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ゴッホ展に思う

今月13日で終了してしまったが、上野の森美術館へ、ゴッホ展を見に行った。

どうせ来ないだろうと思いつつ、18歳の長男を誘ってみたら「ゴッホ展?行く」と意外な返答。

「ゴッホって、ひまわりの人だよね?」

「うん、でもひまわりは見られないよ。」

「えー、そうなんだ。それしか知らないのに」

「糸杉が見られるよ」

「わかんないけど行くよ」

ファン・ゴッホの知名度は美術に関心のない18歳男子をも動かすのか。

しかも人の目が気になる年頃なのに、母親と出掛けてくれるとは。

そんなわけで、息子と二人、電車に揺られて上野へ。

本当は絵が好きな年長の娘を連れて行きたかったが、すでに終盤を迎えたゴッホ展の人混みを予想すると、まだ背の低い長女が展示を見るのはとても無理だろう。

何も食べずに家を出たので、まずは腹ごしらえをして、ゴッホ展の列に並ぶ体力を付けることにした。

夫や実母と出かける時は、カフェやレストランに行くが、息子と出かける時は決まってラーメン。

たまにはラーメンも悪くない。
息子と二人でラーメンを食べる機会など、この先そう何度もないだろうから、ありがたいことだと思う。

こってりラーメンでお腹が膨れたので、50分待ちの行列も難なく過ごせた。

展示の意味

ようやく入れたゴッホ展会場。
杉咲花さんの音声ガイドを借りるか息子に訪ねると不要だとのことで、そのまま入る。

予想どおり、人・人・人!!!
じっくり展示を見るには辛抱強く前列に並んで進まなければならない。

「お好きなところからご覧ください」
スタッフはしきりに言うけれど、今回の展示はおおよそ制作年順に並んでいる。

ファン・ゴッホという画家の人生を辿るには、順を追って見るのが最適のはず。

混雑しているからって、スタッフがいい加減なことを言うものだと思った。

やはりこの人混みでは、6歳の長女が来ても何も見えなかっただろう。

残念だが美術館、展覧会は子どもが鑑賞することを考慮していない。

瑞々しい感性を持った子どもたちにこそ、見せてあげたい作品があるというのに。

糸杉に圧倒される

正直、画家を志したばかりの頃のファン・ゴッホの作品は、技巧的に優れているわけでもなく、色調は暗く、飾りたいと思うようなものではなかった。

学生時代に山梨県立美術館で見たミレーの作品は素晴らしいと感じたけれど、ミレーに憧れたファン・ゴッホの農民画には興味もわかなかった。
かつて私が美術研究所に通っていた頃、先輩たちが描いていた絵の方がよほど正確で上手だったと思った。

今回展示された初期のファン・ゴッホ作品は、最後の展示部屋に飾られた、晩年の作品たちがあって初めて意味を持つ。

絵に命を賭けて、様々な画家たちから学び、技術を模倣して自分の作風を模索していたファン・ゴッホ。

糸杉の絵からは、その魂の輝きがまっすぐ伝わってきた。
まさしくそのキャンバスの前に彼がいて、筆を動かしているのが見えるかのような迫力。

130年の月日を経てなお、観るものを魅了する一枚になるとは、当時のファン・ゴッホ自身想像もできなかったことだろう。
死ぬまでにこの絵を直にみることができて、心から良かったと思えた。

模写大会

連れてこられなかった娘のために、図録を買って帰った。
図録の写真では、実物が持つ魅力の10分の1も伝わらないが、この感動を持ち帰って娘と共有したかった。

私は何も言わず、説明もせず、図録を娘に渡した。

彼女はパラパラと図録をめくって一通り眺めると、糸杉の絵を指差してこう言った。

「私が描くのは、これだな」

その後はパステルを持ち出してお絵かき大会。

娘は真剣なまなざしで、ものの5分から10分ほどで糸杉の絵を描きあげて満足そうだった。

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娘作の糸杉

我が子が通う幼稚園の試み

娘がまもなく卒園する幼稚園では、年長だけを対象とした、美術館見学という行事がある。

上野の西洋美術館へ、美術鑑賞に行くのだ。

園児を美術館へ連れていく幼稚園はかなり珍しい。

そもそも美術館は大人が静かに鑑賞するように作られている。

ゴッホ展も、観客のほとんどが大人。
18歳の長男は「俺が平均年齢下げてるな」と言っていたが、確かにその通りで、圧倒的に年配の女性が多かった。

アートはすべての人に開かれたものだと思う。

感性豊かな子どもたちにこそ、優れた芸術作品を見せるべきだと考え、毎年年長さん全員を引き連れて美術館を訪れてくれる先生方。

何がすごいって、ただ美術館に連れていくだけでは終わらないのだ。

美術館への旅で大きな刺激を受けた子どもたちが、次は自分が表現したい!となるのは自然な流れ。

アラフォーの私だって、ゴッホ展を観たあとは絵が描きたくてたまらなくなった。

そんな作りたい!描きたい!を存分にやらせてくれるのが、我が子が通う幼稚園なのだ。

美術館見学の約1か月後、幼稚園全体を舞台に、年長プロデュースによる「美術館ごっこ」が開催される。

ひとりひとりの絵が飾られるのはもちろん、グループ、全体の合作、立体作品、上野まで乗った電車、ちらりと見えたスカイツリー、美術館の外にあった噴水、考える人、クジラのオブジェ、お土産やさんにレストラン‥

子どもたちがそれぞれやりたいものに取り組む。
そこに先生からの指示はない。
あくまでも子どもの自主性に任せ、「こんなふうに作りたい」の相談にのって、どうすれば実現できるか一緒に考えてくれる。

そうして美術館ごっこ当日、年長の子どもたちは年少、年中の子どもたちを、自分たちの美術館に招待する。

美術館見学で受けた感動が、下のクラスの子どもたちへ、親たちへと伝わっていく。

こうした試みを何年も続けている幼稚園。
私はこの園に入れてよかった、と常々感じている。

文字もピアニカも計算も、何も教えてくれないけれど、幼児期にしか体験できない、小手先の知識や技術より、もっともっと大切なことを教えてくれるから。

我が子が通う幼稚園の素晴らしさを、改めて感じるゴッホ展訪問だった。

2020年 1月 チョコレモン

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娘が友だちと3人で作ったスカイツリー

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when life gives you lemons, make lemonade 試練の年をみんなと乗り越えたい! 4児の母ですが、2020年4月京都芸術大学の学生になりました♪ インスタ→https://www.instagram.com/halle.0409/?hl=ja

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コメント (4)
私もゴッホ展行ったのですが、やはり同じように現物を観ることができて良かったと思いました!
幼少期から芸術に触れると豊かな人間に育ちそうですね!
みっちー様
コメントありがとうございます♪死ぬまでにもう1度見たい絵でした。特にゴッホ好きではないけれど、実物を見ると伝わるものがありますね。雑多な日常の中に子どもと共にアートを発見して楽しみたいです♡
我が家の次女も、お絵かきが好きなので、お絵かき教室に通う??とは何度も聞いたことがありましたが、絵画展に一緒に行くことは全く盲点でした。新たな気づきをいただきました★ありがとうございます♪
kicchan15様
コメントありがとうございます♪うちの娘は造形を習っていたのですが、決められたことをやるより好き勝手に描いたり作ったりするのがいいらしく辞めてしまいました。もっと子どもが行きやすい展覧会や美術館が増えるといいですね!
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