『乙嫁語り』は幸せのビュッフェ

ホテルのモーニングビュッフェ


この言葉にときめかない人はいるでしょうか。

朝から和洋中でも食べたいものが食べられる。
食事もデザートもある。
なんなら目の前で調理もしてくれる。

まさに食のエンターテイメント!


ところで今回の記事は、ビュッフェの食レポではありません。
わたしが今推しに推しまくっているマンガ、『乙嫁語り』(森薫)のダイレクトマーケティングです。

物語を読む楽しみの一つは、そこに描かれる人間関係ですが、この作品はまさに人間関係のビュッフェなのです!
きっとあなた好みの関係性が描かれていますので、もうこれはぜひ!
一度!
騙されたと思って読んでみてください!!


舞台は19世紀中央アジア。
遊牧民の村から、一人の女性が町に嫁いできます。
アミル・ハルガル20歳。
お相手はエイホン家の末子、カルルク・エイホン14歳。
ふたりの新しい生活がはじまります。

物語はアミルとカルルクを中心に、ゆるやかに家族や町の人たちの生活を描写していきます。
狩りをすること、パンを焼くこと、服を作ること。
日常のひとつひとつが、丁寧に描写されていきます。

読み進めていくとわかるのですが、この作品は英国人の学者スミスの目を通して見た、19世紀中央アジア紀行でもあります。
彼はエイホン家に居候して、その土地の人々の生活を記録していきます。
そして彼が土地を移動するごとに、その先々での人間模様や文化の様子を、見ることができるのです。


と、作品の背景と舞台設定の説明はこのくらいにしましょう。

「人間関係のビュッフェ」と書きましたが、その部分をぜひとも共有したい!
あなたの好きな関係性が、一つはあるはずです。

1.逆年齢差カップル(カルルクとアミル)
わたし、年の差カップルのよさって今まで知りませんでした。
年齢差があってうまくいくって?? と思っていたんです。
カルルクとアミルは6歳差。
カルルクはまだ成長期に入ったばかりなので、背もアミルより小さいし、力も弱い。
アミルは当時としては嫁き遅れとはいえ、聡明で素直で万能なハイパーお姉さん。
初めて顔を合わせたのは婚礼の席で、それまでお互いの年も知らなかったというところから、二人はだんだん夫婦になっていくんですね。
最初はカルルクを「かわいらしいな」と思っていたアミルが、カルルクがたまに見せる男らしさにびっくりしたり。
アミルを守るために、早く大人になりたいとカルルクが背伸びをしたり。

かわいい!
すっごくかわいい!!
この二人には末長く幸せでいてほしい!!!

このほのぼのとした感じは、カルルクとアミルの年齢が逆ではダメなんですよ。
アミルのほうがお姉さんだからこそ、カルルクの伸びしろが生きてくるんです。

2.ツンギレ(パリヤとウマル)
アミルの町での初めてのお友達、パリヤさんは典型的なツンギレ少女。
生真面目で正義感が強くて不器用で人づきあいが苦手なので、結婚相手が決まらないことにやきもきしています。
ツンデレを通り越してツンギレです。

わたし、ツンギレに萌えたことってほとんどないんですけどね……。

そのパリヤさんが、なんだかんだでウマルという少年と出会うんですが、もうこの二人がかわいい。
緊張のあまりツンツンしてぶっきらぼうな態度ばかり取ってしまうパリヤさんの、一途なこと!
自分の性格を恨めしく思っている一方で、ウマルのほうは「あの子かわってるなー」くらいにしか思っていないのが、なんともほほえましい。
パリヤさんがギレの部分を乗り越えて、ウマルと仲良くしようと奮闘する姿は、思わず応援したくなります。

二人の結婚はまだまだ先のようだけれど、末長く幸せになってほしいです。

3.気弱青年と未亡人(スミスとタラス)
乙嫁で今のところ一番大人なカップル。
旅の英国人と現地の女性、というだけで、時代背景を考えれば難しさしか感じません。
(ポカホンタスとかいろいろあるじゃないですか……)
スミスは学者でもあるので、そういう難しさを人一倍わかっていると思います。
それでも、身寄りも頼れる親族もないタラスを不憫に思う以上に、女性として好意を寄せてしまいます。
タラスも、よく知らない外国人についていくことの難しさは、肌で感じているようです。
結婚相手として、スミスの家族に受け入れてもらえるのか。
知らない土地でやっていけるのか。
それでも、タラスはスミスの側にいたいと願ってしまいます。

ほんと二人とも幸せになって……!!
スミスさん、タラスさんを幸せにしてあげてね……

4.百合(アニスとシーリーンと旦那)
”百合”というのは女性同士の恋愛描写のことですが、百合っぽいものがこれほどいいと思ったのは、これが初めてです。

とある裕福な男性の妻アニスは、広いお屋敷で独りぼっちで、お友達が欲しいと思います。
女性たちの社交場、町のお風呂屋さんで出会ったのが、シーリーンという女性。
ひと目で彼女のことが気に入ったアニスは、シーリーンとお友達になりたくて話しかけます。
世間ずれして素直で一生懸命なアニスと、その素直さが可愛いと思うシーリーンは、身分差もなんのそので親密なお友達になるのですが……。

アニスの旦那さんは優しくて賢くてアニスにベタぼれで、実はお似合いの夫婦です。
そこに、シーリーンというアニスの親友が絡むことになるので、すわ三角関係か!思いきや。

アニスは旦那さまもシーリーンも大好き。
旦那さまはアニスが大好き。
シーリーンもアニスが大好き。

あれ?
これひょっとして、旦那とシーリーンはアニス大好き同盟でも組むんじゃないかな??

この3人だったら、どろどろの修羅場になることはないわ、絶対ないわ。
と思えるくらい平和です。
ずっとそのまま平和で仲良くやってください。

5.双子と幼馴染ケンカップル(ライラとレイリ、サーミとサーム)
幼馴染ケンカップルは王道中の王道ですよね。
それを”双子の姉妹”と”兄弟”の組み合わせでやるんだから、美味しくないわけがありません。

夢見がちなライラとレイリが結婚することになったのは、幼馴染のサームとサーミの兄弟。
お互い「……わかってたけど、もうちょっと夢を見せてくれ……」と思っている相手なのですが。

ずっと一緒だったライラとレイリが、「どっちがいい?」と言われて兄弟のそれぞれを選んだり、相手と時間を過ごすうちに「ひょっとしてあなたのこと、好きかもしれないわ」と思ったりするのが、幼馴染カップルの良いところです。
サームとサーミが「あの二人かよ……」と思いながらも、相手を大事にしよう、幸せにしてやろう、と静かに決意するところも、男らしくていいですね。

結局4人でわちゃわちゃ騒いでいる感じなのが、とても可愛らしいです。
ライラとレイリがいうように、「みんなで楽しく暮らすのよ!」という夢がかないますように。
いつまでもわちゃわちゃ楽しくやってください……!


長々と書いてしまいましたが、ほかにもユフスとセイレケ(カルルクの姉夫婦)やカルルクの両親、アゼル(アミルの兄。超マジメで一族を背負ってしまう苦労人)やアリ(スミスの護衛の明るい商売人)など、魅力あふれる登場人物が目白押し。
これからさらに掘り下げられる人たちもいるでしょう。

そして誰に対しても、「幸せになってね……!!」と応援したくなってしまうのが、この作品の最大の魅力です。


今回はカップルメインでご紹介しましたが、気になる組み合わせはいたでしょうか。
いなかったとしても、読んでみればその良さに気が付くはず!
わたしのように!!

ビュッフェの良さは、「あんまり興味ないな」と思っていた料理を気軽に試せること。
試してみたら意外とおいしかった、ということもあるかもしれません。


遊びや旅行の予定が消えてしまった今こそ、新たな出会いを求めて、新しい作品に手を伸ばしてみてください。
きっと新たなお気に入りに出会えることでしょう。

『乙嫁語り』は12巻まで出てますよ!
ぜひ!!

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