瑞垣くんと海音寺くんと2

門脇の「俊!」と呼ぶ声が後ろから聞こえて
(俊、って呼ぶの、羨ましいな)と思う海音寺

ぽろっと「仲良くて羨ましい」と言ってしまって、
「羨ましい?そうか、そんなに好きか」
余裕そうな門脇の声が響く

「だとしても、お前と一緒が良かった」

そういえば海音寺って意外と眉が整ってるなというところから
「海音寺って眉の処理どうやってんの?自分でしとんか?」
「………うん」(目を逸らしながら)
「嘘やん。嘘すぎて自分で気まずくなっとるやん。まさか可愛い彼女が出来て整えてもらっとるとか無いよな?」
「うるせえな、できてませんよ。できとったとしてもやってもらわんし」
「ふーん…じゃ美容院とか?」
「なんでそんなこと聞くんじゃ…」
「だって気になるやん?正直センスがあるとは言えんあの海音寺が、みょーにムダ毛の処理はソツないの」
「センスなくて悪かったな。………姉ちゃんが……それぐらいはきちんとしろってうるさくて…姉ちゃんの彼氏たちもそっちの方がええとか言うから、……姉ちゃんにされて………自分でするって言ったんじゃけど、詳しくないうちはやめろって…」
「へえ!あのお姉様にしてもらっとるんや。ふーん、ええなぁ」
(なんでこいつ嬉しそうなんじゃ…)

おれのこと好きなおまえはかわいそう

瑞垣・海音寺・門脇が横手で会っていると(門脇は偶然)、「あれ?かず?」と呼ぶ声がする
海音寺が小さい頃近所に住んでたお兄さんで、瑞垣と同じ城山高校の2年生で黒髪の爽やかくん
瑞垣の前でほかの人のことを「しゅんくん」と呼ぶ海音寺さん 漢字は「駿」がいい
何でかはわからないけどちょっと腹が立つしなんとなくショックな瑞垣、となんか気まずいなあと思っている海音寺さん
ショックなのは多分、海音寺にとっての「しゅん」は別の人だから、自分がそう呼ばれる日は絶対に来ないだろうとわかってしまったから(ということに気づきたくないので深堀りはしない)
それ以降ちょこちょこ二人がいるところを目撃したり高校ですれ違って話しかけられたり邪魔されたり(と思っている)してはイライラしていく

いろいろあって押し倒した状態で海音寺の胸元に顔を埋めながら
「…あいつのこと『駿くん』って呼ぶの、むかつく」
「………俊二」
驚いてぱっと顔を上げると、顔を赤くして困ったような顔をしている海音寺
瑞垣の右頬を撫でながら「って、俺が呼ぶのは変じゃない?」
「変じゃない」(食い気味で)
「そっか」ふっと笑う

何度かキスをしながら(ああ、俺は海音寺とこういうことがしたかったんだ)と思う瑞垣

「俊二、俊二くん、俊ちゃん、俊くん、俊。どれがいい?」
「全部。全部おれの」
「わがままじゃな…」(苦笑い)
「だからもうあいつのこと『駿くん』って呼ぶなよ」
「うーん…でもさあ、俺が瑞垣と門脇にもう名前で呼ぶなって言ったら困るじゃろ?」
(想像してみて)「いや、困らん」
「嘘だろ!?今更なんて呼ぶんだよ」
「えー…門脇?」
「何かあった感丸出しじゃな…」

上のとは別の世界線で、名前問題でわちゃわちゃした後のやりとり(海音寺さんが感情ぐっちゃぐちゃで冷静を欠いている)
「門脇が俊って呼んどるの、うらやましい」
「じゃあ、おまえも呼んだらええやん。俊二でも、俊でも」
「嫌だ。おれは絶対、名前で呼ばない」
「えっ…」
結構ショックな瑞垣
「それはそれで、なんやけど…」
気づいてない海音寺

また名前で呼ぶだのなんだのでわちゃわちゃあって、一山超えてやっと「俊二」って呼んでくれた流れで盛り上がってセックスしてる最中にも名前で呼んでってお願いする瑞垣
いっぱいいっぱいで、最初は「俊二」って呼んでたけど最後まで言い終わらず「しゅん」って呼ばれたことにきゅんとする
はっきりとはわからないけど何でかそれが腑に落ちて、「なあ、俊って言ってみて」って言う瑞垣と、え…ってなる海音寺
「だって、それ、門脇の…おれ、やだ」
「あー、そうやな、海音寺。でもこんなときに他の男の名前出すのは悪手やったな」
ちなみに女でもアウトやから、と付け加えられながら攻められて渋々呼ぶけど、どんどん瑞垣とのセックスに酔っていくから最中はあまり嫌悪感なかったし、何なら熱に浮かされて「しゅん、イく」って言ったりしちゃう

ピロートークで
「『俊、イく』だけで当分おかずにできそう」
「バカ…てゆーか。なんで、呼ばせたんじゃ」
「なんでって言われてもなあ」
「おれ、…門脇と一緒はやだって言ったのに」
また怒らせたらやだな、とおそるおそる門脇の名前を出す海音寺
「そうやけど、おまえだってノリノリやったやん?」
「それは…しとる最中、よくわからんくなって…でも、でも、嫌だった」

「俺は俊に幸せになってほしい」
「おまえ勘違いしてるよ。俺は幸せになりたいんやなくて、海音寺と一緒におりたいだけ」
「…すげえ、俊らしくないセリフ…と思うたけど、どっかのドラマとかで使われてそうやな」
「バレた?」

ほかの誰にも理解できないだろうし、それでいいのだけど、海音寺一希という男に自分は心底夢中になっていて、ああそんな軽いもんではない、心酔している?いや、とにかく全てが良くて、余すところなく全部、俺のものにしたくて、他の誰かになんて一欠片もやりたくない。
ハマっている、まさしく。

瑞垣家で勉強中 高3春ぐらい
「瑞垣と…同じ大学に行きたいとまでは言わんけど、せめて、同じ県内がいいなあ…」
(さすがにそれは重いかなとか、主体性無さすぎるかなと思い控えめに笑う海)
「…同じ大学に行きたいって言ってくれてもええけど」(嬉しいし照れるけど引っかかっている)
「え…」
良いんだ、と思って言葉に詰まる
「俺と同じが良いって言って」(照れながら可愛くお願いされ、海フィルターでは花が咲いてるし可愛い犬のようにも見え思わず顔を覆う)
「え、なに」
「俺の………俺の彼氏が可愛い………」
「……それはよかったな……じゃあ、一緒でええやろ?」
「同じがいい…って言いたいのはやまやまじゃけど、瑞垣と一緒って、だいぶ偏差値高いじゃろぉ」
「おまえこの間の模試の結果も良かったんやろ?」
「あの模試だけじゃって…」
「俺が勉強教えてもらうこともあるし」
「数学だけじゃろ…」
「だいじょーぶやって。おれが教えるから」(頬にちゅっちゅと何度もキスをしながらあやす)
「うう…」

池辺に「わかってるのになんで気づかないフリするの?」って聞かれる海音寺(botのふたり)

ムチだらけだし供給が少なすぎて少量のアメで大喜びしてしまう、もはやパブロフの犬

「海音寺の、どういうところが好きなん?」
「……………めんどくさいところ」

「海音寺って、俊のどういうところが好きなんだ?」
「めんどくさいところかな」

「そうやな。海音寺とおると、イエローストーン国立公園におるような気分」
「…えーと、どういう意味かな?」
「アメリカにあるんやけど」
「いったことあるん?」
「ない」
「ないんかよ」
「ゾーンオブデスっていって、殺人を犯しても捕まらない場所…つまり理論上の完全犯罪が成し遂げられる場所があるんだよ」
「はあ」
「おまえといると、そういう実際できるかできんかわからない犯罪を一緒にしとるようなかんじ」
「はあ…?えー…共犯者ってことか?」
「ああ、それにちかいな」
「うん、まあ、共犯者っちゃ共犯者じゃしな、おれたち」
「色気のある関係性やな」
「色気………おれと、おまえに?」
「海音寺には無理かあ」
「おれもそう思う」

来ないものを待つふりをする

「なあ、ショートケーキってなんでショートケーキって言うんじゃろう?」
「さぁ。ショートなケーキだからじゃねえの」
「ってことは、ほかのチーズケーキとかガトーショコラでも、切ってあればショートケーキって言うんかな。それともあの生クリームを使っとるものしか、ショートケーキにはならんのかな」
「検索すれば」
「それはちょっと」
「おまえ、俺をなんやと思っとる?」

門→瑞、吉→瑞、瑞→海
気持ちを明け透けに伝えたりキスしたりする吉に焦って門脇も気持ちを伝えダブルでグイグイ来られるので、それに疲弊して例の河原で海音寺に愚痴る瑞垣
「すげえな、登場人物が全員男じゃ。瑞垣ってモテるんじゃなあ」
「全然嬉しくねえ」
「えー、そうなん?」
「おまえやって男にばっか告られても嫌やろ」
「うーん、相手によるかな。俺がええって思っとるなら男でも嬉しい」
「そりゃあ、そうやろうな」
「あ、瑞垣でも嬉しいぞ」
「は?」
驚いて横を見るとプチプチと草を抜きながら海音寺が何か考え込んでいる
「それって…」
「あと、原田も嫌じゃない。永倉も…うん、嫌だとは思わん。あとは…」
「おい、おい!ちょっと待て、多すぎる」
「そうか?」
「おまえってやつは…」
はぁ、と大きくため息をつく
「じゃあ、俺でもいいってことか」
「え?なにが?」

それから瑞垣と会う度にヨシと門脇がセットでついてきて4人でわちゃわちゃするようになる
門脇は何だかんだ戻ってくるだろうという自信がある
瑞垣に会いに行くとき偶然駅で吉貞と出くわして、横手に行くならついていく!と電車に乗り込んで来るヨシに「さすがに瑞垣の気持ちを考えた方が良いんじゃ」って説得してみたら「はっきり断られたことないし、拒絶されない限り諦める気ない」ときっぱり言われ、すげえ…って引く海音寺さん。と同時に、拒絶してない瑞垣もどうかと思う…とも思う
元々小さい火種ぐらいの気持ちだったものが、二人に積極的にアプローチされるほど大きくなって海音寺が良いなと思っていく瑞垣と、二人の気持ちを知れば知るほど生半可な気持ちでは応えられないと思う海音寺

門脇と二人でいるときに
「海音寺は俊のこと好きじゃないんか?」
「瑞垣のことは、恋愛って意味じゃなくて…人として、すげえ好きだよ。面白いし、話しとって楽しいし…多分、付き合えると思う。もし、門脇と吉貞の気持ちを知る前に告白されとったら、普通にOKしとったんじゃねえかな」
そこで一旦言葉を区切り
「でも、もうそれぐらいの気持ちじゃダメだって思うし…少なくとも今は、瑞垣のことは好きじゃない」
「じゃあ…」
何かを聞こうとした門脇の声を遮るかのように海音寺を呼ぶ声がする
(どうして俊と会っているんだろう)

吉貞が瑞垣とキスしたことを知り動揺する門脇(俺だって俊としたことあるし!5歳の頃!とか言い出す)と、え?それなのに俺に言い寄るのは虫が良すぎない?って眉をひそめる海音寺
「いや、俺がしたかったわけじゃねえしあれは事故みたいなもんやから」
「でもさすがに、おまえは門脇や吉貞の気持ちにちゃんと応えたほうが…」
言い終わる前に海音寺の腕を引き寄せて割と長めにキスをして、
「ほら。海音寺だって応えたほうがいい」
頬を赤らめてはいるけど困った顔をしている海音寺にそう告げる

物理的な距離感が他の人より近い瑞垣と海音寺と、それを見て(近いな…)と思う周りの人たち
スマホやメニューを覗き込むときに肩が触れ合うのも、顔が近づくのも嫌じゃないし、肩に腕を回したり、腰に手を添えたり、なんとなくお互いに触っていた方が落ち着く

瑞と付き合ってる海が記憶喪失する
付き合ってることも忘れてて瑞に「付き合ってたんだ」って言われてへぇ!って思う
名前を聴いてもピンと来なかったけど「しゅん」って響きだけは覚えてて、もしかして自分はそう読んでた?って聞く海音寺
ちがうからううんってなるけど、「名前で呼んでほしいと思ってた」って伝えたら「じゃあそう呼ぶな」って言われる 複雑

そもそも付き合ってるのに苗字呼びってよそよそしくないか?って言われてまたううんってなる瑞垣
「俊」って呼んでくれるようになるけど、瑞垣は海音寺呼びのまま(海は別に気にしない/瑞のこと好きなわけではないから)

ある日瑞垣がお見舞いに来ているところに門脇もお見舞いに来るんだけど、そこで「俊」って呼んでいるのを聞いてん?ってなる
「もしかして俊って呼んどるのはあいつだった?」
「うん」
「じゃあなんで俺がしゅんって響きを覚えてたんだ?」
「わからん」
ついでに「俊」って呼んでる海音寺を見てちょっとびっくりする門脇もいる

しゅん、って呼んでくる海音寺かわいいなあ、なんかひらがなで呼ばれてる感じがして良い、俊二って名前で良かった…ってジーンとする
それに、名前で呼んでくる海音寺と苗字で呼んでくる海音寺は別人だと思えるから良い

「おれたちって、どこまでしとったん?」
「あー、それは聞かん方がええと思うで。おまえは別に男が好きなわけやないし、まあそれを言ったら俺もやけど」
「別に大丈夫じゃって」
「言いたくない。それは、俺と海音寺の記憶やし、おまえに否定されたらしんどい」
俺も海音寺なんだけどなあ、と思うけど、そうかとだけ言って黙る

海音寺が自分のことを好きなわけではないって知ってるけど、付き合ってるままで良いか聞く
「ええけど…ええけど、付き合ってる頃みたいなことはできんぞ。おれたちって、そういうこともしたんじゃろ?」
「ああ、まあ。もちろんそこは期待しとらんっつーか、わかっとる。ただ、おまえが他の誰かとおるところとか…想像したくないし、離れるのは、ちょっと、おれが無理」
うーんって悩んだ後、まあ、俊のこと嫌いじゃないしなー記憶なくす前は好きだったんだし、ええよって言ってくれてなんかもう泣きそうになる瑞垣

スマホの中身を確認してて、瑞垣とのやり取りを見て最初は全然恋人同士みたいな会話してないな…って思うんだけど、電話の多さとか発信率の高さに気づく
「おれたちってどういう会話してたんだ?」
「どういうって難しいな…」
「恋人らしくイチャイチャした会話?」
「イチャイチャて」
「全然それっぽい会話しとらんかったようじゃから。まあ恋人同士がどんな会話するんか知らんけど…」
「…いや、まあ、それはええやん」
「うーん。でも、そういうの聞いていったら思い出すかもしれんぞ?」
「思い出さんかったら俺が虚しくなるだけやろ」
「ああ…なるほど」

瑞垣のことをちゃんと好きになったあと、セックスしましょうってなるんだけど「ほ、ほんとに??ほんとに入れるの??」ってあわあわしてる海音寺を見て可愛い〜〜〜ってか2回目の処女をもらうのと同義では!?!?って気づきを得たりもする
しかも海音寺的には初めてだけど体は慣れてるからめちゃくちゃ気持ちよくてなにこれ!?ってなるし、瑞垣は瑞垣でうわ〜エロ〜処女ビッチやん…ってなる
改めてセックスできて、「もう一度おまえと出来て良かった、おまえが俺のことを好きになってくれて良かった」って伝えて、海音寺は不思議そうにするんだけどとりあえず抱きしめる

こんなにも愛しているのに、こんなにも憎い

あなたの持っているすべてが欲しい。すべてが憎い。

 瑞垣と海音寺が同じ高校に通ってる、同じクラス、やったね!瑞垣は野球してない。
ふたりは付き合ってる。一部の人は知ってる。
瑞垣と仲の良い同じクラスの女の子。インフルエンサー。可愛いけど高飛車で、ツインテールできるぐらいの髪の長さ。友達はボブでワンレン。
インフルエンサーは瑞垣のことが好き。ってことを瑞垣も海音寺も知らない。友達は知ってる。

ある日、海音寺とインフルエンサーが入れ替わる。
戻り方もわからない。
姿の変わった海音寺をこのまま愛せるのか、それともやっぱり別人なのか。
海音寺の姿でふらふらする女の子のことも気遣う瑞垣と、それを見てどこか虚しくなる海音寺。中身は自分なのに、見た目が違うから瑞垣はよそよそしいし、近づいても来ないし、触れようともてこない。触れられたら触れられたで複雑になるだろうから、自分からも近づけない。
瑞垣は瑞垣で、インフルエンサーといると海音寺と話してるみたいな錯覚に陥る。それでもやっぱり発する言葉は違うから、複雑。まるで寄生獣みたいな…海音寺の見た目でほかの誰かと楽しそうにされると複雑だし、その体で自分以外の人と付き合ったりしてほしくないけど、じゃあ側だけが海音寺のその子と恋愛やキスやセックスができるのかと問われたら…出来はするだろうけど、少しでも海音寺と違う言動をすれば引いてしまうだろうとも思う。

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