知財塾 ぶっちゃけ体験記 ~向いてる人とそうでもない人は?

本noteは「知財系アドベントカレンダー」のリレー企画として書いております。

稲穂さんからバトンを頂きました!

何を書こうかと迷ったのですが、今年 2020年1月~4月に参加した「知財塾 明細書作成ゼミ」がなかなか良かったのと、今のところ、受けてみてどうだった?という情報がネットにあまり出回っていないので、興味を持った方の参考になるかと思い、受けてみてどうだったか感想を書いてみることにしました。

「ぶっちゃけ体験記」というタイトル通り、率直に書こうと思います。

1、受講した動機

自分は企業弁理士なのですが、文系で商標系の業務を担当しており、「明細書を書いたことがない」というのが、ちょっと引け目でした。

弁理士会の「育成塾」に参加したこともあるのですが、それなりに勉強にはなったものの、「このまま修行すれば、自分でも書けそう」という手ごたえは残念ながらなく、明細書に対する苦手意識は残ったままでした。

そうはいっても、弁理士なんだから明細書が全く書けないというのは恥ずかしい・・というモヤモヤした気持ちが残っていたところ、Twitterで知財塾のお知らせと、IPXの奥村さんがファシリテーターをやるという情報が流れてきたので、

「これで書けなけゃ、もう明細書のことは忘れよう」

というラストチャンス的な気持ちで知財塾の明細書作成ゼミに応募することにしました。ちょうどそれが、2020年1月、日本でのコロナ禍 前夜です。

2、受講して学べたこと&カルチャーショック

当時の知財塾は、まだオンライン前提ではなく、渋谷のIPTechさんの会議室で開講してました。会社が終わったら渋谷に向かい、19時に会議室に入って事前演習。20時半~に奥村さんが来て、演習の仕上がりを見てアドバイスを貰ったり、他のゼミ生からも意見をもらう形です。

終わるのは22時で、そこから帰るのは結構辛い・・・いや、昔弁理士試験で予備校行ってた時と同じで、週1なんだから辛くないはずだ・・・と自分に言い聞かせてました。

ゼミに行って、ちょっとカルチャーショックだったのが、「いかに楽に明細書を書くか」という点にこだわっていたこと。

いや、「楽に」と書くと、いかにもお手軽に、とか、手抜きして…みたいな感じにも読めるじゃないですか。

そうじゃなくて、「無駄に分かりづらい言い回しはせず簡潔に」、「書かなくても良いことは書かない」、「コピペで済ませても、権利範囲や権利化の過程に影響がない所はコピペ」という、手をかけても意味がないところを極力省エネ化する。

一方、省エネして浮いた時間で、請求項の文言の詰めをしっかりやるとか、実施例を充実させるとか、その分できることがあると。

要は効率化とメリハリってことで、まあ当然なんですが、独学だと「どこで手を抜いて良いか」ってことが一番分からないんで、ずいぶん助けられました。時間は有限なので、どこかにかかる時間を削らないと、重要なポイントに力を入れることができないですからね。

また、面白いなと思ったのは、他のゼミ生と全員Google Driveを共有するので、参加者がそれぞれ作ってきた課題のファイルが丸見えなんですよ。そして、人の成果物をアレンジして自分なりに使うことも禁止されていない。

それどころか、前回のゼミで「この書き方良いね」って話になった部分は、むしろ積極的にパクり、自分のものとして取り入れることが推奨されていて。

なので、ゼミの中で一番書ける人の成果物をコピーし、自分のドキュメントでどうも書き方わからないところはその表現を使う、なんてこともやってました。

こういう話をすると、「コピペじゃ何も身にならないぞ!」みたいな意見が出そうなんですが、要はやり方だと思っていて。

明細書は、自分でうんうん唸っていても、書けない部分はどうやっても無理。であれば、どこが自分が書けないかを演習で認知して、悩んでもダメならお手本を見る。

最終的に、自分が何とか書けるようになればいいんで、わからないところは「写経」です。「写経」って要は「頭を使ったコピペ」なので、思考停止になってなければ良い。

実務スキルを学ぶ場なので、自分が一番身に付く方法を採れば良く、その手段として他のゼミ生の英知がいつでも見れる形でシェアされているっていうのは、ずいぶん助けられました。

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あとはやっぱり「コロナ禍」に伴うZoomを用いたオンライン化ですね。渋谷のリアル会議室に通っていたのは1か月ぐらいで、2月からはオンラインゼミになりました。

これは最初、「通学で教えてもらえるのが価値があるはずだったのに、オンラインで本当に勉強できるのかよ・・」とかなり不安があったんですが、フタを開けてみたら、通学より全然メリットがあって。

今年は、日本全国で強制的にリモートワークが実施されたので、移動がない楽さは皆さんご存知でしょう。それ以外で良かったのは、「共同編集がしやすい」

知財塾はドキュメントを作成する「演習」がベースなので、課題は「〇〇の事例の請求項を書いてみよう」とか、「請求項を元にして明細書の残りを書こう」とか、成果物を伴うものが多いです。

その成果物をgoogle ドキュメントで作り、ファシリテーターや他のゼミ生と共有するのですが、自分の成果物に対してアドバイスしてもらう時に、その場で書き込んでもらえる。

通学だとどうしても小さいノートパソコンの画面で、ちまちま直す・・ファシリテーターが編集してくれているんだけど、小さくて分かりづらい・・なんてことが起こっていたんですが、自宅だとモニターがあるので、ドキュメントを大きく表示し、入れてもらった修正の過程を細かくチェックできる。

この「共同編集」の過程をしっかりと見れるようになったのは、オンライン化の優れた所だと思います。(終わった後、飲みに行けないのはちょっと寂しいですけどね)

結局、「通学」しないと良い勉強ができないというのは、「通勤」しないと良い仕事ができないというのと同じ錯覚だったのかなと。

もちろん、「通学」したほうがやりやすい学習もあるでしょうが、知財の場合、ZoomとGoogle ドキュメントのおかげで、むしろ在宅のほうが学びやすい面があるんじゃないかなと思います。

3、向いている人・そうでもない人

ということで、私が受けた感想としては「受けて良かった」のですが、正直、オンラインゼミに向き・不向きはあると思います。

<向いている人>
① アドバイスを素直に受け入れられる人
② 課題をサボらない人
③ 在宅勤務で自宅にモニターがある人

まず①は、成果物に対して「こういう表現の方が良いかも」というアドバイスがファシリテーターや他のゼミ生より毎回寄せられます。この時、「こうすべき」という言われ方はしないのですが、大体コメントをもらうところは「直した方がより良くなる」場合がほとんどなので、素直に取り入れて自分のものにするのが得です。

その点、私のような初心者だと、「こういう表現にしたい」という思いも大してないので、ゼミに向いているんだろうなーと改めて感じます。

②は、課題がやってあるのが前提で、それに対して講評していくので、なにもやってなければ飛ばされます。そうすると、他の人の話を聞いているだけなので非常にもったいない。

いや、ファシリテーターは大人なので全然怒らないんですよ。でも、やってないと輪に入っていけない。正に「自己責任」ってやつです。

一方、課題をしっかりやっておき、質問などもコメント機能で準備しておくと密度の高い学習ができるのでいい感じでした。

③は、ノートパソコンに外付けモニターで2画面以上が取れる環境の人はお勧めです。ノートパソコンの画面でZoomを開いて通信しつつ、ドキュメントはモニターで表示して編集・・が出来たりするのでかなり便利でした。1画面だけだとちょっとやりづらいんじゃないかな?とは思います。

<向いていない人>
① 正解を丸ごと教えて欲しい人
② 課題を平日夜や土日にやる時間が全く取れない人
③ 自宅での仕事・学習環境が作れない人

一方こちらは、知財塾が向いていなさそうな人。

①は、「講師」ではなく、「ファシリテーター」という言い方をしているだけあって、正解をそのまま教えてはくれません。

あくまで、自分が作ったドキュメントに対し、良い所は褒め、直したほうがよい所はアドバイスする、という仕組みなので、唯一無二の回答を求めたがる人にはあんまり向かないかなと。ただ、その分、自分の書き方はよほど変だったり、権利範囲に支障が出るなどの問題が無ければ、尊重してくれるのが良い感じでした。

②は、明細書を3本書くので、毎週の演習時間(7時~8時半)では正直足りない。特に後半は事例も難しくなってくるので、休日1日使って明細書を何とか書く・・とかなる覚悟はしておいた方が良いです。課題を全然やっていないと議論にもついていけないので、参加している意味は非常に薄くなってしまうでしょう。

③は、オンラインゼミになるので、小さいノートパソコンの画面とかだと正直厳しいんじゃないかなと。ノートでもある程度のモニターサイズか、基本的には外付けモニターがあることが推奨されると思います。

マイクのオン・オフはできるので、後ろで時々子供の声がするとかは問題ないと思います(あまり頻繁でなければ、ほほえましい感じです)。

4、値段分の価値はあったのか?

つらつら書いてきましたが、「じゃあ値段分の価値があったのか?」という話。

自分は通学コースだったので、全12回で9万円(税別)、つまり9万9千円とほぼ10万円でした。まあ、それなりなお金ですよね。うまい棒9900本分ですから。

今の私は相変わらず仕事で明細書を書いていないので、「10万円分、直接的に回収できたか?」といえば、Noになります。

ただ、元々の目的であった「明細書作成の苦手意識」は、かなり払拭されてまして。

ゼミの課題で明細書を「成果物」として何とか完成させるという経験を3本やったので、流れが体感できて「やってやれないことはないな」と。

もちろん3本書いただけでは、完成度は低く、お金が取れるレベルには全然ならないんですが、とりあえず最初から最後まで、他の人のカンニングをしつつでも自分の力で作り上げたというのは自信になりました。

また、「ここの部分はコピペで十分」とか、「請求項の文言をあらかじめ別ファイルに用意しておいて、明細書本文で文言をつかうたびに色を変えていくことでサポート要件を確実に満たす」とか、ファシリテーターのワザを色々と教えてもらったことが大きいです。

終わってみて、「明細書全然わからない」という後ろ向きさが、「明細書いまだに良く分からないけど、書き方の流れを体験できたので、いざとなったら特定分野を勉強しまくったら、何とかなりそう」という前向きさに変わったのが一番の収穫でした。

ぶっちゃけ課題は結構きつい・・実際に「明細書」という成果物を何本も完成させるので当然なのですが、ちゃんとやればその分、身に付くものは大きいと思います。

まとめると、明細書自体に苦手意識があって、何とかしたいと思っている人にはかなり良い講座かなと。私のような文系の人でも頑張ればできるレベルなので、悶々としているならトライしてみたらいいんじゃないですかという話でした。

ゼミは年1-2回開講ですが、通年でゼミ動画も販売しており、そちらは半額なので、毎週夜に時間取るのきついなとか、テクニック的な部分だけ参考にしたいなという方は動画コースもありだと思います。

知財の業界はなかなか実務を身に付けるのが難しかったので、オンラインで学びの選択肢が色々と出てきたのは良いことだなと。

ということで、明日は長内さんにバトンを渡します!

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