第2種/第3種電気主任技術者を認定で取得したときの話 ④面談の注意点

電気主任技術者免状(以下、免状)を認定取得するために実務経歴書が書けたら、予約をとって面談です。
今回は面談のはなし。これが最後です。
なお、私および後輩が審査を受けたさいの注意点からの記載なので、地域差などがあるかもしれません。

面談ってなにするの?

面談といってますが、実際には「電気主任技術者免状申請の事前確認」です。
あくまで書類の不備がないかのチェックしかしていない…というのが建前です。
ただ、申請者本人がその書類を書くだけの能力があったのか、そこに書かれているような業務を本当に実施したかを確認するため、時として厳しい指摘がなされます。

本当に面談って厳しいの?

電気主任技術者の認定にかかる面談は、何回いっても「ではまた出直してきてください」と言われるひともいるほどの厳しいと噂されています。
私の正直な実感としては全く厳しくありませんでした。とは言うものの、初回の面談ぎりぎりまではかなりビビりちらかしていました
第2種電気主任技術者の免状申請ですので、もしかしたら2種国家試験のレベルの問題をその場で解かされるんじゃないか? とか、色々悩みました。
行きの電車で保安規程を3回読み直したりもしました。
後輩にも「電験3種の問題がでるかもね」と言うはなしをしたこともあります。
しかし、実際の面談はそのようなことはありませんでした。3種認定を受けた後輩もさほど難しい問題はだされていません。(別で出された問題を記載します)
多分、あきらかな地雷を踏み抜かなかったからでしょう。

地雷とは?

私の実感では、いくつかの質問において「ここで間違えると再提出確定」となりそうなキーポイントがありました。
たとえば、私の面談1回目の最初の質問(実務経歴書を受け取ったくらいのタイミング)では、「ところで、この申請対象はGISですか?」と質問されました。
この質問でうかつに「はい、そうです」と答えると、実務経歴書のほぼ半分がパーになり、それどころか下手すれば私は認定を受けられなくなるところでした。

なぜか。
GIS(ガス絶縁開閉装置)は断路器・遮断機や母線、避雷器、計器用変流(変圧)器などを金属容器に収めてSF6ガスを封入しています。
この場合、金属容器内に収まった機器の点検は自分自身で行うことができません。
自分自身で日常点検・月次点検できない機器など、知識や能力にもとづいて申請者自身が保安上の判断をしているとは証明できないわけです。ごっそりそこがなくなると、10,000V以上の電気工作物の保全経験が消えます。

その他、あきらかな地雷としては通電中の「機構部のゆるみ確認」「温度(電圧・電流)の確認」があります。
日常点検で6,600Vブスバーの端子の緩みはどうやって確認していますか?」と問われて「トルクレンチで軽く締めます」と答える人、「端子部が加熱していないかどうか、どうやって確認しますか?」と問われて「触ってみます」と答える人が時々いるそうです。
通電中の特別高圧・高圧設備にトルクレンチ当てたり、端子部に直で触るひとは感電して死にます
死んでいるはずなのに、ピンピンしながら面談にきているのですから「実際にはそんな点検やってないはずなのに、やったと嘘ついているか、意味がわかっていない」となるわけです。
この手の地雷回避方法は「本当にやったことだけを正直にいう」=「正確に細かく実務経歴書を作成し、やってないことを言わないように予習する」です。

面談における基本スタンス

さて、あきらかな地雷の回避と、審査官の心象をよくするため、面談者はどんなスタンスで面談にのぞめばいいのでしょうか。
以下の点を推奨します。

  1. 素直になろう

  2. 喧嘩しない

素直になろう

あまりに知識がないとか、自分の実務経歴書に書いてある内容で答えられないのは論外でしょう。
でも、判らないことは「判りません」でいいんです。実際、上のGISの質問においては私は「すみません、GISって何ですか?」と質問しました。
たぶん、電験3種を受けたころには勉強していたはずですが15年くらい経っていたのですっかり記憶になかったのです。
それでも、審査官は丁寧に写真つき資料を見せてGISの説明をしてくれました。そこで、はっきりと「ああ、そういうことでしたら弊社の受電設備はGISではなく、気中開閉式のキュービクルです」と答えられました。
初っ端にヘルプを求めても十分リカバリーできるので落ち着いて受け答えし、質問の意図が判らないところは素直に聞きましょう

喧嘩しない

私と後輩だけかもしれませんが、産業保安監督部に書類提出や相談、認定面談にいくと毎回よその誰かがヒートアップして、審査官と喧嘩しています。
私だって選任解任届提出と、保安規程の訂正と認定の面談都合5回(内容は2回で、あとは誤字脱字と最終提出)の計7回、コロナ下で認定を受けた後輩は1回しか行ったことがありません。
しかしこの二人あわせて8回の訪問で、審査官とバトルしている人を見た割合は100%なのです。なんか引き寄せてますか?

審査官に指摘されたからといって、喧嘩しても何の意味もありません。
理不尽な指摘はありません。提出書類や実務経歴書の内容が安全・安定・省エネ優先、法律遵守最優先になっていないから指摘されるのです。
そして審査官は審査のレベルを下げてまで電気主任技術者の人数を増やそうとはしませんので、バトルして曲がることもありません。
だから勝負は常にバトルをふっかけた申請者側の負けになります。
その結果「もうあんな厳しいやりとりには耐えられないから、行くのをやめよう……」となるようです。
地雷を踏んでも、「すみません、間違えていました」と素直に引き下がれるか、それともごり押しして撃沈するかは自由ですが、厳しい指摘があったら「指摘されるだけの穴があるんだ」と受け入れることをおすすめします。

ちなみに、指摘はかなり細かいところまで入ります。私の場合、

  • 機器の点検項目について、部品の名称が違う。

  • 月次点検・年次点検で同じ点検項目があっても、原則「その日やったこと」を全部書くこと。年次点検と精密点検は同日に実施していたとしても、別の項目として分けること。

  • 組織図については電気の保安に係わる組織がちょっとでも変更されたら、それをキチンと反映すること(私の場合、部署名の変更・同一事業所他工場の主任技術者との協調関係・電気保安員に任じられた後輩の所属を指摘されています)

の点が主な指導内容でした。

実務経歴書に記載されていない事項への問と答えかた

面談で質問されるのは9割9分実務経歴書の内容です。とくに、これまでのシリーズのなかで指摘したとおり、業務マニュアルに近いくらい詳細な実務経歴書を書きあげた方なら、ほぼ実務経歴書を眺めるだけで済むでしょう。
しかし、それでも実務経歴書に記載されていない事項について問われることがあります。
第2種を申請した私の場合は実務経歴書に記載されていない問は前述の「GISですか?」だけですし、第3種を申請した後輩は
①弱点比とはなにか
②実務経歴書には記載されていないが、B種接地の接地抵抗測定は実施しているのか?(しています。)、しているならその合否基準は?
の2点です。
どれも電験のテキストに記載されているようなものばかりですから、「次回調べてきて」と言われてもむずかしくありません。

では、そういう「次回調べてきて」と言われた問には、次回はどう答えるべきでしょうか。
私は次の流れで答えを作成することを推奨します。

  1. 言葉の意味

  2. 技術的・法的な位置付け

  3. 良・不良の判定基準

たとえば、上記の弱点比について私が回答するなら、次のように回答を作成します。なお、この回答も保安規程に含めている検査基準をベースにしています。


  1. 意味

    1. CVケーブルの絶縁物は熱・吸湿などで劣化→絶縁抵抗の値だけでなく、絶縁物の劣化の度合いも測定する必要。

    2. CVケーブル=多層構造→単純な絶縁抵抗計では正確な測定ができない。高電圧を印加する必要あり……交流高電圧は停電試験時に準備するのが困難。

    3. そこで、一定の直流電圧を印加した時の漏れ電流を元に、測定絶縁抵抗を算出する「直流漏れ電流法(直流高圧法)」が一般的。

    4. 直流漏れ電流法において、印加電圧をステップ的に変化させたとき、通常ならば漏れ電流(=絶縁抵抗)の値が変化しない。
      劣化が進捗すると、より高い電圧を印加したときに絶縁破壊電圧に近づき、絶縁抵抗値が変化することがある。
      この変化の比率が弱点比。

  2. 技術的・法的な位置付け

    1. 弱点比の計算方法は「弱点比=第一ステップ電圧の絶縁抵抗値/第二ステップ電圧の絶縁抵抗値」。

    2. 高圧ならば第一ステップ電圧:第二ステップ電圧は5kV:10kVまたは3kV:6kVが一般的。

  3. 良・不良の判定基準

    1. 自社では○kV:○kVを採用。

    2. 弱点比の値は以下のように評価する。

      1. 絶縁抵抗の値が充分高く測定中にほとんど変化しない⇒絶縁破壊に至るおそれはすくないから、良好と判断する。弱点比の評価はしない。

      2. 絶縁抵抗が低いときに弱点比を評価。

        1. 弱点比の値が小さい=絶縁抵抗はほぼ維持されるから絶縁破壊に至るおそれはすくないと判断。

        2. 弱点比の値が大きい=劣化が進捗していると判断→更新の計画をすすめる。

      3. 絶縁抵抗が極めて低い場合やリーク音、漏れ電流がときおり大きく変化する(キック現象)⇒不良と判断する。弱点比の評価はしない。

最後に

4回に渡って、私と後輩が認定で電気主任技術者免状を取得した時の流れを説明しました。
認定で取得を目指されるかた、とくに周囲に指導してくれる人がいないかたの道標の一つになれたなら幸いです。

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