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生き残るマンモスー就職氷河期、リーマン、コロナー 1. カナダから帰国編


転職回数20回以上、それでも生き残ってきた

 マンモスは絶滅した太古の動物。
 幼い頃、図鑑で見たときに生きていて欲しかった、と思ったものだけれどまさか自分で自分のことをマンモスだと呼ぶようになるとは、最近まで思いもよらなかった。
 1976年生まれ、1995年からカナダ留学のち2001年帰国。
 私の就職活動は2001年の就職氷河期ど真ん中から始まった。
 同世代の多くの人々と同じく、かなり厳しいスタートを切ったわけだけれど、見出しにもあげたように転職というか副業も含めて様々な職場を経験しながら文字通り生き残ってきた。
 正直にいうと最近まで、ぼんやりとしか同世代の人々の中に現在進行形でキャリア形成やもっと言えば生き方設計に悩み、壁に直面しながら動き出せずにいる人々が多くあることを認識していなかった。
 同世代なのに、だ。もしかしたら、同世代だから、かもしれない。よく考えたら、仕事で会う人々は世代が年上世代か年下世代が多い。
 同世代というのは、実はそれほどいないことに気がついたのは、先日キャリアアップセミナーの講師をさせていただいてからだった。
 このセミナーでは私の人生折れ線グラフとともにその当時のこと、またメンタルや転職活動のコツも含めてお話しさせていただいた。
 等身大の、そのまま実践してきた生の話だ。
 参加者の皆さんの表情が次第に、とてもゆっくりと明るくなっていくことに気がついたセミナーの最後。笑顔と拍手をいただいた。
 これまで様々な機会で折に触れて転職回数や、氷河期とリーマンの大変だった時期のことは話をすることもあったけれど、この時がじっくりと腰を据えてお話しした最初だったように思う。
 そして、私としては自分の生きてきた(お世辞にも美しく華麗ではなく、ドロドロでこぼこだらけの)道なので、何も特別なこととは思っていなかった。むしろ、飲みの席でのネタにはいいなくらいのものだったけれど、誰かの顔に笑顔や明るさをもたらすことができるのだとこのときに知り、今こうして筆をとっている。他の誰かの顔にも明るさをもたらせられるかもしれない、と願いながら書き出そうと思う。

帰国のキッカケは、詐欺事件

 2000年にカナダでカレッジを卒業してから、1年間はいただいた就労ビザでイタリア系企業で事務系の仕事をした。事務系と書くのは誤魔化しているわけでもなく、取引先や顧客からのクレームもたまに対応していたため事務系とするのが正しいと思う。後に、この頃いきなり対応させられたクレーム対応の経験が生きることになるのだが、当時はただ大変な思いをしていただけだった。ちっとも楽しくなく、フツーの事務仕事をしてフツーにお給料をもらえるのが一番うれしいと思っていた。会社があった界隈はイタリア系の人々が多くてカフェも美味しかったし、午後のエスプレッソタイムも最高だった。会社にはハスキーが3頭とジャーマンシェパードが1頭いて、油断するとランチを食べられたりしたものだが、それも全てが楽しかった。
 帰国について触れる前に加えると、ここでの就労中に永住権を申請する手続きをとっていた。大学で勉強した会計学を続けたかった(当時は公認会計士の勉強を続けるには永住権が必要だった)のだが、ここで実は犯罪被害に出会う。なんと永住権取得のために雇った移民専門弁護士が詐欺師だったのだ。これだけでもエッセイ一本くらい書けそうなネタなのだが、私の人生はなかなかにジェットコースターなので、これくらいで驚いてはいけない。
 いや待て、当時は驚いた。確かちゃんと驚いた気がする。
 なにせこの弁護士、全国紙にデカデカと広告を出し日系人であることを売りに、永住権を取得したい日本人客が多数いることでも知られていたからだ。
 ある日警察から電話がかかってきて、事件のことを知り被害者リストに私の名前があること、被害額の確認が行われた。当時分割で弁護士費用を払うことにしていたので、私の被害額は2500ドル、25万くらいだ。おそらくもっと大きな額の被害にあった人が多くあったはずであろう。
 ともかく問題はこの事件が発覚したのが、私の就労ビザが切れる1ヶ月を切ったところだった。当時、交際していたカナダ人の恋人がいたけれどじゃあビザのために結婚しますか、とはならない。それは……ちがうと考えたし選択肢になかった。唯一の選択肢は会社からの就労ビザ延長だが、元の就労ビザは「大学等高等教育を修了した者に付与するビザ」なので延長できるものではない。1から申請しなけりゃならないが、それには時間がなさすぎた。
 といった駆け足だが経緯があり、唯一の選択肢は日本への帰国だったわけである。そうして四月のある日、私は猫2匹を連れて日本へと帰ってきたのである。

<2. 凍てつく面接と最初のステップ編につづく>

#就職氷河期世代




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