マガジンのカバー画像

らぶすとーりー

12
みじかい恋愛小説です。
運営しているクリエイター

記事一覧

短編小説『見渡す限り、温もり』2020.7.9

 七月の蒸す空気、図書室は避暑地だった。七瀬真由香は小説の背表紙に手を伸ばしかけ、やめて…

ちよまつ
3年前
23

短編小説『サヤカ2』2020.8.21

 男に女を売る生活で食っていこうと考えた母のようにだけはならないと、私は小学生のときに誓…

ちよまつ
3年前
29

短編小説『サヤカ1』2020.8.9

 半年前まで彼女だった子がくれた紅茶のティーバッグを、一リットルのお湯で薄めて飲んでいた…

ちよまつ
3年前
23

掌編『おみくじ』2020/5/26

 戦争が始まった。隣の家に赤紙が届き、現実だと理解した。結婚したばかりの頃だった。  次…

ちよまつ
3年前
20

『透明』2019.12.16

「好きって100回呟く間に、世界が滅びたらいいのにな」 彼氏のいないまま、こぼした一言が…

ちよまつ
4年前
12

掌編『ネモフィラの視線』2019.11.21

 榎田先生が他人になる前に、わたしは告白をしなくちゃいけない。教室のすみに座っていた、ひ…

ちよまつ
4年前
14

『月が綺麗』2019.10.16

何年前だったかね、と祖父が言った。真琴は、祖父のほかほかの肉まんのような顔を見ていた。 おばあちゃんに出会ったときのこと。小学校の宿題で作文を書くために、真琴は祖父の顔をのぞき込む。 「おばあちゃん、きれいだった?」 「そりゃあもう。初めて会ったときは、カミナリが落ちるようだった」 真琴は、ふーん、と言い、日に焼けた足をこたつにいれる。まだ黒いままだ。 「なんでおばあちゃんがよかったの」 「なんでだろうなぁ。はずかしいなぁ」 「宿題なんだから、まじめにこたえて。どこで出会った

『体温』2019.10.09

その日の朝はまるで、トーストの焼ける匂いが僕をなぐさめているみたいだった。乗せたバターが…

ちよまつ
4年前
106

『サーモンピンク』7.26

 交差点のむこうがわで、イノウエくんが女の子と歩いているのをみた。渋谷は夜の八時半、わた…

ちよまつ
4年前
11

『ひみつの放課後』7.25

 高校を卒業するまでに、ラブホテルにいってみたい、と、ミナは言う。授業のプール終わり、私…

ちよまつ
4年前
7