現代将棋新定跡とC-book_2017の比較検証(2)

引き続き現代将棋新定跡とC-book_2017の比較検証を行っていく。本稿では⑨p.106~p108【重要】『(C-book_2017)』を検討する。
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前回→現代将棋新定跡とC-book_2017の比較検証(1)

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目次
1.⑨p.106~p108【重要】『(C-book_2017)』
1.1 p.106
1.2 p.107
1.3 p.108
まとめ
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1.⑨p.106~p108【重要】『(C-book_2017)』

1.1 p.106



上図は現代将棋新定跡p106の第18図。後手は金を△7二金~△6二金と迂回させることでわざと一手損をしている。プロ棋士では澤田真吾六段が初めて指したと言われている。(確認中/2018-05-30 王位戦豊島将之 八段 vs. 澤田真吾 六段 第59期王位戦挑戦者決定リーグ白組プレーオフ将棋DB2

 floodgateでの出現はもっと早い。

WannaCrypt vs. test-N1000 (2017-05-24 10:30)

 C-book_2017が発表された11月よりも遥か前に指されている。suimon氏が執筆する以前の段階でfloodgateでの実戦例も多く、コンピュータ将棋に詳しい人であれば知っている変化だったようだ。

 △2二銀に対して▲5五角と打つ筋はどちらにも登場する。ただ、この辺りは強いソフトであれば選択するのだろう。


1.2 p.107

 現代将棋新定跡ではp107で、上図において△1三角と打つ手が解説されている。(floodgateで2017年に3局の実戦例あり)アマチュア的には打ってみたい角であり、一般向け定跡書として解説するのは好手であろう。


1.3 p.108

 上図で▲8七金が本手順。▲8七銀に対しての進行は双方で触れられている。実戦例などをみるにまだまだ一本道の変化の途中である。

 現代将棋新定跡とC-bookで大きく異なるのは、結果図に対する価値判断である。現代将棋新定跡は上図から△2八角として「後手も戦える形勢」と判断している。(評価値も互角(-1)だ)
 一方、C-bookは全ての候補手が疑問手か悪手になっており、この局面自体が後手にとってよくないと判断している。


まとめ

この変化はプロの公式戦では以下が有名だろう。

2018-07-10 棋聖戦羽生善治 棋聖 vs. 豊島将之 八段 第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負 第4局将棋DB2

 意図的であるかはわからないが、羽生先生が豊島先生の研究を外して勝った将棋である。(研究を外したと言っても、▲2二歩もfloodgateでの前例があったのは驚きだ)
 suimon氏が報告書で言及しているように、将棋世界2018年9月号では以下のように書かれている。

第2図は手の広い局面ですが、フラッドゲート(将棋ソフト同士の対戦サーバー)の棋譜を調べてみると前例が多く、現在の奨励会員や若手棋士は皆知っている局面でしょうね。
引用:将棋世界2018年9月号、p14

 この解説は序盤戦術に詳しい村山慈明七段によるもので信頼できる。プロ間でも課題になるであろう局面・変化を選択して解説していたということで、suimon氏の見る目は正しかったということになる。

p.106~p.108については以下のことが言える。

①コンピュータ将棋に詳しい人にとっては共通了解の手順であり、千田氏が独自性を主張するのはお門違い。
②結果図における価値判断が、現代将棋新定跡とC-book_2017では異なっている。(現代将棋新定跡では後手指せる。C-book_2017では後手苦しい)

 研究家たちの共通了解手順で、なおかつ結論が異なるものに対して「パクりである」とはこれいかに? 

 千田翔太棋士がパクりを主張した部分は他にもあったが、既にプロ棋士間で共通了解となっている局面に対して主張している。共有財になったものを「俺のものだ」って主張している感じ。C-bookに羅列した手順は全部俺のものとでも言いたいのか。調べてみて改めて思ったけど、「いちゃもん」としか言いようがない。

 前回の▲9五歩はもしかしたらC-book初出を主張できるかもしれない。だからと言って「現代将棋新定跡」に何らかの非があるかかというとそういうのは全くない。

「この手順は僕(のソフト)が初めて見つけたんだ」

 というのはツイッターとかブログとか雑誌とかで発信したらいいんじゃないかな。反論とかしなさそうなアマチュアに的を絞って、出版社を介して圧力をかけるとかちょっと信じられない

(続く)

参考:
・「コンピュータ発!現代将棋新定跡」(suimon マイナビ出版)
・「C-book_2017」(千田翔太棋士)
・将棋世界2018年9月号
将棋DB2

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小説家/yomyomで将棋小説「覇王の譜」連載中/小説すばる新人賞「サラの柔らかな香車」/公式ブログhttp://chodo.work/ねとらぼライターページhttps://www.itmedia.co.jp/author/217346/

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