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読書感想文

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歌集・歌書以外の、読んだ本の感想文を書いています。短歌評論に関係する本は「歌集・歌書評、感想文」にまとめています。
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記事一覧

友田健太郎『自称詞〈僕〉の歴史』(河出新書)

 ここしばらくこんな面白い、興味深い、感動的な本を読んだことがない。この本はまさに〈僕〉…

川本千栄
2週間前
5

川添愛『言語学バーリ・トゥード』Round1 AIは「絶対に押すなよ」を理解できるか(…

 抱腹絶倒。振り切った文体と喩え、そして語られる高度な言語学上の問題。エッセイと論文の美…

川本千栄
2週間前
10

『日本語文法演習 時間を表す表現 -テンス・アスペクト-』庵功雄・清水佳子

 現代日本語の時間を表す表現を日本語非ネイティブの人に教えるための本。実は、結構無意識に…

川本千栄
1か月前
7

『日本語文法演習 話し手の気持ちを表す表現 -モダリティ・終助詞-』三枝令子・中…

 日本語を学ぶ非ネイティブのためのワークブック。日本語文法(国文法、学校文法とは異なる)…

川本千栄
1か月前
6

沖森卓也『日本語全史』「ちくま新書」

 日本語史、通史、しかも新書という画期的な本。これを読めば日本語の変遷が分かる。まず歴史…

川本千栄
1か月前
4

釘貫亨『日本語の発音はどう変わってきたのか』(中公新書)

 日本語の発音の変遷とそれを表す仮名遣いを時代順に綴った本。本書は新書であり、キャッチ―…

川本千栄
1か月前
4

『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(岩波書店)

 第二次世界大戦時の1941‐45年、ソ連は「大祖国戦争」と呼ばれる、対ドイツ戦争に4年を費やした。ヒットラーのファシズム対アメリカを中心とする民主主義国家という構図で捉えられがちな対独戦が、多くの部分でドイツというファシズム国家とソ連という共産主義国家の戦いであったことを知ることができる。この戦いの4年間で、2千万人のソ連人が犠牲になったと言われている(P169)。この戦いでは、100万人を超える女性が従軍した。その500人以上に、1978年から2004年に亘ってインタビュ

『高橋源一郎の飛ぶ教室ーはじまりのことば』(岩波新書)

 2020年春からNHKラジオ第一で始まった「高橋源一郎の飛ぶ教室」というラジオ番組の冒頭の三…

川本千栄
2か月前
13

神谷悠一『差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える』集英社新書

 カバーの見返しに「なぜ差別は「思いやり」の問題に回収され、その先の議論に進めないのか?…

川本千栄
2か月前
9

石田光規『「人それぞれ」がさみしい』(ちくまプリマー新書)

「人それぞれ」「みんな違ってみんないい」など口当たりのいい言葉で表現される現代の人付き…

川本千栄
3か月前
7

原田曜平『Z世代』若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?(光文社新書)

 マーケティングアナリストである著者が、「Z世代」について語る。基本は自分と同世代や自分…

川本千栄
3か月前
12

山竹伸二『「認められたい」の正体』承認不安の時代(講談社現代新書)

 現代の「認められたい」という要求の根源を探った本。もっと社会学的な本かと思ったら、哲学…

川本千栄
5か月前
12

『人の心はどこまでわかるか』河合隼雄(講談社+α新書)

 臨床心理学者の河合隼雄が同輩後輩の心理療法家からの質問に答える形で書いた本。著者は禅の…

川本千栄
5か月前
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塩野七生『十字軍物語3』(新潮社)

 シリーズ最終巻。第三次から第八次までの十字軍の詳細について述べられた巻。宗教心の下に聖地を奪い合うキリスト教徒とイスラム教徒という図式だが、実は宗教よりも名誉欲であるとか、領土や金銭などの実利や、引くに引けない同胞愛など様々な要因が絡まっている。結局十字軍国家は200年間、かの地に存在し続け、最終的にはキリスト教側の敗北で終わる。神の意志を口にしながら、我欲とメンツに固執する法王たち。カノッサの屈辱で始まり、アヴィニョン捕囚で終わる時代と十字軍との関係が良く分かった。しかし