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妻が営業を辞めた理由は"おじさん"だった

 僕の妻は2年前に転職しました。新卒で第一希望の企業に営業職として入社し、当初は忙しくもやりがいのある仕事を楽しんでいました。

 社員の9割が男性という職場でしたが、むしろその状況をポジティブに捉え、女性ならではの視点を活かすことで成績も残していました。取引先にも可愛がられていたようです。

 しかし、次第に仕事の楽しさを凌ぐストレスを抱えるようになり、転職を決意。他業種の総務系の仕事へキャリアチェンジしました。

 好きな仕事を辞めることにもちろん迷いはあったものの「精神を病む前に辞めてよかった」と自分の選択に納得しています。僕もそれでよかったと思っています。

 そんな妻の転職の一番の理由は"おじさん"社員でした。特に妻が悩んでいたのは、以下のような出来事です。

 「我慢できずに辞める方が悪い」と言われればそれまでですが、こんな"おじさん"社員たちがいなければ、妻は好きな仕事を辞めなくて済んだのかもしれません。

◆意味不明なあだ名で呼ばれる

 職場であれば、名字で呼び合うのが「普通」であり、一番当たり障りないですよね。
 年齢も近くて仲が良い、という場合を除いて、あだ名で呼び合うなんてことはないと思います。ですが妻は、二回り以上年上の"おじさん"上司から、勝手につけられた意味不明なあだ名で呼ばれていました。
 「やめてほしい」と何度か伝えたそうですが、面白がって別のあだ名を考えていたそうです。小学生でしょうか。

◆メッセージが嫌

 SMSやメールで仕事の連絡が来ます。「明日はヨロピコ」とか「これから直帰しマンボウ」とか、そんな具合です。
 妻は相手にせず「承知いたしました」と返信していましたが、それに対して「つまらないやつだ」と言われていました。
 これが積み重なると相当なストレスですよね。やはり、小学生でしょうか。

◆やっかみがすごい

 妻は2年目に営業部門の優秀社員でして表彰されました。これまでWordやPowerPointだけだった提案書に、得意なIllustratorや Photoshopを用いた図式やイラストを加え成果を出したことが評価されたそうです。
 2年目という若さでは異例だったようで、それを評価してくれた上司もいれば、そうでない上司もたくさんいました。いわゆる、やっかみです。
 20年目になっても一度も表彰されたことのない、"おじさん"社員が「女だから珍しくて表彰されたんだ」と言ってきたそうです。妻は「あなたの資料は文字ばかりで、少し伝わりにくいと思います」と反論。言う時は言う人なんです。
 その後、その"おじさん"とはバチバチの関係となってしまい、事あるごとにネチネチ小言を言われ続けたそうです。

◆ランチが苦痛

 営業なので、男性の上司と同行ということも少なくありませんでした。それ自体は仕事なので割り切っていたのですが、苦痛だったのがランチの時間。
 たいていの"おじさん"社員は、妻に何も聞かずに、お店を決めてしまうそうです。それがまた、家系ラーメンとかなんです。
 家系ラーメンが好きな女性だっていますが、お昼から家系ラーメンは食べたくない女性だっています。僕だって結構嫌です。普通後輩とご飯食べる時は「何が食べたいか」とかって聞くじゃないですか。
 ここでも妻は強いので、途中から「私はあっち行くんで、後で迎えに行きます」と、別のお店で食べるようにしていました。でも、そうできない女性社員さんもきっといると思うんです。

◆飲み会はさらに苦痛

 アルコールが入ると最悪だったようです。「女性なんだから酒を注いでくれ」なんてことも言われていました。いま、令和ですよ。
 加えて「俺らの中で誰が一番かっこいい?」とか聞いてくるみたいです。いま、令和ですよ。

◆"プレおじさん"も助けてくれない

 比較的言いたいことは言って、相対的に見ると「強い」妻ですが、こんなことが日常的に積み重なるとストレスはもちろんたまります。
 何人かいた女性の先輩は、こんな環境でもあるので、結婚や出産を機に辞めていってしまいました。
 僕は家で彼女の愚痴を聞くようにしていましたが、同じ会社ではない以上、具体的に助けてあげることができませんでした。
 妻は一度、5つ上の男性の先輩に助けを求めました。"おじさん"上司陣を何とかしてほしいと。すると、この"プレおじさん"は「嫌われると出世に響くから、ごめん」と断ったそうです。それが、妻の転職を強く後押しすることになりました。

◆病む前に辞めるという判断

 ストレスを蓄積していった妻の些細な反撃は「おじさんを車で寝させない」ことでした。基本的に"おじさん"上司と同行営業する時は、部下である妻が運転していました。
 上司はすぐ助手席で寝てしまうことが多かったみたいです。特別話題もないので、寝ててもらった方がいいのですが、かと言って隣で熟睡されていても腹が立ちます。
 そこで妻は、道路のちょっとした凸凹を見つけると、あえてそこを通るようにして、ガタっと車体を揺らします。すると上司は起きます。が、またすぐ寝ます。ので、また凸凹を見つけては、通り車体を揺らして起こします。

 というのが、唯一のストレス発散方法であり、これを僕に言語化して話した時に「あ、これ私ヤバいわ」と強く思ったそうです。

 以前の記事でも書いたのですが、僕の職場も女性が少ないです。正社員は一人もいません。「営業の仕事は体力勝負。男にしかできない」と言う上司も何人かいます。危機的な会社です。

 間もなく"プレおじさん"になる僕ですが、社会全体とまでは言わずとも、自分が関われる範囲で男女共に働きやすい環境をつくっていきたいと思います。

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