ウフフ

緊急事態宣言で人影もまばらな5月
久しぶりに会社に出社し、早々に要件を済ませて、緊張しながら電車に乗った
午後15時台
席は一人分空けてみんな座っている
疲れていたので座りたかったが、感染リスクとそこにある暗黙の秩序を乱したくなかった
何より秩序を乱した自分に対しての反応が怖かった

停車駅で何人か降りる
席が空いたので、素早く空いている席に移動する
あれ？
座席に小さく折りたたんだ紙がある
手紙？
学生時代、授業中友達に廻した手紙を思い出す
折りたたんだ紙をつまんで素早く座る
紙に触った時、感染のリスクが頭をよぎり情けなくなる
手に持ったまましばらく見つめる
見たい、でも勝手にみるのはよくない
でも誰のかわからないし、落ちていたし
まぁいいか

ドキドキしながら開けた紙には
キャベツ
ひき肉
ニラ
しょうが
ん？これは夕飯の買い出し？
しかも今夜のメニューはギョーザだ！

顔が自然ににやけていた
ウフフ
毎日感染リスクに怯え、緊張していた心にギョーザが乱入
ウフフ
今日はギョーザか！ギョーザいいなぁ！
換気のため開け放した窓からの風が冷たい
西日に照らされたギョーザのメモをそっと窓枠に置いた