現代将棋新定跡とC-book_2017の比較検証(1)

 既にsuimon氏がわかりやすい資料を出しているが、もう一度私のほうでも検証を行ってみたいと思う。
 法律上の問題は存在しないということは既に繰り返し書いた。ここでは、道義上の問題も存在しないことを確認していきたいと思う。

参考:
第六回「棋譜・手順・定跡ファイルの権利について」
・suimon氏のツイートに添付された資料

特に千田氏が強くパクりを主張したのが、現代将棋新定跡のp100~p102とp106~p108であった。本稿ではp100~p102の検討を詳細に行っていく。
※図はクリックすると拡大します。

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目次
1.⑧ p.100~p102【重要】『(C-book_2017)』 
1.1 p.100
1.2 p.101
1.3 p.102
まとめ
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1.⑧ p.100~p102【重要】『(C-book_2017)』 

1.1 p.100

 上図が「現代将棋新定跡」のp100の(第13図)である。
 そもそも上図での△3一玉はC-bookにおける本手順ではない。△4四歩と△7二金を「好手」として評価している。(下図)

◆(重要)△3一玉以下の変化が解説されているp.100~p.102部分に関して、C-bookは何らの価値評価を行っていない。(C-bookにおいて千田氏が重要だと考えている部分には「好手」「絶対手」「疑問手」「悪手」などの価値評価が付けられている)

p100下の(参考図)は▲4五桂に△2二銀と引く変化であるが、これはC-bookでは現れていない。(下図)

△2二銀はソフトの候補手に挙がらない悪手であるが、現代将棋新定跡ではアマチュアも対象読者ということで、わかりやすくよくなる変化を解説している。

なお、△3一玉の変化自体はfloodgateでかなり早い時期に指されている。

Ukamuse_KabyLake-7700K vs. test_cortex-A17_4c (2017-01-29 09:30

「C-book_2017」は2017年11月発表であるが、このfloodgateの対局は2017年1月に指されている。そもそも千田氏がなんらかの権利を主張するのは筋が通らないのである。

1.2 p.101


上図がp101図14の局面。C-bookでは△2三金一択だが、現代将棋新定跡は△2三銀の変化も解説している(p101はこの変化の解説に当てられている)。このあたり、アマチュアへの配慮が見られる書き方である。


アマ五、六段レベルの私からみると、▲9五歩の筋は見えにくい。floodgateの対局例では2017年12月に現れている。

yaselmo_testeval_2c vs. ajk (2017-12-04 06:00)

 C-bookが11月と早いが、12月には既に指されている。これらのソフトがC-bookを定跡として読み込んで使ったのだろうか。(もちろん、その可能性は十分あり得る)
 我が家の激指13は▲9五歩を発見できなかったが、最善手ということで強いPC&ソフトは同じ選択をする局面ではないだろうか。

1.3 p.102

第15図以下、△同香と取る変化は双方に出現する。(p102上部)

・▲7三歩成△同金▲6二角(C-book)※手順のみ
・▲7三歩成△同金▲6二角△6三金▲9五角成(現代将棋新定跡)※文章での解説


・p102下部

 本手順において▲7四歩に対して、△同金とする変化について現代将棋新定跡は解説を行っているが、C-bookでは手順も価値評価もない。


▲6五歩に対して△同歩の変化は双方に記述がある。(もちろん、C-bookには価値評価がない)


 現代将棋新定跡では上図で▲6四歩で「先手の攻勢が続く中盤戦である」と価値評価を行っている。(結果4図の評価値は「互角(+217)」である)
 C-bookでは▲6四歩と▲6六角が候補手として挙げられているが、どちらがよいのかもわからないし、最終的な形勢をどう判断しているかもわからない


まとめ

 そもそも「C-book_2017」において、この変化はソフト同士で対局させた手順こそ掲載されているが、一切価値評価が行われていない。価値評価が行われていない手順に何か意味があるのだろうか?(保険として膨大な手順を並べておき、誰かが言及したら「パクりだ!」と主張するような当たり屋行為も可能になる

 またこの変化はプロの公式戦でも出現している。

2018-01-29 棋聖戦村山慈明 七段 vs. 行方尚史 八段 第89期棋聖戦二次予選将棋DB2

 ち……千田さん。suimon氏に圧力をかける前に、村山先生に圧力をかけないといけなんじゃないんですか

「なんで僕が発見した手順を許可なく指すんですか!」

って。
プロ棋戦でも指され、公になっている手順を解説したらあかんの?

 ▲9五歩は調べたところでは「C-book_2017」が初出ではあった。千田氏の詳しい主張は(suimon氏さえも)わからないのだが、▲9五歩に独自性を主張してるんじゃないかなぁと推測している。この手をソフトがどれぐらい読むのかーーというのは、今の私の能力では調べることができないので、誰か検討してみて欲しい
(これは▲9五歩という手にどれぐらいのオリジナリティがあるのだろうか……という興味である。ただ、千田氏はソフトを対局させて導き出している可能性が高いわけで、千田氏が言うオリジナリティというのはソフトをどう設定するかのオリジナリティなんだ)
(しかし、何の評価付け・価値判断をもしていないソフトが発見した手に対して、自分の新手だと主張することは正しいのだろうか? ソフトが膨大な手順を自動生成していく中での人間の役割は、選択と解釈にあると考えられる。……まぁ、そうしたものも自動化されていくのかもしれないが……)

 どちらにせよ、現代将棋新定跡が出版される前に、floodgateの実戦で現れ、プロの公式戦でも現れている手順である。C-bookにはない手順が文章で解説され、価値評価を強く行っている。
 これに問題があるとしてしまうと、定跡書とか危な過ぎて書けない。角換わり定跡の中に膨大なC-book地雷が埋まっている感じになるからね。

 (続く)
次回→現代将棋新定跡とC-book_2017の比較検証(2)

参考:
・「コンピュータ発!現代将棋新定跡」(suimon マイナビ出版)
・「C-book_2017」(千田翔太棋士)
将棋DB2


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小説家/yomyomで将棋小説「覇王の譜」連載中/小説すばる新人賞「サラの柔らかな香車」/公式ブログhttp://chodo.work/ねとらぼライターページhttps://www.itmedia.co.jp/author/217346/

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現代将棋新定跡をめぐる問題に関して
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  • 13本

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