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210904 まちの「つながり」プロジェクト 第8回講演及びトークセッション レポート

【講演】
ネットワークとはじめの一歩
【ゲスト】
永井大輔さん
(イオンタウン株式会社 新業態推進本部 兼 地域連携まちづくり委員/一般社団法人P-players理事/特定非営利活動法人 自治経営 関東甲信越アライアンス副代表)【調布市 まちづくりプロデューサー】
髙橋大輔、菅原大輔
【ファシリテーター】
松元俊介
【記事および写真】
パカノラ編集処 代表 小西 威史

皆さん、こんにちは。
フェーズ2の第8回講演&トークセッションを9月4日、FUJIMI LOUNGEからオンライン配信で行いました。
(8月7日に開催予定していた第7回分はコロナ感染症拡大防止の観点から10月9日に延期となりました。)

ゲストは永井大輔さん。テーマは「ネットワークとはじめの一歩」です。
ご自身曰く「普通のサラリーマン」の永井さんは、本業の仕事とは別に、自分が暮らす地域のパブリックスペースを活かす取り組みを進めたりしています。

その地域活動が、本業の仕事ともリンクするようになり、公私混同ならぬ公私混“合”の精神でより多角的にまちづくりに関わるようになっていきました。
「まちのための活動は自分たちの未来の生活につながる。自分にも家族にも、会社や地域にもよいことになるのなら、仕事もプライベートも関係なく、積極的に混ぜていこう!」という思いがそこにあります。

だれでも「はじめの一歩」を踏み出すことで、その人自身も、その人が暮らすまちの未来も変えていけることをご講演いただきました。お住まいのある茨城県守谷市からのリモート講演です。その内容を紹介します。

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1.「住みよい」まちなのに、楽しさを感じない。そこで「一歩」を踏み出すことに。

永井さんが暮らす守谷市は東京都心から約40キロ圏内にあり、都心へのアクセスもよく、人口は今も増加傾向です。民間のコンサルティング会社のアンケート調査で「住みよい街ランキング」の1位に選ばれたこともあるまちです。

ただ、永井さんはその「住みよい」とされる評価に実感が伴わなかったそうです。「都心へのアクセスのよさのほかにも、道路が広かったり、公園も多いなど、暮らしやすくてたしかにいいまちです。私が勤務するイオンタウンが運営する『イオンタウン守谷』という大型ショッピングセンターもあって買い物にも便利です。でも、暮らしていて豊かだな、楽しいなと感じるかというと、そこになにか物足りなさを感じていました」と話します。

縁があって「都市経営プロフェッショナルスクール」という社会人学校で都市経営や公民連携のまちづくりを学んだ後、地元・守谷で「一歩」を踏み出すきっかけとなったのが、自宅の近所の公園で開催されていた「誰でもパーク」でした。
「誰でもパークは、まちの公園にタープを張って誰でも自由に座れる場所をつくったり、コーヒースタンドを出したりする小さなイベントです。守谷の住民で結成された『一般社団法人P-players』が開いていました。家の近くの公園でやっていたので散歩がてら見に行ってみると、変なおじさん(笑)がコーヒーを淹れていて、でもちょっとステキで、普段見ている公園がちょっと違った場所に見えてきました。それまでに感じなかった豊かさを感じたのです。それで、その次の回からは運営のお手伝いをさせてもらうようになりました」
そんないきさつで永井さんはP-playersのメンバーとなりました。

03_誰でもパーク

2.「パパ、お祭り楽しかったね!」。息子の言葉はまちづくりの原点かもしれない。

自分のまちで仲間ができた永井さんが、まちを楽しい場所にしていくために新たに目をつけたのがイオンタウン守谷の敷地内にあった「ヒマラヤ杉公園」です。
「いわば民間が管理しているパブリックスペースですが、草がボウボウに生えていて、ジャングルのような状態でした。ただここでなら、マーケットが開けたりするのではないかと考えたのです」

まずはイオンタウン守谷の担当者とP-playersのメンバーで、キックオフのミーティングと称する「飲み会」を開いてビジョンを共有したり、その後はマーケットの開き方を岡山県まで学びに行ったり、草刈り機を持つ地元民の力を借りたり、パパ友が手伝ってくれたりと、いろいろな準備や出会いを経て、ヒマラヤ杉公園でのマーケット「and PARK Moriya」を開催しました。2019年5月のことです。

コンセプトは「『住みよいまち』から『自ら暮らしを楽しむまち』へ」。地元で人気のピザ屋さんや花屋さん、アクセサリーや雑貨の作家さんなどにひとつひとつ直接出店を依頼し、それまでになかったにぎわいを生み出しました。

永井さんは初回を振り返り、こう話しました。
「イオンタウンの駐車場の一角に、昼からワインが飲めたり、楽しげに子供が走り回れるような空間ができ、来ていただいた方に喜んでいただけました。そして、イベントが終わり、撤収をして疲れ果てて家に帰ったのですが、そこで昼間に来てくれていた3歳の長男が『パパ、今日のお祭り楽しかったね!』と言ってくれたんです。この言葉は本当にうれしく、胸に刺さりました。そして、まちづくりってそんなに難しいことではなく、こういうことではないのかなとも感じました。大きな一歩でした」
「and PARK Moriya」はその後、2か月に1回のペースで定期開催していましたが、現在は新型コロナウイルス感染症の影響でお休みしています。

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3.理想の暮らしを思い浮かべながら探せば、宝物はすぐ近くにある。

ここからは冒頭で紹介した「公私混合」の話になっていきます。
「私はイオンタウンの社員ですが、今は本社勤務で、イオンタウン守谷での活動は組織内の枠組みを超えて勝手にやったようなかたちになりました。社内でいろいろ言われることもあったのですが、実際に『and PARK Moriya』をやってみて、暮らしと仕事はばらばらにするものではなく、本来どちらもつながっているものじゃないかなと考えるようになりました。すべては私たちの未来へつながっていくことなので、公も私も積極的に混ぜていこうと思うようになったのです」と永井さん。

その後、まちづくりにつながる仕事としては、千葉県佐倉市にあるイオンタウンユーカリが丘で、地域のまちづくり会社やハンドメイド作家さんと連携したシェアアトリエ「ふわいえ」を開設したり、埼玉県ふじみ野市のイオンタウンふじみ野に自社初のコミュニケーションスペース「cotokoto」をオープンさせたりしました。cotokotoにはキッチンやレンタルスペース、ワークスペースなどが併設されていて、子ども向けのワークショップやコーヒーの淹れ方教室などが開かれています。
また、千葉県旭市では、自治体と地元事業者とともに公民連携で進める「生涯活躍のまち・みらいあさひ」プロジェクトや、多世代交流施設「おひさまテラス」の計画が進行中だそうです。

プライベートでは、守谷市内で築40年の空き家を新たに借り、リノーベーションして家族と暮らす永井さん。
「自由にリノベーションさせてくれる空き家物件を探していたのですが、それもP-playersの仲間の力を借りて見つけることができました。『はじめの一歩』をがんばって踏み出すと、仲間の輪が広がっていろいろなことができるようになっていきました。自分の暮らしがこうなったらいいなあ、ということを思い浮かべながら、身の回りを探せば、宝物は近くにあります。まちづくりに興味があるなら、勇気を持って一歩を踏み出してみてください」
そんなメッセージで、永井さんは講演を締めくくりました。

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4.トークセッション

永井さんの講演後、永井さんと髙橋、菅原によるオンライン・トークセッションが行われました。その一部を紹介します。

髙橋:永井さん、ありがとうございました。地域の住民たちが草の根活動的に行っていたことがSC(ショッピングセンター)とつながっていく事例など、とても興味深かったです。
ただ、どんな活動をするにも、その地域でどんな人がいるのかを知ったり、いっしょにやってくれる仲間探しが大切なのですが、どのようにすればいいでしょうか。

永井:コロナ感染症のことさえなければ、飲みに行くのが一番早いです(笑)。こんな人がいておもしろいよとか、どこそこでこんなことをやっているよという情報も聞けたりします。
ただ、もちろん飲むだけで何かが生まれるわけではありません。「飛び込んでみる」ことが重要です。気になる地域イベントなどがあればそこへ行き、ちょっと運営の手伝いをしてみたり、裏側を見せてもらったりすると、一歩踏み込んだ人のつながりができていきます。

髙橋:調布市は都心から約20キロ圏内、守谷市は40キロということで、その距離の違いでもコミュニティのつくられ方は変わってくると思いますが、守谷ならではのコミュニティのスタイル、また調布との違いで何かお感じになることはありますか?

永井:守谷市では2005年につくばエクスプレスが開通し、利便性が上がって、新しい住民が増えました。なので、住み始めて年数が浅い住民もたくさんいます。
また、守谷市には商店街らしい商店街がないのです。私は2015年から住み始めたのですが、最初の頃は都心で働き、守谷はただ寝に帰る場所という感じでした。
ただ、お互いに比較的新しい住民ばかりなので、裏返すと、フラットな関係で何か新しいことができる「余白」があることは感じています。

一方、調布を走る京王線はTXよりも歴史が深いですよね。調布には商店街もあるでしょうし、すでにいろいろな「資源」や人のつながりがあるという強みがあると思います。アプローチの方法は違いますが、それぞれのまちの楽しみ方はあると思います。

話はちょっと変わりますが、まちづくりの進め方で「公民連携」がありますが、その「公」は必ずしも官(自治体など)だけではなくてもいいのでは?と、仲間と話したりしています。民間が「パブリック(公)」的な役割を担うことがあっていいと思います。菅原さんが富士見町で地域に開かれている「FUJIMI LOUNGE」はまさにそういう役割の場所なのではないでしょうか。そういう場所が増えていくと、まちが変わっていくと思います。

菅原:FUJIMI LOUNGEのことに触れていただき、ありがとうございます。私も同意見で、民による公共的空間の運営に興味があり、重要だと思っています。ただ、やはり経費もかかります。地域で何かを始めたい、「はじめの一歩」を踏み出したい人は多くいると思うのですが、お金のことや、その活動を継続させるためのアドバイスはありますか。

永井:継続のためには、やはりリスクは少なく始めるのがいいと思います。例えば、仲のいいカフェの方と一緒にコーヒーのテントを一つ出すだけでもいいと思います。そこでコーヒーセミナーをやってみるとか。

菅原:たしかにそれなら、自分が持っているキャンプ用品のイスやテーブルを出すだけでできるかもしれませんね。

永井:私の場合はP-playersがあったのでそれなりの規模でできましたが、なくても自分でできることで始めてみるのがいいと思います。
誰でもそれぞれ、パブリックマインドは持っていると思います。自分が暮らす半径数百メートルくらいのエリアに対し、どんなまちであってほしいかと考え、その実現のために行動する権利も義務もあると思います。

菅原:調布市の空き家施策担当のキーマンである松元さんからもオンラインで質問が来ています。空き家を活用したまちづくりの取り組みを、地域の方に広く知ってもらうために効果的と思うことがあれば教えていただきたいということです。これは私も知りたいです。

永井:多くの方に知ってもらいたいのであれば、地域にある普通のショッピングセンターなどが意外と効果的ですよ(笑)。ビラやチラシを置いておくと、結構、手に取っていってくれたりします。あとは人通りが多いところでのサイネージ(ディスプレイの広告)などもよく見てくれます。ただ、広くは伝わりますが、関心の深さにはつながりません。
そういう意味では、もちろん一番いいのは口コミですよね。つながりの中で人が増えていくのが理想です。ちょっとでも興味を持っている方がいれば、「一度、見に来てください」と誘って、現場を見てもらうのがもっとも効果的だと思います。
私も今回せっかく講演にお誘いいただいたのに、まだ調布の空き家・空き店舗のポテンシャルを拝見していないですし、FUJIMI LOUNGEにも行けていません(笑)。
少し落ち着いたら、私も必ず調布へ伺いますね!

永井さん、ありがとうございました!

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