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適職診断:芸術家=社会不適合

社会から爪弾きにされる瞬間。
それすら愛おしく思うぐらいでなければ、私は生きていけない。

進路に悩んだときの、学生向け「適職診断」。就職先に迷ったときの、成人向け「適職診断」。どこかの誰かが個人的に作ったであろう、遊び半分の「適職診断」。

インターネットの海には、「あなたに向いているお仕事を鑑定しますよ~」と優しい顔して手招きする「適職診断」が溢れている。きっとほとんどの人が、そいつと一度はにらめっこしたことがあるだろう。

かくいう私も。

「適職診断」と名乗る者すべてと対峙してきたんじゃないか、と言えるぐらい、片っ端からにらめっこしてきた人生だ。

スタートボタンをクリックする。性格診断らしき項目が表示される。「あてはまる」「ややあてはまる」「ややあてはまらない」「あてはまらない」。なるべく素早く、「考えすぎず直感で答えましょう!」言われるがまま、自分にあてはまる選択肢をクリックしていく。たまにカッコつけたくなるが、無益なので我慢する。

そうしてすべてに答えて、表示される結果。

「あなたに向いているのは…芸術家!」

私はどのサイトと向き合っても、最後は必ず「芸術家が向いていますね!」と言われた。適職診断はいつもニコニコしながら、独創的だとか、型にはまらないだとか、天才肌だとか、あらゆる言葉で私を褒め称えてくる。

何も知らなかった幼い頃の私は、「へぇ~、私って、天才肌なんだ」とかバカ正直に思っていた。鼻を高くして適職診断の元を去る。私が背を向けた瞬間、適職診断が鼻で笑っているなんて知らずに。


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「適職診断の言う“芸術家”は、つまり組織で働くのに向いてないってこと。社会不適合者。」

知ってしまったのは、大人になってからだった。

インターネットの海に漂っているおそろしい言葉たち。「え?嘘でしょ?私って天才肌じゃないの?」独創性にあふれていて、天性の素晴らしい才能に溢れていて…。ミュージシャンとか小説家とか、写真家とかファッションデザイナー向きの人間じゃ、ないの?

つまり、だ。求人サイトを棲み家にする適職診断が「芸術家向きですね!」と口にしたとき、「ここにお前向きの仕事なんてねぇわ」と内心、冷たく笑っていたのだ。

あらゆる適職診断に「芸術家向き」と言われてきた、その回数を数える。その数だけ、私は社会から「爪弾き宣告」をされていたようなものだ。

でも、怒れなかった。

義務教育のシステム自体が肌に合わなくて、明確な理由なく不登校になった時期があったし。二年以上続けられた仕事なんてなかったし。“面接”というシステムに拒絶反応が強すぎるし。

「私、この社会に向いてないのでは」と思った瞬間が、数え切れないほどあったから。


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適職診断の言葉は、きっとどこか正しい。

生きづらい。社会から爪弾きにされた瞬間を反芻して、ため息をつく。悲しいけど、しょうがないんだ。だって私は実際、社会の中に存在するいろいろなシステムに適合できない。

それでも、絶望しているだけではどうしようもないから。

もういっそのこと開き直って、私は、本当に「芸術家」になってやればいいんじゃないだろうか?

そう思うことにしようかな。むしろそう思うぐらいじゃないと、生きていけない。

生まれてよかったと思う瞬間など一度もないけれど、生まれたのが今の時代だったのは不幸中の幸いだ。インターネットがある。SNSがある。気軽に自分の創作物を貼り出せる場所がある。

そう、もちろんこの「note」も。noteのなんといっても素晴らしいところ、それは社会不適合者認定されたこの私すら、「クリエイター」と呼んでくれるところ。

写真を撮る私、文章を書く私。どちらの私もきっと、社会から爪弾きにされた瞬間から始まっていて。

そんな人生の道のり、黒く塗りつぶされた背景すら肯定してくれる避難所。私にとってのnoteは、そんな場所だ。


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~追伸~
久々にここで適職診断したら、「呪術師が向いてますね」と言われました。


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