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お金は追わないと手に入らないが、追いすぎてもダメだと悟った夜

お金。それは追っても振り向いてくれるとは限らないけれども、無関心では絶対寄ってこないものです。つまり、猫ですね。

出て行く時はとてもドライなのに、意識しないと入ってきません。それならば目をそらすよりも、ちゃんと向き合った上で良い付き合い方を考える方が、後々後悔はないのかなと思っています。

そして、会社員が収入を増やす手段として避けて通れないのが転職です。その折、最近とても上手にキャリアを積む人に会いまして、学びだなあと思った話です。

会社員の給与は転職でしか上がらない

一年前。寒さが身に染み始めた頃、LinkedInでメッセージが届いていることに気付きました。

エージェントの人たちも大変ねと思いつつ開いてみると、コンサルティングファーム時代の同期からです。同期と言っても、私は中途入社で彼は院卒の新卒入社。歳は5歳ぐらい違います。

彼と最後に会ったのはもう7年近く前。どうしたどうしたと思いつつ返信。すると、偶然LinkedInで私の直近の勤務先を知ったとのこと。彼も同じ業界にいるので話をしようと。

ただ、もちろん一年前のその時にはすぐには会えず、ようやく会えたのは季節がほぼ一巡して寒さが増してからでした。

自店で地ビールを醸造している気合いの入ったビールバーで落ち合い、乾杯をしてから近況報告を少々。地ビールをペース良く空けつつ、そろそろ場も暖まってきた頃合いを見て、少し踏み込んでみます。

突然連絡をもらうから、パワーストーンでも売られるのかと思ったよと軽口を叩いてみる私。すると、彼から宣戦布告が返ってきました。

「いやいや。たぶんですけど、僕もう、しょこらさんより給料上っすよ」

なにを。それじゃあと「せーの」でお互いの給料を言い合うと、確かに数百万円レベルでの完敗。なにそれ。会っていない7年でいったい何をしたの。

「転職の度にポジション上がるように狙って動きましたからね。今の会社では社長と毎日働いてますよ」

なんて、お店自家製の黒ビールをを美味しそうに呑みながら、平然と語る彼です。

なるほど、つまり彼は「お給料を上げる転職」を重ねていたのです。

一度書きましたが、収入をある程度のレベルで上げるためには、下の3つの動きのどれかをする必要があります。

  1. 転職

  2. 起業

  3. 投資

2と3は会社員とはまた違うスキルを求められます。つまり、会社員として急ピッチで収入を上げるには、職を変えるしかないということです。

もちろん、昇進でもお給料は上がるのですが、それはあくまで勤めている会社の論理で決まります。一方で、転職は市場原理である需給関係でお給料が決まるのです。

結果、能力のある人ほど社内の昇進よりも、市場で評価を受けた方が高い値段が付きやすくなります。人の流動性が高い外資や、需給が逼迫しているIT業界では顕著な動きで、彼も外資に狙いを定めて転職していました。

ちなみに、どうしてそんなにお金が欲しいのと聞いてみると、

「奥さんが自分で洋服のブランドをやっていて、そこに投資するためです。自分の分なんてほとんど残りませんよ」と苦笑。

なるほど、ナイスガイ。

バックワードベンディング

そんな市場の需給で決まる転職後のお給料ですが、もちろんただお給料を上げれば良いというわけでもありません。お給料が上がる=責任が大きくなるとの意味でもあります。

そんなにお給料をもらってしまうと、仕事が大変なんじゃないのと聞くと、

「そうですね。前の会社では結構働いてましたね。今日も飲み会来るために昨日の夜は深夜まで働きましたよ」

バイタリティよ。

「ただ、お給料が高くなるにつれて、量よりも質が求められるようになりましたからね。働く時間自体は楽になった気がしますね」

これは確かにそうで、収入がある程度を超えるまでは専ら「量の効率性」が求められるのだけれども、以降は「質の生産性」が求められてきます。

手を動かすより頭を動かし、結果の責任を取る。それまでと全く別物のルールで戦うことになるのがお給料が増えること、と言っても過言ではありません。

話は変わりますが、経済学に「バックワードベンディング」という理論があります。これは、収入がある一定水準を超えると、趣味などに使える余暇の方が収入より価値が高くなり、逆に働く量を減らしたくなるものだ、という理論です。

つまり、幸せになるためには、単純にお給料を増やし続けるよりも、ある程度までお給料が増えたらむしろワークライフバランスを重視した方が良いことが経済学の理論からも言われています。

そんなことを思いつつ、働き過ぎてしんどくないのと聞くと、

「お金なんていくらあっても足りないですからね。その分働きますよ」

なるほど、彼にとっては理論のように余暇が増えるよりも、収入が増えることの方が重要だったのだなと納得。

彼の動き方を見て、やはり収入は上げようと意識しないと上がらないのだなと感じます。ただ、上がったら上がったで、今度はさらに難しさを増すワークと重要度を増すライフの優先順位の問題が出てきます。

結局、いつまで経っても何かに悩むのが、お金との関係なのかもしれません。

衝撃のドンペリ

そんな彼と勝った負けたと話していると、周りのお客さんがポツポツと帰り始め、2軒目に行くことに。

2軒目のバーは雑居ビルの3階で、壁の特大スクリーンには『バチェラー』が投じられる、いかにもなバーでした。なんでも、彼の大学のOBで作られたバーであり、OBの溜まり場なのだそう。

入るや否や「お久しぶりです」と、ちょび髭の人の良さそうなマスターから声をかけられる彼。カウンターで再び雑談をしつつ、時折マスターも輪に入れながら時間を過ごしていると、そう言えば、とマスター。

「先日すごいお客様がいらっしゃったんですよ」

もはや酔っ払いな私達が、すごいってどのぐらい凄いのか具体的に言いなさいと悪絡みをします。すると、

「ドンペリを3本も入れて下さって、全部現金で払って行かれたんです」

なにそれ。思わず前のめりになって聞く私たちに、トドメのカウンターパンチが飛んできました。

「なんでもその方、年収6億円らしいです」

年収6億円。

慌てて年収6億ってどんな人なのかと、何故か大阪なおみの年収を調べ出したりして。もちろん特に意味は無し。

それまで数百万円でワイワイ言っていた二人はすっかりしおれてしまい、結局その日はお開きとなりました。

世の中には、知らない世界があるものです。小さく見れば小さく、大きく見れば大きく、求めた分しか見ることが出来ないのが世の中です。

だったら、やっぱり夢も希望も大きく持っていないといけないのだと、帰り道で月を見上げて思ったものです。

Think bigger!

なんて意気込んで帰ったら、家では猫が「嗅ぎ慣れない匂いがする」とすっかり敬遠。

お金も猫も、追いかけすぎるのもまた良くないのだと教えられた夜でもありました。


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