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完全オンラインと社会貢献が特徴のインシュアテック・スタートアップ企業:レモネード

テクノロジーの進化とAIの普及で、フィンテック(Finance + Tech)、エドテック(Education + Tech)のように○○テックと呼ばれる分野が広がり、成長分野として注目されています。

保険の分野においても、インシュアテック(Insurance + Tech)が広がりつつあります。
保険といえば、私たちの生活に身近な存在であるにもかかわらず、その仕組みや手続きが煩雑で分かりにくいサービスの代表例ですが、今やスマホ一つで簡単に加入し、サービスを受けることができるようになってきました。

そんなインシュアテックのスタートアップ企業として注目されているのがレモネード(Lemonade)です。

レモネードってどんな会社

上場前から注目度が高く、ソフトバンクグループからも出資を受けていたレモネードは、昨年7月に株式を上場しました。
前評判通りの人気で、上場初日の株価終値は69.4ドルと、IPO(株式新規公開)価格29.0ドルの2.4倍という高値を付けて取引を終えています。

2015年創業のレモネードは、

Harness technology and social impact to be the world's most loved insurance company.
「テクノロジーと社会的インパクトを利用して、世界で最も愛されている保険会社になる」

というミッションを掲げています。

AI(人工知能)と行動経済学を活用し、取引をボットと機械学習に置き換えることで、紙ベースでの事務処理をゼロにし、すべてを瞬時に実現させることを目指すとしています。

事業は、当初は、住宅所有者と賃借人向けにパソコンやテレビ、スマートフォン、家具、自転車などを対象とした家財保険を提供してきましたが、20年7月の上場直後にペットの健康保険を開始し、さらに今年に入り生命保険の取り扱いも始めています。

グローバル展開も進めており、米国内(家財保険、ペット保険、生命保険)のほかドイツとオランダ(家財保険、賠償責任保険)、そして20年12月からはフランスでも賃貸人向けの保険をスタートさせています。

レモネード、Webやスマートフォンのアプリから簡単に保険に加入したり、保険金の支払いを受けたりすることができる点にあります。

保険に加入する場合、申し込み画面に入ると、AIアシスタントの「MAYA」がチャットでいくつか質問をしてきます。

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質問に答えると、加入者にあった保険が作成され、クレジットカード情報を入力すれば、保険料の支払いまで、たったの90秒で完了します。

保険金の支払いを受ける場合も、AIアシスタントの「JIM」の質問に回答し、被害にあったものを申告すれば、約3分で手続きは完了します。

社会貢献の仕組みを取り入れ

レモネードは「Giveback」という社会貢献の仕組みを採用しています。

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仕組みは、以下のようになっています。

加入者が支払った保険料は、その25%分を分離し、運営の費用や再保険のために支払われ、残りの75%が保険金支払いのためにプールされます。
プールされた資金のうち、保険金を支払って残った分はすべて社会貢献のために寄付されます。一方、保険金支払額がプールされている額を上回った場合は、再保険から支払われるため、レモネードの追加負担は発生しません。

保険の加入者は、申込時に自分が寄付したい先をあらかじめ指定します。
その加入者が支払った保険料の75%は、同じ寄付先を指定している他の加入者の資金と合算されプールされ、毎年6月にそれぞれの寄付先に寄付されます。
加入者は一度指定した寄付先を変更することも可能です。

こうした仕組みを採用しているので、レモネードは、説明責任や透明性など社会的な基準を満たすサステナブルな企業に付与される「B-Corp」の認定を受けています。

ちなみに2020年は、環境保護活動や途上国への水の支援、教育支援や新型コロナ対策など、112万8000ドルの寄付を行ったことが報告されています。

最新の決算動向

レモネードは3月1日、2020年10~12月期の四半期決算を発表しました。

(100万ドル)    営業収益  純利益  1株当たり利益
2019年10~12月期   23.5   -32.7   -2.90ドル
2020年  7~  9月期   17.8   -30.9   -0.57ドル
2020年10~12月期   20.5   -33.9   -0.60ドル

売上高は2050万ドルで、前年の同じ期と比べ12.8%減少しました。
これは、再保険の契約の変更により、営業収益の構成が変わったことによるものです。

実際の事業では、2020年末時点の顧客数は、2019年末と比べ約35万人増え(55.6%増)、100万802人と100万人を突破しました。
また顧客1人当たりの保険料も213ドルと、20.3%増加しています。
その結果、総収入保険料(Gross earned premium)は前年同期比92.3%増と、ほぼ倍増しています。

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支出面では、販売・マーケティング関連費用は減少しましたが、開発費や新サービスへの対応のための人件費などが増えたことから、純利益は3390万ドルの赤字となりました。
株式公開により株式数が約5倍になったことから、1株当たり損失は0.60ドルで、前年同期の2.90ドルの約5分の1となっています。

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2021年の見通し

2021年1~3月期、および2021年通期の見通しについては、以下のような見通しを発表しています。

2021年1~3月期
 営業収益:2,150万~2,250万ドル
 総収入保険料:5,350万~5,450万ドル
 調整後EBITDA:-4,300万~-4,000万ドル(20年10~12月期:-2,970万ドル)

2021年通期は
 営業収益:1億1400万~1億1700万ドル(2020年:9,440万ドル)
 総収入保険料:2億7000万~2億7500万ドル(2020年:1億5870万ドル)
 調整後EBITDA:-1億7300万~-1億6300万ドル(2020年:-9,790万ドル)

サービスが拡大し、保険料収入は増加するものの、投資などコストが先行し、まだまだ黒字化には程遠い状況が続くようです。
まだ立ち上げて間もないスタートアップ企業ですので、それもやむを得ないのかもしれません。

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まとめ

・AIを活用し、手続きをすべてオンライン化した保険会社
・2020年10~12月期の営業収益は前年同期比12.8%減少
・顧客数は前年比55%増、顧客当たり保険料は同20.3%増
・余った保険料を寄付する仕組みを持ち、「B-Corp」認定
・2021年1~3月期は営業収益、総収入保険料とも増加見通し


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