演を重ねてきたピアニスト黒田亜樹は歯切れのいいタッチの中に翳をにじませた響きでチェロと力強く呼応する。

エキゾチックな衣の内側に鮮烈さの牙を秘めたヴィラ=ロボスの一筋縄でいかない多層的で抉りの鋭い音楽世界をことさら構えずに描き抜く両者の技術、しなやかにかみ合うアンサンブルが見事。

御二人は時勢を考慮しながらコンサート活動やインスタグラム上でのトークなど面白い活動を継続している。欧州でもまれてきた両者が吹き込む風に今後も期待大。

※文中敬称略

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